そーゆーとこツボなのさ

終日もう君に夢中

リアコ調査

またアンケート企画をやってしまいました。分析がめちゃくちゃ大変なんですけど、楽しいんですよねぇ。

今回は、リアコに関する調査です。

「リアコ」はオタク用語で、推しにリアルに恋している状態を示します。

これについて考えるきっかけになったのは着飾る恋です。

丸山さん演じるハルちゃんがとある記事で「リアコ製造機」と呼ばれていたり、プライベート感溢れるインスタライブでTLのオタクたちに「彼氏と勘違いしてしまいそう」と言わしめていたけど、丸山担って実際リアコな人多いのかな?

 

エイトだと誰が一番リアコ製造機なんだろう?

ていうか、みんな推しに対して恋愛感情ってある?

恋愛感情と「推したい」という感情って、何が違う?

 そのあたりを見ていきたいと思います。

 

細かい値は書きませんが、統計的な分析もちょこっと行っています。有意水準は5%です。

 

①アンケート調査についての概要

191名の方に協力していただきました。ありがとうございます。

担当の内訳は以下のようになっています。

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複数推しがいる場合はアンケート回答時に最も好きなメンバーを選んで答えてくださいとお願いしたため、正確な各ファンの割合を表しているものではありません。

また、今回は前回の調査よりも参加人数が少なかったため、私のフォロワーさんが誰を好きかというのがかなり反映されしまっていると考えてください。

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20代の方が半数近くを占め、10代以下、30代、40代と続いていきます。

担当ごとに見ていくと下のような結果になりました。

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横山担は10代以下の占める割合が最も多く、ついで20代の割合も高くなりました、大倉さんを覗く他のメンバーのファンよりも圧倒的に若い傾向にありました。

交際中の相手がいる割合は7.1%、結婚経験がある割合も同じく7.1%となりました。他のメンバーと比べるとこちらも圧倒的に低い値です。

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村上担は今回最も参加してくださった方が多いです。そのため、全体の年齢比率と似た結果になりましたが、やや30代以上の方が多いです。

交際中の相手がいる割合は20%、結婚経験がある割合は16.5%となりました。

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丸山担も村上担や全体と似たようなグラフを描いていますが、村上担よりは30代以上の方が占める割合が少し減少し、10代の割合が少し増えています。

交際中の相手がいる割合は18.0%、結婚経験がある割合は13.5%となりました。

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安田担は30代の占める割合が他よりも多くなりました。

交際中の相手がいる割合は34.8%、結婚経験がある割合は21.7%となり、最も高いです。

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大倉担でも横山担に次いで10代以下の占める割合がかなり高くなりました。同時に20代の占める割合が唯一半数になっており、横山担と同じく他の3人のファンと比べて若い傾向にありました。

交際中の相手がいる割合は18.8%、結婚経験がある割合は12.5%となりました。横山担に近い年齢構成ですが、こちらはそこまで低い値ではありません。

 

ランダムにサンプルを抽出できたわけではないので、実際のそれぞれのファンの年齢分布とは違った結果になっているかもしれません。

なんとなく大倉担は若いイメージがあったのですが、横山さんのファンは落ち着いた20代くらいに見えるお姉さんが多いイメージがあったので、少し意外でした。村上担の年齢層が上なのもなんとなく分かる気がします。

 

②尺度作り

今回のアンケートにはたくさんの質問項目があり、そこにどれだけ当てはまるかを答えてもらいました。 

推しが夢に出てくる

推しの存在によって性格が変わったと感じる

推しと2人きりになりたいと思う

推しに触れたいと感じる

推しとキスしたいと思う

推しのことばかり考えてしまう

推しに自分のことを知って欲しい

推しに対して独占欲を感じる

推しに好かれたいと思う

 

推しを見ると気持ちが高揚する

推しの外見に魅力を感じる

推しの性格に魅力を感じる

推しが異性と接していると不快感を感じる

推しに会う前はドキドキする

 

アンケートの際は文章を否定系にした逆転項目が入っていましたが、聞いている内容は一緒です。これらはウェブサイトで「恋愛感情とは」と検索した際に出てくる記事を上からいくつか開いて抽出したものです。そのため、私が勝手に考えた物ではなく、かなり一般的に考えられている恋愛の定義になっていると思います。

また、恋愛をしたことがある人に対して、同じ項目が恋愛対象に対して当てはまるかどうかを質問しました。

参加者には推しに対して自分がリアルに恋をしているかどうかを1(当てはまらない)から4(当てはまる)までで答えてもらいました。

リアコではない推しに対する感情と恋愛感情というのは、一部被るものがあると思います。それらのどこが似ていてどこが似ていないかを分析するために、上の質問で1と答えた人(リアコではない人)の回答と、恋愛対象に対しての回答を比較しました。

リアコではない人の質問項目に対する回答は全体的に低い値を取りましたが、5つだけ平均が6を上回る項目がありました。

推しを見ると気持ちが高揚する

推しの外見に魅力を感じる

推しの性格に魅力を感じる

推しが異性と接していると不快感を感じる

推しに会う前はドキドキする

これらは推しであってもリアルに恋している相手であっても当てはまる感情だと考えられます。実際内訳を見ると、外見や性格に魅力を感じる、推しに会う前や会った時はテンションが上がるといった、推しに対して一般的に当てはまりそうなものが多いです。

少し意外だったのは、「推しが異性と接していると不快感を感じる」がここに入ってきたことですね。着飾る恋でのハルハセ(丸山さん演じる寺井と中村アンさん演じる羽瀬)の結婚に対しても、タイムラインでは素直に楽しんだり喜んだりすることができない人をよく見かけましたが、これはリアコということに関係なく、ある程度一般的なオタクの感情なのかもしれません。

残った項目は改めて以下の10個です。

推しが夢に出てくる

推しの存在によって性格が変わったと感じる

推しと2人きりになりたいと思う

推しに触れたいと感じる

推しとキスしたいと思う

推しのことばかり考えてしまう

推しに自分のことを知って欲しい

推しに対して独占欲を感じる

推しに好かれたいと思う

相手との双方向の関係を求める項目が目立ちます。例えば、推しの恋愛報道が出ると落ち込むけど、自分が推しと付き合いたいわけではないという場合は、リアコではないのかもしれません。

10項目の取った値を参加者ごとに平均することで、合成変数として扱いました。ここからこの合成変数を「リアコ度」と呼ぶことにします。

恋愛対象へのリアコ度と、自分はリアコではない(回答が1の全く当てはまらない)と答えた人のリアコ度を比較してみましょう。

 

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上(恋愛対象に対するリアコ度)と下(リアコではない推しに対するリアコ度)は明らかに違いがあります。上の平均は7.23、下の平均は4.41となりました。これらの差は統計的にも有意でした。(有意≒この結果が偶然ってことはほとんどないと思うよ)

 

1~4で推しに対してリアルに恋をしているかどうか(つまり自覚の度合い)を聞いていたので、そちらの平均も比較してみましょう。1と答えた人は先程述べた通りリアコ度4.41、2の場合は5.68、3の場合は7.03、4の場合は7.78になりました。ここまで綺麗に結果が出ると気持ちいいですね。散布図にしてみました。

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回帰直線の傾きが1.16と正の値を取っています。つまり、自覚度が1上がるごとに平均してリアコ度が1.16上がっているということになりますね。こちらも有意でした。

ここまでの結果から、今回私の作成したリアコ度という指標は信頼できるものだと考えたいと思います。

 

③他の条件との関連

というわけで、いよいよリアコ度に関する本格的な分析に移ります。まずは他の質問と比較していきましょう。

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まずは年齢とリアコ度です。なんとなく若い人の方がアイドルに恋をしやすいのかなと思っていたのですが、どうやらそうでもないようです。回帰直線は小さな正の傾きを示していますが、これは優位ではありませんでした。つまり、年齢による相関はほとんどないと考えられます。

面白いのが40代の分布ですね。完全に上下に分かれていて、リアコ度の高い群と低い群が視覚的にもわかります。30代にも分離している傾向が見られますが、10代と20代では分離が小さいように見えます。年齢の高い世代の方が、推しをリアルに恋愛対象としてみているか、全く見ていないかに分かれるのかもしれません。

 

続いて担当ごとに見ていきます。

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平均は横山担が6.4、村上担が5.1、丸山担が6.1、安田担が6.4、大倉担が4.6になりました。

最頻値は横山担が6~7、村上担が4~5、丸山担が7~8、安田担が7~8、大倉担が3~4でした。

ヒストグラムで見ても、大倉担は明らかに分布が左に偏っていて、最頻値が3~4になっています。しかし、6~7にも小さな山ができているため、リアコ層もいるようですね。

その次に平均値の低い村上担ですが、大倉担に比べると綺麗な一つの山に近い形になっています。大倉担の場合は、リアコな人もそうじゃない人もいるけど、そうじゃない人の方が多かったと捉えられますが、村上担はどちらかというと全体的にリアコ度が低いのではないでしょうか。しかし、よく見ると村上担も大倉担と同じく7~8のところに凸があります。

大倉担と村上担はリアコ度の平均は0.5ポイント差で、最頻値も5以下でした。

その次に低い丸山担と村上担では平均に1ポイント近く差があり、最頻値も一気に3上がっているので、ここでグループを分けていいと思います。

リアコ度が低いグループが大倉担、村上担で、平均が4.6~5.1、最頻値が3~5です。

リアコ度の高いグループが丸山担、安田担、横山担で、平均が6.1~6.4、最頻値が6~8です。

続いて丸山担について見ていきます。こちらはかなり綺麗に2つの山が見られます。大きい方の山の頂点が6~7、小さい方が3~4なので、綺麗に大倉担と被りますね。全体的にリアコ度が高いというよりは、リアコじゃない人よりリアコな人の数が多いと推測できます。

その次が安田担です。ヒストグラムに断崖絶壁が見られます。最頻値の7~8が飛び抜けているので、リアコな人が多いだけではなく、他のメンバーよりもリアコ度が高いようです。こちらも3~4に小さい山ができましたが、丸山担よりも圧倒的に小さくなっています。

最もリアコ度が高かったのが横山担になりました。こちらも6~7が飛び抜けています。しかし安田担よりは最頻値が低い値を示しているため、リアコ度が高いというよりは、リアコな人が多いことが平均値を上げた要因だと思います。

まとめると、リアコ度の平均が上がる要因として、①リアコな人の数が多い、②全体的にリアコ度が高い、という2つが推測できました。

①の人数が少ないことで、リアコ度が低くなったのが大倉担。

②の全体が低い値を取ったため、リアコ度が低くなったのが村上担。

①の人数が多いことで、リアコ度が高くなったのが丸山担と安田担。

②の全体が高い値を取ったため、リアコ度が高くなったのが横山担と安田担。

このように分類できると思います。

先ほど年齢とリアコ度に関係がないという話をしました。担当ごとの結果でも、年齢層の低い横山担と大倉担、年齢層の高い村上担、丸山担、安田担という括り方ができなさそうなので、より年齢とリアコ度に関係がないという推測は妥当だと考えられます。

また、最も結婚したことのある人もしくは交際中の相手がいる人の割合が小さかったのが横山担で、大きかったのが安田担でした。しかし、横山担と安田担はどちらもリアコ度がツートップで高くなっています。こちらもリアコ度を変化させる要因にはなっていないように思えます。

そのため、「誰のファンか」ということが、「どれくらいリアコか」に大きく関わっていると考えられます。

 

④その他の結果

本筋でやりたかった調査は③までにまとまっているのですが、他にもいくつか関係ない質問をしてみたので、そちらの結果を確認していきたいと思います。

 

まず、推しが表紙をしている雑誌を購入する度合いは上から順に安田担(8.6)、横山担(7.9)、丸山担(7.7)、村上担(7.6)、大倉担(6.8)になりました。

以前の調査では村上担が高い値を取ったのですが、今回は安田担が飛び抜けていますね。

あれ?これリアコ度と同じ順番じゃん。

とはいえ今度は安田担と横山担が0.7ポイント差、村上担と大倉担が0.8ポイント差と大きく、横山担から村上担までが0.3ポイント差と密集しているので、関係ないとは思うのですが、まさかのシンクロ。

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一応相関も調べてみました。横軸が雑誌を買うかで縦軸がリアコ度です。ほぼ関係なさそうですね。

 

また、担当以外のメンバーにリアルに恋しているかどうかも聞いていました。圧倒的に「いいえ」という回答が多かったですが、ランキングにしてみました。

1. 丸山隆平(13票)

2. 村上信五(11票)

3. 安田章大(4票)

4. 横山裕(3票)

5. 大倉忠義(2票)

こっちはビックリするくらいリアコ度との関連が薄いですね。一番リアコ度の低かった大倉さんがこちらでも最下位ではあったものの、4位が横山さんですし、2位には村上さんが入っていますし。

 

⑤まとめ

最初に考えていた疑問に答えておきましょう。

丸山担って実際リアコな人多いのかな?

→多い方ではある。でも丸山さんは他担から恋される率の方が高め。

エイトだと誰が一番リアコ製造機なんだろう?

→安田さんと横山さんが並んだ。

ていうか、みんな推しに対して恋愛感情ってある?

→わりと半々。

恋愛感情と「推したい」という感情って、何が違う?

→相互の交流が欲しいかどうか。(嫉妬するかどうかではない)

 

ちなみに、リアコ度が低いメンバーが良いとか悪いとか言う意図は一切ありません。

恋されるだけがアイドルではないですからね。技術的な部分に惹かれたり尊敬したりすることも多いでしょうし。一方で恋したくなるような魅力があるのも素晴らしいと思います。

わりとメンバーごとにかなり異なる傾向が見られたのが面白かったですね。

エイトにはそれぞれ別々の魅力を持ったメンバーが揃っているというのが、この結果からだけでも見て取れるような気がします。

長々とお付き合いありがとうございました。アンケートに協力してくださった方もありがとうございます。また機会がありましたらご参加ください。

 

2階席下手側という人格

どうも、未だにマシーン日記を引きずっている丸山担です。

今からビックリするくらい横山さんの話ばかりをします。

 

私がマシーン日記に初めて行った日から早3ヶ月が経ちました。なんなら4ヶ月が経とうとしています。

未だにバラエティ番組やドラマを見ては、「あ、今の横山さんミチオっぽかったな」とマシーン日記の面影を探す日々です。

最近だと、十五祭やひとりにしないよのMVを見ていて、胸に手を当ててお辞儀するのが横山さんの癖だと気づきました。それを見るとマシーン日記のカテコを思い出します。

どうしてそんなにマシーン日記にハマったのか、語り始めればキリがないですが、一つは間違いなく横山さんのカーテンコールのせいだと思います。

 

皆さんはカテコの時、どうしてますか?

私は基本的には、推しに手を振り返さないタイプです。でした。イフオアでも、みんなが拍手してる中で双眼鏡を構えて推しの一挙一動を逃さないように集中しているタイプでした。

とはいえ、自担じゃないメンバーの舞台であれば、カテコでまで双眼鏡を構えることはないので、拍手したり手を振ったりすることも経験としてはありました。安田くんとか安田くんの舞台に行ったことあるし。(あれ?イフオアとマシーン日記を除くと安田くんの舞台しか行ってなくない?)

 

もう少し余談を続けると、私はコンサートでもあまり手を振らないタイプです。

そもそも、近くのメンバーより遠くの自担タイプだったので大抵の場合は双眼鏡を覗いてました。たとえ超至近距離に来ても「はぁ〜、本物だぁ」ってなっちゃって、固まるしかできない。過ぎ去っていった後に「手を振った方が良かったかな?」というのが一瞬よぎる。

多分、何かに没入しにくい人間なんだと思います。頭の奥の方がいつも冷静なんです。それが結構コンプレックス。我を忘れて、みたいな経験が人生を振り返っても全然ない。

 

手を振ってみても、周りに合わせて振ってる感が否めない。じゃあやっぱり双眼鏡でいいや。

 

そんな私ですが、マシーン日記のカーテンコールだけは心の底から手を振ることができました。

横山さんの手のひらって何かキラキラビーム的なものが出てるんですか?

なぜか横山さんに手を振られると、冷静さを忘れて「わぁー、横山さーん」って思いながらニコニコ手を振れてしまう。

公演期間中のヒルナンデスでカメラに両手を振る画面の中の横山さんに、「はぁ〜♡」とキラキラしたため息を漏らしながら手を振ってしまったのは、我ながら結構ヤバいなと思いました。

 

この謎の多幸感を言語化するとすれば、「2階席下手側という人格になった感覚」です。

横山さんはあの時、2階席下手側のことを間違いなく見ていたし、手を振っていたのですが、それは私ではありません。

もちろん横山さんの網膜に私の顔という視覚情報は伝えられたとは思いますが、横山さんの意識の上に登ったということはまず無いと思います。

あくまで私は視覚刺激を構成する一部にしか過ぎません。

恐らく、横山さんは間違いなくそこにいる人"たち"に向かって意識を向けながらも、そこにいる個人には意識を向けていなかったのではないでしょうか。

私は2階席下手側として認識され、2階席下手側として手を振ってもらったのです。

 

好きな人に対して、自分のことを知って欲しい、自分だけのことを見てほしいと思うのは、それほど珍しい感情ではないと思います。

そう考えると、個人として見てもらえなかったことは一般的には喜びに繋がらないのかもしれません。

でも私はあの時、「個」として認識されない幸せにハッキリと気付いてしまいました。

 

私の世代は「みんな違ってみんな良い」と育てられました。個性を伸ばし、自己主張をし、自己肯定感を高め、異なる他者を認め合う。総合の授業でLGBTQについて学び、在日外国人に対する差別について学び、ポリコレに対する感覚を磨き上げました。

断っておきますが、私は個性って好きですよ。

早く同性婚が認められればいいと思いますし、家制度なんてクソ喰らえと思ってますし、夫婦別姓が認められなきゃ結婚したくないと思っているタイプのフェミニストです。

多分一昔前に生まれてたら苦しくて死んでました。

自由最高。個人最高。

 

でも、時々めんどくさくなります。

高校から大学に上がったときに、ようやく服もメイクも自由だとワクワクしました。でも毎朝するのはちょっとめんどくさい。

大学選びは偏差値と受験科目だけで選べばよかったけど、就活になると自分で軸を決めなければいけなくなる。やりがい?職種?勤務地?年間休日数?

自由って好き、でもちょっとめんどくさい。

自由と責任は切り離せないという誰かの言葉があった気がしますが、責任感よりもラフな感情「めんどくさい」が気を抜くとすぐ顔を出します。

かといって手にした自由を手放したいとは思えないし。

だからたまに「死にたーい」と思います。

自由とか責任とか考えるのも選ぶのも放棄したい。でも何かに縛られたくもない。だったら蚊になって丸山さんの指に止まって丸山さんの血を吸って丸山さんの筋繊維に捕まえられて丸山さんに見られて丸山さんの指でぷちっと潰されて死にたい。

 

あと、恋愛もめんどくさいんですよね。

オタクになる前は超恋愛体質と言いますか、今考えれば依存体質と言った方が正しい気がしますが、年がら年中恋してました。

でもオタクになる1年前に初めて好きな男の子と付き合うことができて、思ったんです。

 

3年間の片思いがようやく実った。すごく嬉しい。でも、もしかして結婚するまでずっとこんなにしんどい山を登って降りて繰り返さなきゃいけないの?絶対いつか別れるよね?

好きな人の好きな髪型に合わせ、仲が良かったはずの友達に嫉妬して喧嘩して、笑って泣いて怒って、SNSの投稿に対する好きな人のいいね1つで一喜一憂し、いつも見られているかもしれないことを意識して、デートに誘うにも心臓が破裂しそうなくらいドキドキして、それ以上のドキドキを抱えながら告白して、ようやく登頂完了?

 

めんどくせー。やってらんねえよ。

その後3ヶ月も経たずに振られて、1年の恋愛ゼロ期間を挟んだ私は、見事エイトに落ちました。

現実の恋愛なんてやってられない。

 

多分、1番しんどかったのは「見られる」という部分だと思います。

私が好きな人を見ているとき、好きな人も私を見ている。

顔、髪型、表情、動き、姿勢、体格、服装、喋り方、とにかく細部まで向こうから見られる可能性があり、評価されているかもしれないというプレッシャー。その評価が一定ラインを越えなければ恋人には昇格できない。

これは恋愛以外のことにも言えると思います。

個性の出し方、これで合ってる?

人と違う意見、これで被ってない?

もちろん高い評価を貰えれば嬉しいけれど、自由に表現した分、低い評価をされるとより自分自身を否定されている気分になる。

 

でも、横山さんから手を振られている瞬間は、私ではない誰かとして安心して手を振れた気がしたんです。

私は横山さんが好きですよ。恋愛的な好きかどうかを考えるのはややこしいので置いといて、間違いなく好きです。だからもし1:1で会うなんてことになれば、それはもう好きなクラスメイトをデートに誘ったことなんて比にならないくらい緊張すると思います。泣くかもしれません。

しかしカーテンコールという空間で「会った」時は、私は2階席下手側の1人だったんです。

別に私の顔のレベルで向こうの手の振り方が変わることはありません。私の手の振り方が可愛いとか可愛くないとか、服がオシャレとかダサいとか、そんなことをジャッジされる心配はありません。

 

今この瞬間私が横山さんのことを好きで、マシーン日記を観て楽しんだというだけで、あんなにも真っ直ぐな手のひらを向けてもらえるのか。

あの時の私には、そういう感動があったんだと思います。

横山さんはその辺りが上手い気がします。もちろん本人がどう思ってるかなんて知る由もないですけど、少なくとも見てる側からは「観に来てくれてありがとう」というようなものすごく温かい気持ちの篭ったバイバイに見えました。

ここにいるだけで存在を肯定されているような、そんな錯覚があったのかもしれません。

 

カーテンコールでそのことに気づいてから、オタクとしての生活って結構そういう感覚を感じることが多いかもしれないなと思いました。

例えば丸山さんの言う「妻」もそうです。

丸山さんは確かにファンのことを妻としていますが、当然ながら1人1人の顔が見えているわけではない。

だから結婚生活を維持する努力をする必要もないし、夜遅くに帰ってくる夫に気を遣って料理を置いておいたら翌朝冷蔵庫にそのまま残っていてイライラするなんてこともない。

ただファンであるというだけで、「好きだよ」「愛してる」と言ってもらえる。

自分の意見もオシャレも必要ない。

 

自己肯定感ってそういうことなんですかね。

深掘りするとめんどくさいので割愛しますが、私は親に成績や能力は褒められても、存在を褒められたことはなかった気がします。

大人になってからそういう空っぽを埋めるのって結構大変ですし、無闇に詰め物を探そうとすると色んなもの(主に生身の人間)に依存したりして、心身ともに消耗します。

オタクになって「私個人を見てくれない」という状態を通して、逆に存在をシンプルに肯定してもらえるのって、面白いですね。

 

2021年6月下旬、梅雨入り宣言はどこに行ったのでしょうか。晴れた日が続いています。

早ければ来月にも職域接種で私たちの世代にワクチンが届きそうです。ジャニーズ事務所も職域接種を始めたとか。関ジャニ∞のアルバム制作は順調に進んでいるらしいですね。

Road to Re:LIVEを掲げられて半年が経ち、ようやく5大ドームツアーへの道筋が見えてきました。

またドームの1ブロックとして推しに手を振れる日を待ち望んでいます。

とりあえずMV摂取して生きます。個人的にお気に入りのSING ver.をどうぞ。


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マシーン日記 感想&考察

私のあやふやなあらすじ覚書を読みたい方はこちらから

 

※感想や考察は全て私個人が感じたことを好き勝手に綴っているものです。

※これを読んで納得いかない部分があれば、自分のブログやツイッターでお書きください。

※こういう考えの人もいるんだなと、適当に面白がって読んでいただければ幸いです。

 

目次

1)ミチオに萌えた話
2)横山さんがカッコよかった話
3)キャラクター考察
4)その他考察
5)まとめ

 

1)ミチオに萌えた話

eighterやってきて今までで一番横山さんにハマっている気がします。それくらいマシーン日記の横山さん、かっこよかったです。でもキャラ的にはどちらかというと「ダメ」で「ろくでもない」んですよね。そんなミチオですが、というよりそんなミチオだからこそ?時々萌えるポイントがあります。まずはそれを長々と語っていきたいと思います。

 

私的ミチオの萌えポイント

・コーンフレークを頭からかぶってコーラ(炭酸水)を顔面にぶちまけるところ

なんか分かんないけど、私はここのミチオの顔が異常に好きです。コーンフレークを撒き散らした時点で、口元にめちゃくちゃコーンフレークついてるんですよ。そこに勢いよくシェイクされた炭酸水がすごい勢いで放たれる。

多分私は綺麗な顔が汚されるフェチなので、そのせいだと思います。クロニクルFでカレーうどんのルーで顔がベトベトになるマルヒナも好きでした。ここの良さに気づいてからは、ずっとこのシーンは双眼鏡構えてました。

・「おはよー!」

防護用ゴーグルを外して、バカみたいな大声で至近距離のアキトシに陽気に「おはよー!」と告げるミチオに、最初見たときは結構衝撃を受けました。実はミチオがマトモにセリフを言うのって、この「おはよー!」が初めてなんですよね。どうしても強姦して監禁されているという前情報から、もっと暗くてヤバイキャラを想像してたのですが、ミチオこんなキャラなの⁉︎という衝撃とギャップでハマりました。

・ミキサーの修理

修理中のミチオの手つきってものすごく真剣で繊細なんですよね。でもミキサーの蓋が固いのか、毎回ミキサーの蓋の開け閉めだけめっちゃ力入れているのがなんか萌えました。

・盗聴するミチオ

盗聴シーンは何度かありますが、多分最初の2回は他人のセックスを盗聴してるんだと思います。そこのミチオは子供のように手を咥えて完全にイっちゃってるキチガイって感じの雰囲気があるんですけど、どこかセクシーでもありました。ミチオって基本的には4人の中で1番マトモそうなんですけど、性が絡んでくると、急に狂気的な表情をのぞかせるんですよね。

・モノマネ

ミチオのモノマネのクオリティ、地味に高いんですよ。しかも公演日数が重なるごとにどんどん上手くなっていく。特に欽ちゃんのモノマネのところが、文字通り命がけでふざけている時の表情が笑っているのに怯えていて、追い詰められていて、めちゃくちゃ好きでした。

・ケータイの修理を終えた後のニヤリ

結構この表情重要だと思うんですけど、サチコとケイコの会話が行われている中、ミチオに照明が当たっていない状態でケータイの修理を終えて(=盗聴器を仕込み終わって)ニヤリと笑うんです。だからミチオだけを双眼鏡で観察していないと気づけない表情。それに気づいた時にものすごくゾッとしました。

・手首の掴み方

最初にケイコとセックスする時にケイコの右手首を後ろから右手で持って、椅子に左手をついたケイコを後ろから犯すシーンがあります。ミチオのセックスは基本超本能的ゆえにむしろ機械的で、特にケイコとのセックスは無機質さを感じさせるのですが、その時の手首の掴み方だけが荒々しくも力の入れ方が優しくて、すっげえ生々しかったです。

・ケイコと初めてのセックス後

当たり前ですが舞台だから別に本当にセックスしているわけじゃないし、上半身裸にはなっているものの、しっかりつなぎも着たままなんですよ。でもこの時のミチオの妙な色気と濡れ感と余裕そうな感じは、完全に「事後」の雰囲気を漂わせている。特に座り込んでケイコにもらった二千円を満足そうに拾い上げて見つめている様子が背徳的でした。

その後、壊れていたケイコの電話がちゃんと鳴り始めて、ミチオは指を鳴らして「出なよ」とケイコに促すんです。その「出なよ」の言い方がキザで甘ったるくて、めちゃくちゃセクシーでした。自分の修理の腕への自信と、ケイコの会話を盗聴できることへの楽しみが混ざったような余裕のある笑顔がめっちゃよかったです。

・タンクトップの着方

ケイコと出会ったその日のうちにセックスした後、ケイコの日記が流れている最中、ミチオは脱いでいたタンクトップを着るのですが、薄暗い中で気だるそうに首を通す感じがシルエット含めてめちゃくちゃかっこよかったです。

・アキトシへの怯え

日曜日の朝、アキトシがますますハイになり、サチコからクスリを盛っていたことがバレたと聞いた後、ミチオのアキトシへの表情が一気に変わります。ミチオって最初は結構アキトシに対して少なくとも口では反抗的だし、めちゃくちゃガン飛ばしたりもします。特に一番最初の朝のプレハブ小屋でのシーンでは、状況こそ狂ってはいるものの、ミチオとアキトシは普通の兄弟のようにも見えます。しかし、ここからのシーンでは、ミチオが完全にアキトシを怒らせないようにビクビクしているところが目立つんですよね。かといってアキトシの全部を肯定するわけではなく、思わず「6人もいねえよ!」とか「ダメだって言ってんだろこのキチガイが!」と言ってしまうあたりに、ミチオの狂気と理性の狭間を感じられました。ミチオがまるで「死ぬか笑わせるか選べ」と極限の選択を常に迫られているような表情や言動をしているところは、外から見ると滑稽でありながら、ものすごく真に迫っていました。

・ケイコへの電話

アキトシが鳥人間コンテストに出場した話をしている時に、ケイコにマツザワから電話がかかってきます。その1個前の場面で電話が鳴ったときは、あんなにクールに「出なよ」なんて言ってたのに、このシーンの電話に対してはミチオは完全に怯えているんですよね。でもミチオは怯えながら笑うんです。それがすごく好きでした。

・「出ろ小僧」

トイレの蓋を必死に取られまいとしている時のミチオの腕の筋肉すごい(以上)。

・「音楽聞かない?」「笑っちゃいけない」「さっさと癒されろよ、順番なんだよ、癒されたい奴があとつっかえってっからよ!」「眠れないから」

ミチオが盗聴していることをケイコから根掘り葉掘り聞かれるシーンですが、とにかくミチオの情緒不安定さがすごい。最初の「音楽聞かない?」は怒っている親をなだめるために甘える子供のような声でヘラヘラしてて、次の「笑っちゃいけない」もどこか親に決められたルールを守る子供のような雰囲気があるんですよ。しかしその後の「さっさと癒されろよ、順番なんだよ、癒されたい奴があとつっかえってっからよ!」で、急に怒鳴り始める。そして地図を広げて楽しい発表会のようにゴシップネタを嬉々として語り始めたかと思えば、ケイコに「聞いてんだ」と言われて、弱々しく「眠れないから」と返す。

ミチオの弱さ、幼さ、狂気、暴力性といった要素がふんだんに出ている、まさに1幕の締めくくりにふさわしいドラマチックなシーンでした。

・1号機との再現

1号機とのセックスを再現して、ミチオは正面から左手でケイコの手首を取り、右手を腰に回し、腰を振るのですが、他の音楽に乗せて行われるケイコとの機械的なセックスシーンとは違って、力の入れ方も腰の振り方もめちゃくちゃ生々しくてエロかったです。

・「人のこと言えんのかよ!」「電話盗聴されたくらいで良い気になってんじゃねえよ!」

情緒不安定その2。しかも全開の開き直り。これは1号機をバカにしたケイコへの発言ですね。アキトシに紛れがちですけど、ミチオも笑いと暴力の境目がめちゃくちゃ。ミチオは結局3人の女と関係を持っていて、嫉妬なのかなんなのか他の女が別の女を悪く言うシーンが結構あるんですよ。その時に毎回ミチオは庇うような言動を取ることが多いんです。優しくないようで優しくて優しくない。そういうタイプの人間って一番ハマったらダメなんですけど、でもやっぱりものすごく魅力的なんですよね。

・「もっとリアルなの、聞きたいでしょ?」

盗聴のことが絡んだ時のミチオの爛々とした目、どこか幼い喋りは狂気的で色気もある、ってさっきも言いましたっけ?

・床ドン

自分の女のことを悪く言われてキレるミチオPart.2。正常位でセックス中のケイコが悪びれもせずにサチコの悪口を言うのに対して、床ドンからの「あんたサチコの恩師だろ?」。でも多分サチコだから特別ってわけじゃない。だって直前で「はっ、カニじゃん」と言われた時もキレてるから。そのある意味理不尽なほどに平等に優しいのがミチオハーレムの真髄。

・「もっといろよ」

頭に包帯を巻いたサチコがプレハブから出て行こうとするタイミングでの、爆イケ「もっといろよ」。これが少女漫画なら純粋な胸キュンシーンなんですが、サチコにケイコとセックスしているところを見られて隣にケイコが居ながら上半身裸で悪びれもせずに爆イケ「もっといろよ」は意味わからないですよね。「何言ってんだテメェ」と言いたくなる自分と、普通に「キャー!かっこいい!」ってなっている自分で、混乱させられます。

・「これだからなぁ」

スーツのズボンも履きなさいよと言われたミチオが、足枷を見せて諦めたように笑いながら「これだからなぁ」と言うシーン。言葉とは裏腹に悲壮感が全然なくて、そりゃサチコに「また自慢!」って言われるわっていう絶妙な笑顔。ミチオの笑顔は毎回ゾッとする。

・1幕最後のセックスシーン

1幕最後のミチオとケイコの音楽に合わせたダンスのようなセックスシーン、無機質さと色気がちょうどよく混ざり合ってとても芸術的でした。まさにセックスマシーンです。

まずはケイコが布団を片付け、ミチオが盗聴器を床下に仕舞います。

そのあと正面座席側に背を向けてメガネを外し、ネクタイを外し、ジャケットを脱ぐのがすごい色気でした。

15日の公演ではチェーンに布団が絡んでいた影響で本来正常位をするはずの位置にミチオの鎖が集まってしまっていて、ケイコが寝転べるように急いで鎖を持ち上げて投げるミチオ(ていうかそれは横山さん)がカッコよかったです。

そしてミチオの手を借りて起き上がったケイコの足の間をミチオが背中で滑ってスッとくぐって、騎乗位に移ります。

その時音楽に合わせて手でリズムを取るのですが、次の体位に移るために立ち上がるケイコに合わせて上体を起こしながら手で軽くリズムを取り続ける姿が好きでした。

椅子に座るところで、ミチオが後ろに手を置いてだらんと天井を見る時の顔がめちゃくちゃセクシーでした。

スムーズに次の体位に移るためにミチオとケイコが社交ダンスのように手を借り合うのですが、まるでチーム競技のようでした。

どのタイミングでかは忘れましたが、ミチオとケイコがファイティングポーズのように向かい合ってから手を取って次の体位に移る部分の横山さんの上半身がすごくしなやかでほれぼれしました。

最後にミチオが足を伸ばして床に座り、足の間に立ったケイコの下腹部あたりを手で囲って着床を象徴するようなポーズを取る部分があるのですが、正面からはミチオの顔は見えなくて、バルコニー席からだと少しだけ見えたのですが、セックスシーンで顔を歪めている時とは違って結構真剣な表情をしていたのがまたよかったです。

・月を見るミチオ

プレハブには窓がありますが、ミチオは基本窓の外に興味を示しませんし、カーテンも閉めきっています。そんなミチオが唯一窓の外の景色を眺めるのが、ケイコが「月が綺麗」と言った時。隣に並んでぼーっと空を見上げるのですが、ケイコはすぐに去ってしまいます。その時のミチオの背中が物悲しくて、でもきっとミチオはケイコの言う月の綺麗さは理解できなかったんだろうなと想像しています。ミチオが笑うことなしに弱さを見せる唯一の場面でもある気がします。

・「わかってる」

アキトシを金槌で殴り殺してしまいテンパるサチコが「あんたが危ないと思って!」と言うのに対して、ものすごく包容力全開で「わかってる」って言うミチオを見て、まぁモテるよなって思いました。

・先生に相談するミチオ

相変わらずデリカシーがない。サチコは「ミチオが先生に相談しようと言うので、私は結構ショックだった」のに。殺人という重大事件を隠蔽するのに、2人だけの秘密にしようとか全然思ってない。だから盗聴器の秘密も結局ケイコに喋っちゃう。自分の周りの女同士が嫉妬するかもしれないとかいう発想はミチオにはない。ミチオの死因はアキトシに殺されるか、女に刺されるかのどっちかだと思う。そこが魅力。

・ミチオのスイッチ

性とゴシップが絡むとイっちゃってる感じになるミチオですが、特にこのサチコが笑い転げている時に下着が見えたところで、表情が見えなくても、スイッチが入ったと分かる演技がすごかったです。

・駅弁

「先生にしてないこともしてぇ〜」と飛びついてくるサチコを軽々キャッチしてセックスするミチオ、なんか普通にすごい。いくらサチコが小柄で痩せてるからって、身長157cmってことは少なくとも40kgはあるだろうに、飛び込んでくる40kg以上の人間をキャッチして持ち直すことなく駅弁に移れるミチオ(てか横山さん)、すごい。

・「俺を取り合って女が戦ってる!夢のようだ!」

基本的に性とゴシップが絡まない限りは4人の中で一番マトモなミチオですが、この時のミチオの目の見開き方と口角の上がり方はギラギラしていて、興奮が表情から溢れ出しています。人が争ってるの見たり聞いたりするのが結構好きなのか?

・「俺、社会人なるんかなぁ?」

直前まで笑いながら自嘲しているミチオの発言内容は、どちらかというと「普通の」社会人になりたいように聞こえます。普通の社会人になれない自分を嘆いているように聞こえます。なのに最後にものすごく不安そうな顔で「俺、社会人なるんかなぁ?」っていう言葉が出てくるんです。片足の膝から下を失ったとはいえ、長い監禁生活からようやく解放されると言うのに、将来を想像するミチオの姿はとても悲壮感が漂っていて、不安に満ち溢れているんですよね。その言い方と表情がものすごく好きでした。

・「キチガイが!」

ケイコが火をつけたことが分かると、さっきの不安そうな顔から打って変わって、また目が爛々とし始めるんですよね。サチコの死を悲しんで微動だにしないアキトシとは対照的に大声で笑いながら「キチガイ!」と言い続けるミチオ。このシーンのミチオの顔は、いつも双眼鏡でじっくりと見ていました。

 

2)横山さんがカッコよかった話

ここまででおよそ6000字あるみたいです。ここから2個目って正気か?って自分でも思いますけど、満足するまで書いていきたいと思います。

やっぱり生の現場の良いところは、どうしても隙間が見えるところだと思います。

ドラマだとカットがかかった後とか、待機中とか、NGシーンは絶対に放送されないですし、配信のライブでも暗転してVTRが始まった時に階段を降りていく推しの背中とかが見れなくなるんですよね。

マシーン日記は私にとっては十五祭ぶりの現場でしたが、横山さんがミチオを演じる中で、時々アイドルとしての「横山裕」の姿が垣間見れることにめちゃくちゃ興奮しました。

 

・表情の演技

正直、声の出し方に関しては秋山菜津子さんが圧倒的な存在感でした。そんな中で、横山さんの演技に関しては表情の演技がめちゃくちゃ好き。

ミチオってよく笑うんですよ。面白いときも笑うけど、興奮して笑う、悲しみながら笑う、ごまかしながら笑う、絶望して笑う、狂ったように笑うといったパターンの方が多いです。この時の横山さんの子供のような笑い方から、目を爛々とさせる狂気的な笑い方といった表情のバリエーションが見応えありました。

・強姦シーンからの最初の暗転

暗転の中で横山さんはつなぎを履いて腰で袖を縛り、タンクトップを着て靴下を履き、スニーカーを踵を踏んだまま足を突っ込んで、しゃがみこんで右足にマジックテープ式の足枷をつけてから靴の踵を直し、ゴーグルをつけて毛布を一度広げてから被って、仰向けに寝転んだら、3回後ろの髪を直します。

どうやらこれがルーティンらしく、毎回動きがほぼ一緒でした。レンジャーかなんかにも横山さん自身であまり習慣を崩せない人間だと言っていましたが、そういう部分が垣間見れて、横山さんを少し覗き込めたような気がしました。

・ミキサー修理中

直前でコーンフレークをぶちまけているので、コーンフレークがつなぎの結び目に入ってしまうらしく、めちゃくちゃ丁寧にそれを集める姿がツボでした。ちなみにドライバーやゴーグル、はんだごてなどが入った工具入れに、銀色の魔法瓶の水筒とタオルも入っています。取ったコーンフレークを床に捨ててしまうと後で踏んで粉々になってしまうので、左手を受け皿にして右手でフレークを1つずつ割れないように集め、工具入れの中に入れておく姿が好きでした。

あとは足枷のマジックテープを暗転の中で結構急いて装着しているからか、毎回少しズレてしまっているらしく、音がしないようにそっと外して、ぴったりと合わせている姿もめちゃくちゃ横山さんでした。

・ジャケットを脱ぐ

ミチオがケイコに自分が浮いていたことを打ち明けた後、セックスシーンに入っていくわけですが、その時舞台正面に背を向けてメガネを外し、ネクタイを外し、ジャケットを脱ぐんです。舞台だから次着る時に困らないようにっていう理由もあると思いますが、横山さんってめちゃくちゃ丁寧に服を脱ぐんですよね。それがすごくセクシーでした。

・1幕捌け

1幕が終わるとケイコは下手の普通の出口から出ていくのですが、ミチオは繋がれているので、盗聴器を隠している床の隠し扉の中に捌けていきます。その時腕を体で支えているのがカッコよかったです。

・Smooth criminal

やっぱり何よりダンスですね!結局私はアイドルオタクなんだなと実感しました。マイケルジャクソンを踊り出す時の興奮たるや。もちろん双眼鏡で横山さんだけを追いかけるのも楽しいのですが、4人が踊っているのをパッと見た時に、やっぱり横山さんが一番踊りなれてるなっていうのがわかるんですよ。そこがアイドルとしての横山裕の成分を感じられて、ものすごく萌えました。特にソロダンスの興奮はすごかったです。コンサート行きてえ!

・カテコ

言わずもがなのカーテンコール。私がオタクになってから舞台を観に行った回数はギリギリ両手足の指の数に収まるくらいなのですが(結構観に行ってるじゃねえか)、個人的に横山さんのカーテンコールが一番好きです。横山さんのお手振りってなんなんでしょう、普段はアイドルに手を振り返すことに謎の気恥ずかしさを感じる私ですが、横山さんの手からはそれを打ち消す何かが出ている気がします。初めてマシーン日記を観た時に、カーテンコールで思わず拍手を止めて手を振り返してしまって、謎のホクホク感を得てしまいました。

ちなみに初めてマシーン日記に行った京都初日の次の週の木曜日、ヒルナンデスで横山さんがCM明けか何かでカメラに向かって小さく手を振っていて、思わず「はぁ〜!」と言いながら手を振ってしまいました。ヤバイ。

 

3)キャラクター考察

ようやく考察に移れます。この時点でほぼ丸3日間ブログを書き続けている状態です。それでもこの記憶が出来る限り薄れないうちに文章に残しておきたいのですが、考察まで来れば一安心みたいなところがあります。

 

・アキトシ

どの順番で書こうか迷ったのですが、とりあえずアキトシから始めてみたいと思います。

アキトシは最初は深緑(に見えた)の外套で登場し、他の場面ではカーキ色のつなぎを着ています。187cm・72kgと、比較的身長の高いミチオと比べてもかなりの大男で、威圧感を感じさせます。右手には常に黒いグローブをはめていて、兄指と呼ばれる6本目の指があります。

①支配者としての存在

まずアキトシは、この舞台の中で強烈な支配者なんですよね。

肩書きとしてはミチオの「兄」というイメージが強いですが、アキトシの振る舞いはどこか「家長」や「父親」を想像させます。

多分それは守ってあげてる感、可愛がってあげてる感が、理不尽な支配と共存しているからかなぁと思います。かつては「女性を守る」という大義名分のもとで女性の様々な自由や権利が迫害されてきて、今もそういう部分は残っているように、アキトシは「守ってあげる」「可愛がってあげる」という行為の残酷さをまざまざと見せつけてくれます。

特にサチコをアキトシが撫でる様子は、サチコの怯え方も相まって、普通に殴ったり蹴ったりするシーンよりも一層アキトシの恐ろしさを強調します。

「家族」や「一家」という言葉はアキトシの口から何度も出てきますが、アキトシとミチオの両親の存在感はとてつもなく薄いです。ジャングル風呂も欽ちゃんの仮装大賞も鳥人間コンテストも、家族で行きそうな場所、家族で見そうな番組ですが、アキトシにとっての家族はミチオとサチコとケイコと自分の4人なんですよね。アキトシは傷害事件を起こして怒り狂った父親に監禁されていたとミチオが語っていますが、息子が事件を起こしたとはいえ、プレハブに鎖で繋いで監禁しておくのって異常だと思うんです。ていうか普通に刑事事件です。そこから彼らの父親の姿を想像すると、アキトシのような家族に対して支配的で暴力的な人物だったのではないでしょうか?

だからアキトシもミチオも、日常の延長線上で暴力を振るう。アキトシはミチオを強姦の罰として監禁するし、ミチオはそれを受け入れる。そもそもツジヨシ家は「父親」という圧倒的に支配的な存在によって、暴力が日常的に溶け込んでいて、倫理的なものが壊れていたのかなと感じます。そしてきっと2人とも父親のことは怖いと思っていたけど、嫌いではなく、そもそも父親のやっていることが悪いとも思っていなかったのかもしれません。

その結果、父親の死後、アキトシ父親の担っていた「支配者」の役割を当たり前のように引き継いだのかなと思います。なのにサチコはセックスを拒み、家族の象徴である子供を作ることができない。一方でミチオはケイコを妊娠させる。そのあたりがアキトシをおかしくさせた部分でもあるのだと思います。

 ②「普通」

ところでアキトシって、この舞台の中で孤立しているんですよね。ミチオとケイコ、ミチオとサチコ、ミチオを中心としたハーレムのような秘密を共有し合う関係が存在する中で、アキトシの存在って「敵」っぽいんですよ。特に1番最初の場面では、淡い色の下着で無防備な格好をしているミチオとサチコに対して、長い丈の暗い色のレインコートに身を包んで深々とフードを被ったアキトシのビジュアルは、確実に2人の世界を壊しにくる存在なんですよね。

ちなみにこの舞台の中心にいるミチオですが、確かにアキトシとも最初の方は気心の知れた兄弟のような顔をする場面もありますが、最終的にはアキトシを恐怖の対象として見ています。

アキトシの過去を振り返ると、まず5本の指に加えて6本目の「兄指」を持って生まれてきます。最終学歴は高卒です。そして3年前に鳥人間コンテストに出場し、双極性障害を発症し、傷害事件を起こします。今は亡き父親に怒り狂って1年間プレハブで監禁され、1年前にミチオがサチコを強姦したのを発見し、ミチオをプレハブに監禁し、サチコと結婚します。そして現在はフクシマハルオと名乗る人物の教えを崇拝しています。

アキトシは「高卒」という部分に強いコンプレックスを持っているように見えます。他のキャラクターに比べてケイコに対して何度も「大卒」という言葉を使います。ですが、6本指に関して本人が何か言及することはそれに比べると少ないと思います。そして普通の起こし方や普通の写真撮影を嫌い、「普通」であることを嫌がりますが、同時にフクシマハルオの教えを崇拝し、「普通の家族」というものに強い憧れを持っています。

物語の中で強い存在感を放つフクシマハルオですが、実際のところ本気で崇拝しているのはアキトシだけっぽいんですよね。

この物語のキャラクターは4人ともどこかで社会に弾かれている部分があると思いますが、6本指のアキトシは、ミチオやサチコと違っていじめられたりするのではなく、怖がられて避けられてきたのではないでしょうか。怖がると畏れるは少し似ています。だから、自分が普通でないことにどこか優越感すら抱いています。「大田区のシドヴィシャス」と言われたことを今だに覚えているし、「普通の起こし方」「普通の写真撮影」を嫌う。でもどこかで、誰かと身を寄せ合って暮らすような強くない、怖がられない、「普通」の生活に憧れがある。だからこそその象徴とも言える「家族」を崇拝している。

アキトシにとって「普通」とは、なりたくないものであると同時に、憧れているものでもあるという、複雑な存在なのではないでしょうか。

③弟・ミチオ

あとはカインズ・コンプレックスですよね。パンフレットでもこの説明に2ページが割かれていましたが、要は兄弟間の嫉妬。これがこの物語の1つのキーだと思います

「浮いていた」ものの、五体満足でなんだかんだ色んな女性から愛されるミチオは、アキトシにとってうらやましい存在なんだと思います。しかも先ほども言った通り、ミチオはケイコがきて早々に妊娠させてしまいました。自分はサチコからセックスすら拒まれているのに。だからといってアキトシがミチオのことを嫉妬から憎んでいるかというとそういうわけでもなさそうで、ミチオのことを弟として大事にしている部分があるように見えます。

アキトシは最初のミチオを起こす場面で、「おい起きろ」とまた普通の起こし方をしてしまったことを落ち込みます。「また」なんですよね。アキトシはミチオを前にすると、いつも普通の起こし方をさせられるのです。話している内容はただの起こし方のことですが、ミチオはアキトシを「普通」にさせてくれる存在なんじゃないでしょうか。

ミチオ本人は気づいていなさそうですが、普通の体を持ち、人(特にサチコ)から体を許され、内定を取ることのできるミチオは、アキトシから見るとすぐに自分のことなど捨てて離れてマトモな生活を送ってしまいそうに見える部分もあると思います。だから理由をつけて監禁し、支配し、自分の手元に置いておきたいという気持ちがある。加えて、そんな弟を自分の言いなりにさせることで、自分が弟より上の存在だと確かめたいと思っている。そういう部分があるのかなと感じます。

舞台となるのは「ツジヨシ兄弟電機」ですが、この名前、最初に見た時から「兄弟」ってわざわざつけるの変だなと思ってたんですよ。少なくとも3年前まで父親が生きていたということは、死後になってわざわざアキトシが「兄弟」という名前を足したんじゃないかなと思います。そこにもアキトシのミチオへの依存が現れているんじゃないかなと感じました。

アキトシはサチコに執着しているように見えますが、実際のところアキトシが本当に手放したくないのはミチオなのかもしれません。

④プレハブの中の会話

ところでアキトシは、どこまで知っていたんでしょうか。

ミチオはサチコのことを「2号機」と呼ぶ場面がありますが、この言い方からすると、恐らくミチオとサチコが体を重ねたのはあの1回だけではなかったのではないかと思っています。では、ミチオとサチコはどのタイミングで関係を持っていたのでしょうか。ミチオとサチコが終盤勢いでセックスしてしまった時の「暑い暑い」と誤魔化す感じは、久しぶりのソレだったのかなという印象を受けました。だとすると、ミチオとサチコはアキトシに見つかる前、1年前の夏より前に何度かセックスしてたんじゃないかなと思っています。

ケイコは「プレハブの中の声って意外と筒抜けなのね」と言っています。サチコはアキトシとミチオが言い争いをしている間は朝ごはんを持って行きませんでした。つまり、あの舞台の中でプレハブはミチオを監禁する閉ざされた場所でありながら、同時に舞台上の360度から見ることのできるセンターステージのように公然の場所でもあったのだと思います。

ミチオはアキトシとサチコの会話を盗聴していました。ミチオとサチコはアキトシのことを「6本指野郎」と呼んでいました。2人で薬を盛っていました。他にもアキトシに対しては結構言いたい放題です。

そんな2人の関係や会話を知りながら、バカみたいなフリしてふざけたことを言うアキトシのことを考えると、少し気の毒に感じる部分も出てくるかもしれません。

⑤ハイ

アキトシは最初の朝の場面からミチオに「ここんとこずっとこう(ハイ)だな」と言われています。物語自体はケイコが来たことで展開していく印象がありますが、実際にはその少し前からアキトシはハイだったわけです。ミチオが「3年前も」と言っているあたり、アキトシがハイになるのはわりと久しぶりだったのではないでしょうか。だとすれば、原因はなんでしょう。

おそらく、大卒の人間を雇うということが決まったからではないでしょうか。アキトシは高卒の自分が大卒の人間を雇うことができることに優越感を感じていますが、それと同時に不安もあったのではないかと思います。高卒の弟・ミチオと中卒の妻・サチコの3人の空間ではアキトシの権力は絶対的ですが、大卒の人間が来れば、それが崩れるかもしれません。自分がバカにされるかもしれません。優越感と不安がアキトシをおかしくさせたと考えられます。

また、アキトシ本人はハイになることを「兄指が疼く」と表現します。6本目の指はアキトシが鳥人間コンテストでお蔵入りになった原因だと思われています。つまり、アキトシが社会から排除されていることの象徴なのではないでしょうか。社会と交わることへの不安のようなものを「兄指が疼く」と表現しているのかもしれません。

アキトシは最終的にプレハブに火をつけてミチオを殺しそうになります。つまり、ミチオやサチコに対して裏切られたという感覚があったのではないでしょうか。2人にとっては都合よく、トイレから出てきたアキトシはミチオとサチコに殴られたという記憶がすっかり消えています。ですが、完全に忘れたとは思えません。なぜなら、サチコとミチオがアキトシに薬を盛ったことがバレてからしばらくは普通にミチオに接していたにも関わらず、ミチオに「このキチガイが!」と言われてから突然、「サチコと2人で俺に変な薬盛ってたの知ってるんだぞ」と言い出します。

アキトシはある程度わざと思い出さないようにしているんだと思います。弟のミチオと妻のサチコに裏切られた記憶をできるだけ思い出したくない。でも裏切られた感覚は残っている。だから突然暴力的な行動を取り始め、どこかで我慢できなくなる。そう考えると、サチコとミチオが薬を盛っていたのがバレたのどかな日曜の朝の場面は、3人の関係がおかしくなっていくスタートの場面なんだと思います。

 

・サチコ

サチコのビジュアルで強烈な印象を残すのは、薄い体の背骨が目立つ極度の猫背です。服装はそれを際立てるように最初は白のキャミソール、身体にフィットする青のワンピースにオレンジの作業着、スクール水着などです。髪は肩くらいで常にうねってバサついていて、暗い印象を強調しています。アキトシ187cm、ミチオ175cm、ケイコ165cmに比べると、猫背や骨格のせいもあってかなり小柄で貧相に見えます。

喋り方は怯えるような小さな声か、グフグフと他人をバカにしているかのどちらかが多く、「かわいさ」からは程遠いようなキャラクターです。

①性嫌悪

ミチオに対しては自ら迫る場面もありますが、サチコの「私も途中からアンアン言っちゃってたわけだし」というセリフは、少なくとも最初の方は間違いなく「強姦」だったと言ってしまっているようにも聞こえます。アキトシに対しても、恐らく一度もセックスさせたことがないのでしょう。ケイコにも「あたし、そもそもオマーンに抵抗感あるし」と話しています。ミチオに「兄貴とSMやってる女」と言われた時も、かなりムキになって反論します。なのでサチコがセックスに対してかなり嫌悪感を抱いているのは間違いないと思います。

②バカ女

サチコは全員からバカだと言われています。ミチオはサチコを「バカ中卒」や「バカ女」と何度も呼びますし、アキトシも「中卒」という言葉を使っていました。ケイコも「昔から思ってたけどバカなんだな」と言う場面があります。

でもサチコって、「愚か」ではあるかもしれませんが、「バカ」だとはあまり感じません。むしろ結構頭が回るんじゃないかなと感じる部分もあります。つまり知能的に劣っていると言うよりは、自らを不幸にするような選択を自らすすんで選んでしまうような側面がある気がするんですよね。

サチコは被害者キャラというか、いじめられっ子というか、自分が傷つけられることにあまり抵抗感があるように見えませんが、マツザワやミチオと違うのは、本気出せば避けられるように見えるところなんですよね。だからバカじゃなくて愚かというか、地獄から抜け出す方法を知らないんじゃなくて、知っててやらないように見えます。

だからアキトシにどれだけ暴力を振るわれて怯えていても、本気でやりたくないセックスはやらないし、ケイコに放課後4時間走らされることになれば、いじめを回避してみせることができる。

③ケイコ

中学時代までのサチコにとってのケイコは恩師です。中学卒業後にケイコとマツザワが怪しいと聞いてから嫌いになります。しかし最初にケイコに会った時点でのサチコは、この卒業後の記憶は完全に忘れて待っています。サチコがケイコに対して攻撃的になるのは、ミチオとケイコが雨の夜に関係を持った次の場面なので、まるで嫉妬から攻撃的になっているようにも見えますが、もう1つ要因があるようです。サチコは中学時代のスクール水着でビニールプールに入っています。パンフレットにそれがサチコが中学の時の思い出を鮮明に思い返すきっかけになったと書いていて、ものすごく納得しました。

④ミチオ

サチコは「あたし、あなたのことが憎い。でもあなたと先生とあのキチガイの中だったら、順番的に一番憎くない」「コイツ私のこと好きなくせに」とミチオに言います。

キャラクターが他人の心情を推察して述べるときは、自分の心情について語っているという法則を聞いたことがありますが、恐らくサチコはミチオのことが好きなんですよね。

でもそれは純粋な愛っぽくはない気がします。まぁ「純粋な愛」ってなんやねんって話になると長くなるのでやめておきますが、サチコって自分と同じ境遇の男を好きになる癖があるんですよね。マツザワもそうですが、サチコは自分と同じくらい下に見られている人間を好きになることで、この男と釣り合いが取れていると言う安心感を得ているのではないでしょうか。

だからケイコがマツザワと怪しいと聞いた時の反応も「おめえがマツザワじゃマズいだろ」なんですよ。ケイコを持ち上げる発言、マツザワを貶す発言をわざとします。で、「あたしはいいよ?マツザワで」になる。最初サチコはケイコに対してミチオのことを「ろくでもない」「ブーブー弟」「ヌートリアのような緩慢な動き」と趣向を凝らしてボロクソに説明します。アキトシに殺されるかもしれないことをわかっていながら、ミチオを珍しいペットでも自慢するかのようにケイコに会わせます。サチコはアキトシのことはよくバカにしていますが、ミチオのことを悪く言っているのはそのシーンだけなんですよね。

無意識にか意識的にかはわからないですが、サチコは自分の好きな男をこき下ろすことで、誰かに取られることを防ごうとしているのではないでしょうか。

⑤「でも私もハイなんです」

アキトシがハイ(躁状態)であることは何度もサチコとミチオに揶揄されますが、サチコは初めてケイコとあった時点で「でも私もハイなんです!」と語っています。ということは、この物語の中で、この場面以降、サチコは常にハイだったんではないでしょうか。

⑥悲劇のヒロイン願望

サチコはロマンチックでドラマチックなものをバカにしながらも、主人公になりたい願望を見せます。ミチオの足に斧を振り下ろし、プレハブの真ん中に立って言い放った言葉は「私主役じゃん!」でした。サチコが歌う歌の歌詞は、舞台全体の雰囲気とは掛け離れて、希望や明るさに満ち溢れています。虹の向こうの素敵な世界を夢見る姿や、そよ風に思い人の声を重ね「夢は両手いっぱい」と歌う健気な姿は、まさに王道ヒロインです。

しかし実際のサチコは主役とは程遠い人間です。クラスの中心的な人物になれないどころか、いじめられてクラスの輪からはぶられています。勇気も情熱も正義も人徳もないし、根暗で猫背で歌も下手です。自分が主役になれないとわかっているから、あえて「劇なんて、バカバカしいですもん」と思い込むことで、惨めな気持ちになることを回避している。

サチコは主役に憧れますが、ヒロインってヒーローと違って、いつも悲劇性が絡んでくる気がします。可哀想だけど健気に頑張る女の子、みたいな。サチコもそれに憧れているのではないでしょうか。だからいつのまにかヒロインの悲劇性の部分だけを拾い上げて、自分を過酷な環境に追い込んでしまう。

そしてサチコはケイコのことを、自分のことを不幸にしにきたと思っています。ある意味、自分を不幸にする敵の存在は、ヒロインになりたいサチコにとって、必要なものだったのかもしれません。自分のことを不幸にするアキトシとケイコから逃げて、一緒に虐げられているミチオと2人で虹を超えようと頑張るのは、サチコにとって理想的な展開だとも考えられます。

そう考えると、ミチオが「これだからな」と鎖を見せるところで「また自慢!」と怒ったのも理解できる気がします。サチコがヒロインになるとしたら、必然的にヒーローはミチオであって欲しいはずですが、むしろミチオの方が悲劇のヒロインっぽいんですよね。鎖に繋がれて可哀想だけど、なんだかんだ3人から存在を求められる。

 

 

 

・ケイコ

ケイコも男性陣に比べれば身長は低いですが、その圧倒的な存在感と姿勢と骨格は強さを感じさせます。サイドを刈り上げ、右腕には刺青、基本的には紫の作業着を着ていることが多く、個性的で中性的な印象です。

喋り方は低くハキハキとしていて、力強さを感じさせますが、語尾は女性的なことが多いです。

①物語の鍵

この物語の中でキーとなるキャラクターは確実にケイコでしょう。歪ながらも均衡を保っていたツジヨシ家は、ケイコの登場によって狂っていきます。

学歴もそうです。電気しかいじったことのない高卒のアキトシ、ミチオ、そして中卒の女工・サチコに対し、大卒で教職の経験があるケイコは間違いなくエリートです。s

そしてケイコは圧倒的な力を持っています。手からなんか出ます。ミチオとサチコは常にアキトシに怯えて、機嫌を取って生きてきました。2人ともハイなアキトシの理不尽な発言に合わせて暮らしている。だから観客として側から見ているとメチャクチャで面白い。しかし、ケイコは身体的なパワーでもアキトシに圧倒的に優っています。

しかもただアキトシを上回る存在が出てくるというだけでなく、そんな最強の人物がミチオのマシーンになってしまうのです。

恐らくサチコだけでなく1号機も、体格や性別を鑑みると、アキトシに物理的に勝つことはできなかったのでしょう。であれば、たとえミチオが1号機や2号機といったマシーンを手に入れても、アキトシはマシーンを含めて支配すればいいだけなので、均衡が崩れることはなかったと思われます。

しかし3号機の場合は、ミチオがアキトシに勝つことができる可能性を生み出してしまいました。そこがツジヨシ家を狂わせていく1つの要因なんだと思います。

②曖昧さ

ケイコは曖昧さを嫌い、はっきりしたものを求めます。

だからこそ、善悪がメチャクチャになった状態でバランスを保っていたツジヨシ家の均衡を失わせていく原因になった部分もあると思います。

しかし他人にハッキリとしたものを求めるわりに、ケイコ自身についての説明は分かりにくく、この物語の中でもっとも何を考えているかよくわからないキャラの1人だと思います。

ケイコが工場に来た理由も、結局よく分かりません。サチコは「私を不幸にして帳尻合わせにきた」と思っていますが、それはサチコの思い込みなんじゃないかと私は思っています。ただサチコがそう思った原因も、ケイコの「恩売るわよ」の説明がわかりにくいからじゃないかと。

だからといって、ケイコがずっと本当のことを言ってなくて、発言は信用できないわけではないとは思っていません。むしろケイコは恐らくかなりちゃんと説明しているのではないでしょうか。ただその説明の仕方が複雑でわかりにくいだけで。

ケイコの根底にあるのは、価値のないものを見てみたいなんじゃないかなと思っています。

「時給制」だけでツジヨシ兄弟電機に来たというのは理由として弱い気がしますが、機械好きのケイコが数ある時給制の仕事の中で工場を選ぶと言うのは考えにくい選択肢ではありません。また、ミチオが月給3万円であること、昼休みが20分で遅れると時給に響くこと、冷房がないこと、といった情報を鑑みても、恐らく工場の中でもトップクラスに労働環境の悪い職場なのではないでしょうか。そう考えると、ケイコが最底辺を選び取った結果がこの工場だったというのは考えられる気がします。

ハッキリしたものを求めているケイコですが、ケイコの身体は曖昧です。女性であるにも関わらず、未発達の男性器があり、オリンピック出場まで行ったにも関わらず、セックスチェックで弾かれました。それはケイコが社会から弾かれたということでもあると思います。

だからこそ自分にはないハッキリしたものを求めているのかもしれません。

③ミチオとマツザワ

ケイコとサチコの男の趣味は不幸なことに二度も被ってしまいます。マツザワは声のみの登場ですが、聞いている限りミチオとそっくりだと思います。いじめられていたところ、サチコと違っていじめから抜け出せなかったところ、ケイコにクズと言わしめたところ、そしてサチコとケイコから好意を寄せられるところ。ケイコとサチコ、2人とも有り体に言えば「ダメ男好き」だと思いますが、相変わらずケイコの説明はこの点についても分かりにくいです。

ケイコはミチオについて「あんたの価値の無さはわかりやすい」と言い、まるでそれがミチオに服従を誓った理由かのように語られますが、ケイコはアキトシには興味を示しません。客観的にみて、ミチオよりアキトシの方を最低だと想う人の方が多いのではないでしょうか。ケイコはサチコがミチオのことを「ろくでもない」と言ったときに、強く興味を持ち始めます。

ではミチオとマツザワにあって、アキトシに無かったものは何かと考えると、弱さなのではないでしょうか。パンフレットで大根さんは「ケイコに母性のようなものを感じた」と述べていますが、アキトシは支配する側、いじめる側の人間です。ミチオとマツザワはされる側の人間です。ケイコにとっては、そういう部分が放って置けなくなるダメ男、みたいな重要な要素の1つだったのかもしれません。

④化け物

「先生はあんたなんか一飲みよ」や、「5秒で首を折るわよ」といったサチコの発言に対して、ケイコは「私のことなんだと思ってんの」と言います。また、サチコはケイコのいないところでケイコのことを「化け物」と言っています。

怪力で未発達の男性器を持つケイコは、恐らく昔から化け物扱いされてきたのではないでしょうか。先ほども書きましたが、この舞台に出てくる4人は、それぞれどこかで社会から疎外感を覚えている部分があるように見えます。サチコとミチオは同類でした。ケイコはどちらかというと、アキトシに近い部分があるのではないでしょうか。6本指や男性器といったもののせいで、恐れられ、化け物のように扱われる。だからこそ、自分を受け入れるしかないであろう、拒絶する方法を知らないであろう、ミチオやマツザワといった圧倒的に弱く価値のない人間を好きになるのかもしれません。

 

・ミチオ

薄いグレーのつなぎで、中に白いタンクトップを着たミチオは、右足に足枷が繋がれています。プレハブの中心からミチオを繋ぐ鎖は、ミチオがギリギリ外に出れるくらいの長さです。金髪の長めの髪は常にグシャグシャで、身体も薄汚れていて、風呂をどうしているのかは分かりませんが、少なくとも毎日入っているわけではなさそうです。

①ミチオとサチコ

ミチオとサチコの構図で印象的なのは、2人がお互いの顔を覗き込んで笑うシーンです。この絵は舞台の中で3回出てきます。1回目は強姦した後のことで、ミチオが体をかがめてサチコの顔を覗き込み舌を突き出すと、サチコは笑います。2回目はまるで1回目の再現かのように、アキトシがいなくなったプレハブでミチオがサチコに四つん這いで近づき、舌を突き出します。この時もサチコは笑っています。最後は死んだと思われているアキトシをトイレに隠した後のシーンで、2人はお互いにすがりつくように手を絡めながらアキトシのおかしさを笑います。

この姿は弱いもの同士が傷を舐め合っているようにも見えますし、子供がふざけあっているようにも見えますし、共犯関係にも見えます。

ミチオとサチコが笑いあっているというのは、アキトシにはバレてはいけないことなのでしょう。アキトシに隠れて薬を飲ませ、馬鹿にする2人は、そうやって笑いながらギリギリ自分を保って生きているように見えます。

②ミチオとケイコ

ミチオはケイコに対して「盗聴されたくらいで調子に乗んなよ」と言いますし、常に「オバハン」や「3号機」と呼んでいて、人間として愛している様子は見られませんが、かといって大事にしていないと言うわけでもないのかなと思います。

特にそれを感じるのは、ケイコにマツザワから電話がかかってくる場面です。一番最初に携帯の修理が終わって着信音が鳴り出した時、ミチオは得意げに「出なよ」と言います。しかしその後の場面でケイコの電話がなると、ミチオは電話に怯えたようにケイコからケータイを奪ってコーンフレークの箱に入れてしまい、話を無理やり続けます。

この2つの場面の間で、ミチオの着信音へのリアクションが大きく異なるのです。つまり、ミチオはその場面の間のどこかでケイコの電話を鳴らしているのが夫だということを盗聴するなどして知ってしまったのでしょう。

夫から電話がかかってきて怯えるミチオは、一体何に怯えているのか。それはケイコが夫の元に帰ってしまうことなんじゃないかと思います。ミチオはケイコがサチコや1号機のことを悪く言うと怒ります。サチコがミチオに、自分のことを不幸にするためにケイコはミチオのことを利用していると主張すると、ミチオは怒ります。そして夫からの着信に怯えます。ミチオは1号機、2号機、3号機、おそらく全員のことを自分のものにしておきたい欲求のようなものがあるのではないでしょうか。それはまるで子供がお気に入りのオモチャのことを独占するかのようです。

そして例えマシーン扱いだったとしても、ミチオに大事にされた女たちはミチオに依存してしまうのかもしれません。

③プレハブ

プレハブはミチオが監禁されている場所です。ミチオがプレハブの外に出ることはありません。出ようともしません。しかしその環境は劣悪です。冷房もなく、蓋をしないと臭いトイレがあり、様々なものが散乱しています。ケイコに言わせると「柔道部の熱気」というレベルで熱と湿気と汗臭さのようなものがこもっているのでしょう。ミチオが普通に飲んでいるコーラも、ケイコが思わず「甘いはぬるいはで大騒ぎだね」と思わず池に捨ててしまうほどのものです。

しかしミチオは、そんな熱のこもったプレハブの窓を開けようともしません。窓の外を眺めたのも、ケイコが月を眺めていた時に隣に並んだ1回だけです。ミチオはプレハブの外の家庭の事情を盗聴していますが、それ以外にプレハブの外に興味を示しているような描写は見られないのです。

初対面では怯えていたはずのケイコがプレハブの中に入り込むと、急に強気に暴力を振るおうとします。たとえ新しい人間が相手でも、自分の安心できるテリトリーの中であれば、ある程度強気に振る舞えるのでしょう。つまりミチオにとってプレハブは、安心できる場所なのです。

サチコは何度もミチオをプレハブから出そうと試みますが、当のミチオは全く協力する気配がありません。唯一出ようとしたのはアキトシがプレハブに火をつけそうになった場面です。しかしその後ひと段落すると、足を切られてプレハブから出られるようになったミチオの様子は、どこか不安そうで悲壮感すらあります。

④他人への関心

ミチオは一般的にいうセックス依存症なのではないかなと思っています。ケイコが上着を脱いだことに焦る場面や、サチコの下着が見えた瞬間に襲い掛かる場面は、ミチオの性欲が本人の意思でコントロールすることが難しいものなのかもしれないと感じさせます。

同時に盗聴依存症とでも言えばいいのか、盗聴が絡んだ時のミチオの様子もかなりおかしくなります。幼稚さと暴力性と狂気を感じさせる表情や言動は、イっちゃってるとしか言いようがありません。なんとなく、ミチオは他人に対して興味を持ちすぎているのかなと感じました。対照的にケイコは、ミチオが嬉々として話すゴシップに全く興味を持つ様子がありません。そして自分とサチコの関係に興味を持たないケイコに腹を立てたようにミチオは乗りかかります。

自分が他人に病的なほどの関心を持っていることは、誰かに関心を持たれ続けたいという裏返しにもなっているのではないでしょうか。そう考えると、アキトシが自分に嫉妬し、コンプレックスと愛情を抱き、自分を監禁している状況というのは、ミチオにとってベストでなくとも悪いものではないのかなと思います。

そして他人に対してアンテナを張りすぎる部分は、新しい環境に慣れることへのハードルをより一層高くしているのではないでしょうか。ミチオは初めてプレハブの外に誘い出されてケイコと会った時、異常に怯えて焦る様子を見せます。ミチオはその前の場面で「今日新しいパートのおばさん来るんだろ?」と言っているので、工場に新しい人間が入ってきていることはわかっていたはずです。

ではミチオの異常な他人への関心を作り上げた原因は何かというと、父親およびアキトシなのではないかと感じます。父親がアキトシのような存在だったのではないかというのは完全なる私の仮説ではありますが、もしそうだとしたら、ミチオは子供の頃から父親や兄の機嫌を察知して生きてこなければいけなかったはずです。自分の身を守るためにはそれしかありません。

暴力から逃れるために他人の機微に関心を持って、持ちすぎた結果、セックスに依存し、他人のゴシップに興奮するという部分に繋がっているのではないかなぁと想像しています。

⑤ミチオの暴力性

ミチオはケイコに自分を殴れと言われて「そんな恐ろしいことできるわけないだろ」と拒否しますが、じゃあミチオが誰かに暴力を振るうことを常に怖がっているのかというと、全くそういう印象はありません。最初にアキトシがいない状況で、サチコとケイコがプレハブに来た時は、ミチオは2人ともに暴力を自然に振るいます。その姿はまるでリトル・アキトシといった感じです。突然モノマネと屁理屈でわけのわからないことを言い始め、サチコとケイコにビンタをする姿は、アキトシと重なる部分がかなりあります。

もしアキトシがいなくなって3人だけで工場で過ごす未来が彼らに存在したとしたら、次に支配者の座につくのはミチオなのではないでしょうか。

ツジヨシ家に生まれたアキトシ、ミチオはあまりにも暴力による支配が当たり前の習慣になりすぎて、そこから抜け出すことはできないんじゃないかなと感じます。

⑥自我

ミチオの自我、自分がこうしたいという欲求は、基本的にとても薄いように見えます。

まずミチオの食事ですが、基本的にはコーンフレークとコーラですし、朝ごはんも白飯に味噌汁と漬物をごちゃ混ぜにしてかき込んでいました。恐らく食事を楽しむという行為に興味がなく、むしろめんどくさいとすら思っているのではないでしょうか。だから手っ取り早くエネルギーを取れる調理のいらないものを好む。

ミチオは食事以外もなんでも受け入れます。本人がそう言います。鎖も受け入れるし、イくときに泡を吹く小太りのオバサンも受け入れますし、ケイコに男性器があると知ってからも、何も変わることなく普通に抱きます。

また、盗聴器の受信機をとんでもないパワーに改造できるようなスキルを持ったミチオです。第二作業所には大量の工具があります。そんな状況で全く逃げ出すことなく足枷だけで監禁されているというのは、そもそも逃げ出す気が全くないと考える方が自然でしょう。何より面白かったのは、プレハブに火をつけられそうになるシーンです。火をつけられれば確実に死にます。

あの時のミチオは確かに切羽詰まって必死でしたが、それでも自分の鎖を自分で切ろうとはしなかったし、巨大な斧でアキトシに襲い掛かることもしませんでした。白い煙の中で「サチコ、早く切れ!3号機、兄貴を止めろ!」を叫んでいるシーンは、非常にミチオらしいと感じました。鎖の長さもそれなりにあるにも関わらず、自分で切る気も止める気もない。それどころか、むしろそういう考えを思いついてすらいないのかもしれません。

また、最後の場面でも、まるでケイコが勝手に町に火をつけにいったかのような口ぶりですが、乗せられたとは言え「3号機、出動―!」と叫んだのは、ミチオ自身です。恐らくミチオがそれを命令することを拒めば、3号機が町に火を付けることはなかったと思います。

さっきも言ったとおり、恐らくミチオはほぼ生まれてからずっと暴力的な支配者の機嫌をとって生きてきたんだと思います。だから自分で状況をどうにかするという発想がないし、どうこうしたいとも思わないし、暴力を振るうのも振るわれるのも違和感はない。自分でどうにか状況を改善しようという意思がない。

 

4)その他考察

・盗聴器の秘密

ミチオが修理した機械に盗聴器を仕込んで夜な夜な聞いていることが途中、ケイコに対して明らかにされますが、ケイコ以外には誰が知っていたのでしょうか。

私は恐らく、サチコが知っていて、アキトシが知らなかったのではないかと考えています。

まず、はじめに盗聴器が登場するのは、ケイコとサチコがプレハブにやって来る前ですが、ミチオはサチコに盗聴器を見られたこと自体を焦ってはいないように見えました。どちらかというと、他人のセックスを盗聴して気持ちよくなっている最中を見られたことに対する恥ずかしさと怒りの方が近い気がしました。

また、ミチオは昼休みからその日の夜ケイコがやってくるまで、盗聴器を部屋に出しっぱなしにしています。逆にケイコの日記が始まると、ミチオは盗聴器を床下の隠し扉に仕舞いました。つまり、ミチオは朝の間にやって来る人物に盗聴器を隠したくて床に隠し扉をつけたんだと思います。

しかしミチオは、手書きの地図をサチコに見られた時に焦ります。「見られた!」というセリフは、サチコに言っていなかった秘密を見られてしまったとも取れますが、地図自体はただこの町に住んでいる人間の名前と赤い丸が描いているだけです。もしサチコが全く地図の存在を知らなかったとしたら、地図の一部分を見ただけで事情を察知して怒り出すのは難しいと思います。ということは、サチコは地図の意味を知っていて、ケイコに地図を見せたことを怒り始めたのではないでしょうか。サチコは「ミチオが先生に相談しようというので私は結構ショックだった」と言っているとおり、ミチオと自分だけの秘密というものに優越感を感じている部分があるのだと思います。そしてミチオも、コーラを飲む姿を見せる時にケイコに「サチコには内緒だからな」と言っているとおり、サチコと自分の秘密をケイコに漏らすことに罪悪感があるのではないでしょうか。

では、サチコはミチオが自分とアキトシの会話を盗聴していると知っていたのでしょうか。私の想像では、むしろミチオが盗聴を始めたのはサチコとアキトシの会話を聞くためというのが最初だったんじゃないかなと思います。また、プレハブの中にいくらものが散乱していて、ミチオが腕の良い電気修理工だとはいえ、そんなに何個も盗聴器の発信機自体を用意するのは難しそうです。そこにサチコが一枚噛んで、発信機の材料などを用意していたんじゃないかなと思っています。

 

・五体満足

ミチオは鎖の理由を聞いてきたケイコに「五体満足な成人男性が鎖で繋がれてるのってすげえ話だろ?」と言います。しかしこの物語には、過不足なく人体のパーツが揃っている人間が2人しかいません。アキトシは生まれつき6本指であり、ケイコは女性でありながら未発達の男性器を持っています。また、アキトシはワニの虫太郎に片方のキンタマを食いちぎられてしまい、最後には玉無しになってしまいました。自分で「五体満足」と発言したミチオも、最終的にはサチコに誤って膝から下を切り落とされてしまいます。唯一最後まで普通の身体だったサチコは死んでしまいました。

身体的に足りすぎている、もしくは足りない3人は、普通の社会に馴染めない部分を象徴しているかのようです。

 

・「マシーン」は誰か

タイトルにもある「マシーン」は、単純に考えれば、ケイコがミチオのマシーンになるという意味だと考えられます。また、脚本の松尾スズキさんによると、元々は『マシーン日記』ではなく、『セックスマシーン』というタイトルにする予定だったそうです。セックスマシーンというワードも、ミチオがケイコに対していう言葉です。

しかし、むしろ様々な人間とひたすら本能的に、自動的にセックスしているのは、ミチオの方です。

また、最初の方で夜の工場に忍び込んで、動く機械を見ながらケイコは、工場にある機械が数値を入力して操作するタイプの機械であること、その機械の指令で働ける喜びを語ります。

この説明が比喩だとすれば、ケイコがミチオに数値を打ち込み、ミチオの指令で動くということなのではないでしょうか。つまり、マシーンはやはりミチオということになります。

 

5)まとめ

書きながら思い出していましたが、やっぱり楽しかったです。

私が現場に飢えていたというのも大きいと思いますが、それを差し引いても満足感のある、なおかつ何度も見たくなる舞台でした。

もう少しまとまった考察をしたかったのですが、これが限界です。

多分読み返しながらちょこちょこ加筆していくと思います。

私が一般チケットで何度もマシーン日記を観に行けたのは、多分コロナで舞台を観に行ける人が少なくなっていたからだと思います。もし夏にドーム公演があることが決まっていたら、それに向けてお金と体力を温存するために1回しか観に行かなかったかもしれません。自担に夢中で、そもそもチケットを取ろうとしなかったかもしれません。

普通にコンサートに行けていたら、横山さんのダンスやカーテンコールを見て感動することもなかったのかもしれませんね。

そう考えると、ある意味マシーン日記にここまでハマれたのは、コロナが会ったからと言うことになると思います。どんな物事でも、全てがマイナスということはないですからね。そう改めて実感しました。

でも、やっぱり早く生で関ジャニ∞に会いたいですね。どうにかこの状況が終息してくれることを願っています。

 

マシーン日記 あらすじ覚え書き

マシーン日記、ハマりにハマって結局6回も行ってしまいました。

京都って微妙に遠いので、1日2公演観た日も2回ありました。

後悔は全くしていません。むしろもっと観に行ってもよかったとすら思っています。

感想や考察を書きたかったんですけど、その前にあらすじを書いておこうと思ったら3万字越えしてしまったので、こちらに別で投稿しておきます。

私はメモをしないタイプで、戯曲本も買っていないのでかなりあやふやな部分もあるかと思います。ご了承ください。

(というのを書きながら、2021の戯曲本が普通に売っているのを知ってポチりました)

 

舞台はセンターステージ形式。

ここはツジヨシ兄弟電機の工場内である。

中央の円形のステージはミチオがサチコを強姦した現場であり、兄に監禁されることになるツジヨシ兄弟電機のプレハブ小屋、第二作業所だ。様々な物が収納されることなく床の隅に置かれっぱなしになっていて、囲いのないトイレが1つある。

その周囲と上手・下手に伸びる通路は第一作業所になっていて、機械のスイッチのようなものが四隅にある。第二作業所のすぐ隣の一角には石垣の池のようなものがある。客席の壁にはプロジェクターで歯車が映されている。

 

開演

 

雨が降っている。

プロジェクターで投影される文字とミチオのナレーションで日記のように、1年前の夏、離れのプレハブ小屋でミチオが哀れな女工(=サチコ)を強姦したことが説明される。

 

薄暗いプレハブ小屋の中に下着姿のミチオとサチコがいる。

サチコは表情もなく床に仰向けに寝そべっていて、ミチオは椅子に座ってサチコを見ながら塩むすびを食べる。

サチコの方にミチオが塩むすびを転がすと、動かないサチコの元に転がっていった。

サチコはゆっくりと起き上がり、しゃがみこんでおにぎり食べ始める。

会話はない。

ミチオはふと体をかがめてサチコの顔を覗き込み、ふざけるように舌を出す。それを見てサチコは笑う。

 

下手からレインコートを着た兄・アキトシが懐中電灯を持って、第二作業所にやってくる。

アキトシの懐中電灯にミチオの顔が照らされる。

逃げるミチオをアキトシは追いかけ、殴る蹴るを繰り返す。

激しい雨と雷の音が鳴っている。

なんとか逃げ回って第二作業所のドアを閉めたミチオは息が上がっている。サチコはその様子を心配そうに見ているように見える。

そこに逆側のドアからアキトシがやってきて、「ミチオー!」と叫びながら、油断しているミチオを羽交い締めにする。ミチオの絶叫。暗転。

 

ミチオの日記の形で、兄はミチオが強姦した責任をとって女工と結婚したこと、ミチオが現在監禁されていることが説明される。

 

場面2

 

セミの鳴く真夏の朝。

ミチオは窓とカーテンを閉め切って薄暗い第二作業所で、作業用の保護ゴーグルをかけたまま眠っている。

アキトシが下手側から何かを入れたビニール袋を提げてガリガリ君のようなアイスを齧りながらやってくる。

途中で第二作業所横の池のようなスペースをアキトシが覗き込むと、ドボンと何かが跳ねるような音がして、アキトシはソイツに対して唾を吐く。

 

第二作業所に入ってきたアキトシは、カーテンを開けてミチオを起こそうとするが、なかなか起きない。アキトシは眠っているミチオを何度も自然なことのように蹴るが、動じないミチオは眠ったままアキトシの開けたカーテンを閉める。

アキトシは普通に「おい起きろ」とは起こしたくないらしく、色々と起こし方を工夫する。

その中でアキトシはカーテンを開けて、ミチオに対して「ジャングル風呂だー!」と叫んで起こそうとする。どうやら昔ツジヨシ家はみんなでジャングル風呂に行ったらしく、ライオンの口からお湯が出ているのを見てミチオが泣いていたらしい。アキトシによれば「あれは家族だったなぁ、ライオンの口からお湯が出てるぅちゅうて弟が泣くのは家族だった」らしい。しかしミチオは、アキトシいわく「ハードコアパンクのボーカル」のように呻きながら、再びカーテンを閉める。

「雄叫ぶな、人間らしい返事をしろ」と言うアキトシに、まるで返事をするかのように屁をこく。ミチオの屁は止まらない。アキトシはミチオの屁を「抽象画のような世界観のある臭さだ。一日中プレハブの中にいるのにどうしてそんな岡本太郎みたいな屁がこけるんだ」と表現する。

ミチオは寝たままアキトシの開けたカーテンを閉める。アキトシは「暗い!臭い!暗い&臭い」と言いながら、再びカーテンを開ける。ミチオに向かってアキトシは「暗闇が臭いのって経験なくて兄さん不自然に胸がときめきそうになった」と語りながら、突然ミチオの胸ぐらを掴む。「俺初恋とかしたことないけど、これがそれならすっごい損した気分だぜ!」と怒鳴るが、ミチオは起きない。むにゃむにゃ言いながら床に寝そべるミチオに、アキトシは「かわいいねぇ、むにゃむにゃ言って、かわいくねぇ!日本語喋れ!」と言いながら顔を蹴る。

アキトシがミチオにすがりつき、「兄として最低限のお願いだ、日本語を喋ってくれ」と懇願するが、ミチオは寝ぼけたまま動き始める。

ミチオが伸ばした手を下ろすとラジカセの再生ボタンが押され、アフリカあたりの民族が打楽器で演奏していそうな音楽が流れ始める。アキトシが「ボックス踏んじゃお」と言いながら踊っていると、ミチオは寝たままコーンフレークを頭から被るように食べ始める。

アキトシが「お前は信じがたい行動をとるな!朝一番に乾き物に手を伸ばす人間を兄さん初めて見た。このクソ暑い真夏の朝に、普通喉が渇いてるもんじゃないのか」と驚くが、さらにミチオは大量のコーンフレークを顔面にぶちまける。「喉に詰まらせて死ぬぞ!兄さんそんな凄惨な事故現場見たくない!」とアキトシが言っている中、空になった箱を捨てたミチオがまるで音楽に合わせるように缶コーラを全力で振り始める。「おいおい嘘だろ!30何年間生きてきてコーラの飲み方も知らねえのか」とアキトシが困惑する中で、ミチオはコーラを顔面にぶちまけて飲む。まだ起きていない。

 

アキトシが思わず「どこの部族の儀式だー!」と叫びながら、ミチオをビンタして「おい起きろ」と言うと、ミチオはようやくゴーグルを外す。さっきまでの寝起きの悪さが嘘のように「おはよー!」と陽気に告げる。

結局アキトシはミチオに対して「おい起きろ」という普通の起こし方をしてしまったのだ。どうやらそれがいつものことらしい。アキトシは「かつて大田区のシドビシャスと呼ばれたこの俺が」普通のことをしてしまったことに落ち込む。

ちなみに、部族の儀式のような野蛮なコーラの飲み方をするミチオをアキトシは「東京モード学園」に例える。「あんなエヴァンゲリオンに出てきそうなビルの中で正気保ててる奴の気が知れねえ」そうだ。

 

朝ごはんは第二作業所でいつも3人揃って食べているらしい。

ミチオが「サチコ来るんだろ?」とアキトシに聞くと、アキトシはミチオをビンタする。

アキトシはミチオに対して兄の妻を呼び捨てにするなと何度も言っているが、ミチオはずっとサチコと呼び続けているらしい。

「サチコ姉さん来るんだろ?」とミチオがわざとらしく言い直すと、アキトシは「来たらなんだ、また犯すんか」とミチオに問い詰める。

サチコが和食の朝ごはんの乗ったお盆を持って第二作業所の近くまで来ている。ミチオとアキトシが揉めているのを聞きながら、アジの味醂干しを作業所横の池に入れようとしている。

痛いところを突かれたミチオは、黙り込んでアキトシに向かって屁をする。

「臭い!さっきより心なしか水っぽくて怖い!」と言いながら屁の匂いを消すために窓を開けたアキトシは、サチコを見つける。

アキトシがサチコに対して高圧的に「何やってんだ」と聞くと、サチコは「虫太郎に餌をやろうと思って」とビクビクしながら答える。

アキトシが「人間の餌が先だ」と言うと、サチコは「また長くなると思ったから」と小さな声で返す。

朝ごはんをミチオが「さっさと片しちまおうぜ」と言うと、アキトシは再びミチオを殴る。

「片すとか言うな、団欒を噛み締めろ」とアキトシは怒っているが、ミチオも負けじと「今日新しいパートのおばさん来るんだろ?のんびりしてて良いわけ?」と反論する。

再び揉めそうになったところから逃げるように、ミチオはこれ見よがしにラジカセのスイッチを入れる。

「フクシマハルオ」と名乗る人物の朝のラジオ番組のような音声が流れ始める。それを聞いたアキトシは、まるでラジオに対して敬意を示すかのように背筋を伸ばし、サチコもそれに倣う。

ラジオ体操のように「宇宙体操」という名の爽やかな音楽が流れ始め、アキトシは体操に真剣に取り組む。サチコもアキトシの様子を恐る恐る見ながら宇宙体操を行う。

ようやく平穏になったところでミチオはきゅうりの漬け物と味噌汁を全てご飯にかけてかき込んでいく。

 

宇宙体操がひと段落して、アキトシはサチコに対して今日の朝ごはんはなんだと聞く。

「おみおつけとおしんこと白ごはんとアジのみりん干し」だそうだ。

サチコはアキトシに対して「いつも芸がなくてすいません」と謝るが、アキトシは「187センチ72キロの人間にぴったりの食事だ」とサチコの頭を撫でくりまわしながら庇う。サチコは怯えているように見える。

「等身大の食事をせえ」というのは、フクシマ先生の教えだという。アキトシはミチオにフクシマ先生の教えを吹き込んだテープのようなものを渡しているらしい。ミチオはテープを「ぼちぼち」聞いているという。

アキトシはサチコを撫で回しながら「お前も早く集会に来れるといいねぇ、早く仮釈放をあげたいねぇ」と言っている。

 

ひたすら食べ続けるミチオに対して、何か気づいたようにアキトシは「いただきますは?」と催促するが、ミチオは無視して食べ続ける。

「おいおいミッチーミッチー、いただきます、は?」と再び促すと、ようやくミチオは不機嫌そうに「いただきます!」と大声で言う。アキトシはおもむろに立ち上がって、アキトシはプレハブ内のトイレの蓋を開けて、大便をしようとする。

食事している横で大便をされては堪らないとミチオがなんとかアキトシをプレハブから追い出した。

 

ミチオとサチコが2人きりになる。

ミチオはアキトシが持ってきたビニール袋を示して、サチコに「それ、今日の分か?」と尋ねる。ビニール袋にはミキサーが入っている。サチコはミチオにミキサーを修理して欲しいということを伝える。

ミチオはサチコに「兄貴ここんとこまたこれだな」と手を斜め上に挙げるジェスチャーでなにかを示す。サチコには伝わっていて、サチコは「これ」になってしまっているあの人が怖いとミチオに訴えるが、ミチオがそれに対して何かを言うことはない。

しばらく2人は食事をする。

いきなり「おい!」とサチコを大声で呼んだミチオは、再びサチコの顔を覗き込んであの夜のように舌を突き出す。

ミチオとサチコは2人でゲラゲラ笑い始め、センターステージが音楽と共に回り始めて、朝の場面は終わる。

サチコは朝食を下げる。上手から派手な格好に身を包み、左腕に刺青を入れ、ツーブロックヘアの女・ケイコがウーバーイーツのリュックサックを背負って第一作業所を歩き回り、下手にはけていく。

場面の中心はセンターの第二作業所ではなく、その周囲にある第一作業所に移る。

ミチオはミキサーを修理している。

アキトシが工場のスイッチを入れ始める。少し遅れてやってきたサチコに、「エッジの効いたパートさん」がやってくると伝える。

とはいえアキトシは高卒の自分が大卒の人間を雇うことに優越感を感じていると言う。

アキトシはサチコに「お前もエッジを効かせてみろ」と無茶振りをして、必死にエッジを効かせようとするサチコをしばらく見てから「もういいよぉー、可哀想だよぉ」と言いながらサチコを後ろから抱き上げて一周する。サチコは悲鳴を上げ、そのままバランスを崩して床に倒れてしまう。アキトシがサチコのことを心配する様子はない。

アキトシは「大卒のカゲヤマさーん、着替え終わったら第一作業所の方まで来てくださーい」と呼びかける。アキトシはサチコに対して、今は敬語だが徐々に取り込んでいくつもりだという計画を話す。サチコはそれに対して「アイアイサー」と返事をする。アキトシは何度も聞き返してサチコに同じことをやらせるが、最後に何やってんだとサチコを殴る。

アキトシはサチコに新しいパートさんの指導を任せる。ちなみにサチコが「大卒に舐められないように」アキトシは工場内に「有線を引いといたっす」と言う。

アキトシが有線のスイッチをつけると、マイケルジャクソンのsmooth criminalが流れ始める。「お前に学歴はあげられないけど、音量は上げられるからよ」と言って爆音で音楽を流し、踊りながらアキトシは去っていく。

サチコは「怖い」と言いながら、有線の音量を下げる。

 

そこに紫の作業着を着たカゲヤマケイコが「何が怖いの!」と言いながらやってくる。ケイコはサチコに「お久しぶりね、3年2組サメジマサチコさん」と声をかける。

サチコはその姿を見て「カゲヤマ先生!」と呼ぶ。

ケイコはサチコの中学時代の担任で体育の教師であり、恩師であるらしい。

そんなケイコに再会したサチコは少しテンションが上がっていて、「先生のこと一度も忘れたことはありません」と話すが、ケイコは今まで誰かに忘れられたことがないので驚かないと返す。それに対してサチコは「真逆ですね」と言う。

ケイコが「真逆?」と聞き返すと、サチコは「別に、180度違うっていうアレです」とボソボソと説明する。

ケイコによると、ケイコがサチコの働くこの工場にやってきたのは偶然だそうだ。

 

作業を始めるためにサチコが機械のスイッチを入れると、ケイコのテンションは異様に上がる。機械が好きらしい。ベルトコンベアも初めて見たそうだ。しかしサチコが指導するまでもなくケイコはベルトコンベアに流れてくる部品を手際よく組み上げ、サチコが完成するまでに1ヶ月かかったと言う代物をわずか1分ほどで完成させる。

「やっぱりすごいです!」とテンションの上がったサチコは、「さぁ、始めるわよ」とケイコのモノマネをして懐かしがる。

サチコは中学時代ケイコに放課後4時間吐くほど走らされていたらしいが、なぜか楽しそうにそれを語る。サチコは「今私がのうのうと生きていられるのは先生のおかげです」と話す。その中で、サチコは一緒に放課後走らされていたマツザワくんのことを思い出す。サチコとマツザワは文通をしていたが、突然連絡が取れなくなったらしい。ケイコはマツザワがどうしているかは知らないと言う。

 

ケイコはサチコの話を適当に聞きながら、「第二作業所は何をする場所なの」と聞く。

サチコは主人の弟が1人で電気修理をやっていること、その弟がろくでもない人間であることを話す。

ケイコは「ろくでもない」と言う言葉に反応するように、ミチオに突然興味を持ち始め、どういう部分が「ろくでもない」のかを問い詰め始める。

サチコは屁をブーブーこきまくる、コーラを飲んでお尻がバカになっている、プレハブに住んでいる、月収3万円である、外来種の大型ネズミであるヌートリアのような緩慢な動きをする、コーラを飲むときに左手が必ずパーになる部分がダメだとケイコに語る。

それを聞いたケイコは「ちょっと待って、想像してみる」と言って、左手をパーにしてコーラを飲む動作をする。連動するようにプレハブ内でもミチオが左手をパーにせずにコーラを飲もうとするが、床に倒れてしまう。ミチオは悔しそうに「クソォー!」と叫ぶ。ケイコはどこか嬉しそうに高笑いしながら「それはダメね」と蔑む。

サチコは「行ってみますか?」とケイコに提案し、2人は昼休みに第二作業所に向かう。

ツジヨシ兄弟電機の昼休みは20分間で、遅れると時給に響くそうだ。

ミキサーの修理を終えたミチオは、床の隠し扉から謎のボックスのような機械を出し、蓋を開けてアンテナを立ててヘッドホンをつけて操作をする。何かの音が流れ始めるとミチオは股間に手を置きながら身体をくねらせ声を漏らす。

サチコとケイコがプレハブのドアを開ける。2人が部屋に入ってきたことに、ミチオは気が付かない。ケイコによるとプレハブの中は「柔道部の熱気」だそうだ。サチコが音声に夢中になるミチオに「ミチオさーん」と声をかけると、ミチオは焦ったように機械の蓋を閉め、「勝手に入ってくんな!」と怒鳴る。

サチコが「開けたのよ〜」と言うと、ミチオは「開けたのよ〜!ってどういうことだ、このバカ女、殺すぞ!」とサチコに向かっていく。

サチコはどこか強気でミチオに対して「怖くないよ〜」とバカにすると、ミチオは「殺すつってんだろ」と殴りかかるが、サチコがプレハブの外に出ると鎖が伸びきってミチオは倒れてしまう。

殴れずに悔しがるミチオをサチコが笑い物にしていると、ケイコはミチオの髪を掴んで顔を上げさせる。

ケイコの存在に気づいたミチオは、パニックになったように急いで起き上がって、「誰⁉︎誰なの⁉︎知ってる人⁉︎知らない人⁉︎誰なわけ!」とプレハブに逃げ込む。

しかしケイコがプレハブの中に入ってくると、ミチオは怯えるのをやめて勝手に入ってきたことに怒って殴りかかる。だが、ケイコに触れることもできずにあっという間にいなされてしまう。

サチコは「先生はあんたなんか一飲みなんだからね!」と言うが、ケイコは「飲みゃしないわよ」と冷静にツッコむ。

調子に乗るサチコにミチオが「調子に乗るな!このアマ!」と蹴りを入れると、今度はケイコがミチオの首を掴んで締める。

サチコは「あと5秒であんたの首を折るわよ」と言って格闘技の審判員のように床を叩きながら5カウントを始めるが、ケイコは「折らないわよ」とツッコむ。サチコはそれを無視して再びカウントを始めるが、ケイコは「だから折らないつってんでしょ」と言ってミチオから手を離す。

ケイコはサチコに「あたしのことなんだと思ってんのよ」と聞くが、サチコは「えへへぇー」と笑って誤魔化す。ケイコはミチオと「新しい職場で友達になりたいだけ」らしい。それを聞いたミチオは目を丸くし、サチコは新喜劇のように1人でずっこける。

 

ケイコがプレハブ内のあまりの暑さに上着を脱ぐと、ミチオは「おい着ろよオバハン」と怒るが、ケイコは気にしない。ケイコは置いてあるコーラを飲むが、ぬるさに驚いて飲むのをやめ、窓の外の池に投げ捨てる。

ケイコは「基本的なこと聞くけど、どうして鎖で繋がれてるわけ?」とミチオに聞く。なかなか答えようとしないミチオに、ケイコは上着を回し始める。ミチオが「回すなよ!話していいのか⁉︎おい女!」とサチコに呼びかけるが、サチコもそれに乗っかってタオルを回し始める。ミチオは三半規管が弱く、回されるのが苦手らしい。

2人に上着とタオルでバシバシ叩かれながら追い詰められて「話すよ!」と言ったミチオだったが、「今から話すのはすげえ話だ、五体満足な成人男性が鎖で繋がれているなんてすげえ話だろ?」と言って、ミチオはサチコとケイコの聞く態度を見て覚悟がなっていないとビンタする。どうにも屁理屈ばかりで話が進まない。ミチオの話は続き、「俺を軸にして考えてみよう、俺がいるな、足が生えているな、そこから鎖が伸びているな、俺はほんっとに繋がれてるのかね!もしかしたら俺がプレハブを繋いでいるのかもしれないよ?だとしたら君らがプレハブプレハブ言ってること自体怪しくなってこない?これは本当にプレハブなのかね、試しにちょっとここを吹いてみよう」とプレハブの床から伸びる配管に口を当てると、ハーモニカの音が鳴る。ミチオは田村正和のモノマネで、「プレハブからぁ、ハーモニカのような音がなりましたねぇ、てことはこれはぁ、ハーモニカなんでしょうかぁ?」と言って、「ハーモニカを繋いでる男、てことは俺長渕剛じゃね!」とをギターに見立てて長渕剛のモノマネをしながら歌い始める。

 

だから私の恋はいつも

巡り巡って ふりだしよ

いつまでたっても恋の矢は

あなたの胸にはささらない

 

結局理由には全く触れないまま話が終わり、ケイコはわざとらしく大きく拍手をする。サチコも拍手を始め、困惑しながら照れるミチオに、ケイコは「それで、結局どうして繋がれてるの?」と尋ねる。「聞いてなかったんかい!」と言うミチオに、ケイコは「みんなそうだと思うけど、聞いてる途中で迷子になったわ、恐ろしくクオリティの低い田村正和のあたりからもう一度説明してくれるかしら」と冷静に言う。「勘弁してくれ、あれは見切り発車だったんだ」と嘆くミチオに、ケイコは「長渕もひどかったわよ」と言う。そんな中、工場のサイレンのような音が鳴り始めると、サチコが焦り始める。「昼休みが終わります!戻りましょう!」と言っているサチコを、ミチオは聞いておらず、「えぇ⁉︎むしろ長渕の方が自信あるんですけど」とケイコに訴えている。

サチコは「ここに来たことがバレたら殺される」と怖がっているが、ケイコは動じない。

突然ケイコの身体からジージー何かの音楽のようなものが鳴り始める。ミチオは怯えながら、「なんだこのオバハン!なんか音鳴ってんぞ!」と後ずさる。ケイコがポケットから携帯を取り出し、「携帯よ」と言うが、ミチオは「携帯がジージー言うかよ!」と返す。

「出ろよ」とどこか怖がっている様子のミチオに対し、ケイコは「コ・ド・モ」と返す。

「どうして子供よ」とミチオが聞き返すと、ケイコは「ド・コ・モ」と言い、ケイコにバカにされてキレたミチオはケイコに殴りかかる。

相変わらずミチオはケイコに全く歯が立たない。工場から再びサイレンとのような音が鳴り始める。サチコは「時給が減る」と地球儀を見せながら、ケイコに必死に帰るように訴え続ける。

やられながらもミチオはケイコの携帯を取り上げ、ケイコに携帯を見せつけ、「俺が一晩で直しておいてやる」と告げる。

ケイコは「いいのね?私またここに来るのね」と言って、「先生!時給が下がります!」と言い続けるサチコの説得に応じて去っていく。

 

辺りは暗くなり、夜が来た。再び場面の中心はプレハブではなく第一作業所に戻る。

天気が怪しく、雨が降りそうな気配がしている。

ケイコとサチコが懐中電灯を持って第一作業所にやってきている。

第二作業所ではミチオが携帯電話を修理している。

ケイコがサチコに仕事から離れたところで工場を見たいと頼み込んだようだ。

サチコは相変わらずアキトシに見つかることに怯えており、ケイコの言うことを聞きながら恐る恐る機械のスイッチを入れていく。

ケイコは「機械って面白い」と興奮し、機械フェチの一面を見せる。

サチコは再びケイコに中学時代の話をする。中学時代にケイコはサチコをいじめから救ってくれたようだ。サチコがその時の感謝を伝えると、ケイコは「じゃあ恩売るわよ」「恩が恩のまま放っととかれるのって健康に悪いって感じしない?」と言い始める。

サチコは自分に恩を売るために工場に来たのか?と聞くが、ケイコは「じゃああたしあんたに恩売るために学校辞めて工場に働きにきたの?それってすっごいバカバカしい、偶然よ」と主張する。

話はケイコが学校を辞めた理由になる。

ケイコには「給与が曖昧な感じ」が合わなかったそうだ。ケイコはサチコをいじめから救うのも担任の仕事だと思ったからやったそうだが、報酬が出たわけではなかった。サチコは体育教師を「立派な仕事です」と言うが、ケイコは「聖職とか、我が師の恩とか、そういう曖昧なもので誤魔化されてる」と続ける。またケイコは工場で働く前はウーバーイーツでも働いていたそうだが、それもチップがあるとかないとか「曖昧だった」そうだ。工場で働くことは「その点時給制、最高!」らしい。

なぜ曖昧な給与が嫌いかと言うと、「根っからの理数系」だかららしい。

サチコが全てのスイッチを入れると、ケイコは興奮したように機械に数値を入力することで機械の指令で働けることの喜びを1人で喋り続け、サチコは去っていく。

 

ケータイの修理を終えたミチオは、意味深にニヤリと笑う。

再び謎の機械の蓋を開け、つなぎの袖を腰で結び、アンテナを立ててヘッドホンをつけ、何かの音声を流し始める。

床に仰向けに寝転んだミチオは股間と口元にそれぞれ手を置きながら、体を震わせる。

雨が降ってきた。雷も鳴っている。ミチオは腰を浮かせる。

 

ケイコがドアを開けると、ミチオはまた勝手に開けられたことにキレる。ケータイを取りに来たと言うケイコに「一晩で直すっつっただろ」と殴りかかろうとすると、ヘッドホンの線が抜けて、ミチオはケイコに突き飛ばされる。

ヘッドホンが抜けた機械からは女性の喘ぎ声のようなものが流れ始める。ミチオは焦って機械を閉じ、なぜか一回り大きくなったケータイを渡す。

ケイコが「どうして私なの?どうして私のケータイ直したの?」と聞くと、ミチオは「放っておけなかったから」と返す。「壊れた機械を見ると放っておけない」そうだ。

 

ケイコはミチオにコーラを飲むところを見せて欲しいと頼む。嫌がるミチオにケイコが千円を渡すと約束すると、ミチオは「サチコには内緒だからな」とコーラを飲み始めた。

バランスを崩しながらも最終的に左手をパーにしたミチオを見て興奮したケイコは、さらにもう千円あげるから手をグーにしてくれと頼む。

「クソォ、千円め〜」と言いつつも手をグーにすると、ミチオはバランスを崩して仰向けに倒れた。

 

ケイコは上着を脱いでミチオに跨り、騎乗位でセックスを始める。途中でミチオはタンクトップを脱ぎ捨て、自らケイコに乗りかかり、正常位、後背位と変わっていく。

外では傘を持ったサチコが工場に戻ってきている。プレハブの中には入らないが、力なく「学校行くのイヤイヤよ、男の人はイヤイヤよ、女の人もイヤイヤよ」と歌いながら歩き回る。途中で池に嘔吐し、去っていく。

 

セックスが終わると、ミチオは満足した様子で二千円を眺める。

ケイコのケータイが鳴り始める。ミチオは修理が上手くいったことに得意げに指を鳴らして、「出なよ」と言うが、ケイコはケータイを床に落として踏み潰す。驚いているミチオにケイコは「あたし、あんたのマシーンになる」と告げる。ミチオは笑うだけで特に返事は返さない。

ケイコが窓を開けて外を見ると、雨が上がっている。

池で何かが跳ねるように驚いてケイコは「何かいるの?」とミチオに聞く「ワニ、兄貴が地下の池でワニ飼ってんだよ」とミチオが半笑いで返す。

ミチオによると、アキトシは周期的にハイになるらしい。ケイコが「双極性障害?」と聞くと、ミチオはそんな感じだと答え、「ワニ買う病気」だと笑いながら説明する。

 

 

再び日記形式でケイコのナレーションが入る。

ケイコはミチオのマシーンになった。放っておくとオバハンと言われるので3号機と呼ばせることにした。ケイコはプレハブに引っ越し、ミチオに扇風機をプレゼントした。ミチオは扇風機の風にしばらく涙した。

 

フクシマハルオの「朝です。日曜日は家族と一緒に過ごしましょう」という言葉とともに始まる。

その言葉通り、アキトシとサチコはビニールプールで遊んでいる。

アキトシはホースでサチコの顔に向かって水をかけていて、サチコは苦しそうにしている。

スクール水着姿のサチコの左目や体には大きな痣ができている。

しかし、サチコが水鉄砲でアキトシやミチオに水鉄砲を撃って、「あなた〜、バーン!」「うわ死んだ!」「ミチオ〜、バーン!」「うわぁ、気持ちいー!」と2人が撃たれたごっこをする光景は、明るい平和な光景に見える。

サチコは中学時代のスクール水着と浮き輪の状態で歩き回り、「ねぇあなた、あたし中学の時プールで溺れて、先生にマウストゥマウスされたのよ〜」とケイコに助けられた思い出を話す。

水鉄砲で撃たれて倒れていたアキトシが「寝てた」と言いながら突然起き上がり、「まさかミチオの元に大卒のお嫁さんが来るとはな」と言い始める。ミチオが「嫁じゃねえ、押しかけてきたんだよ」と言うと、アキトシは「よ、プレイボーイ」とミチオをからかう。しつこくからかわれたミチオがコミック本をアキトシに投げつけると、突然キレたアキトシが「今度は手錠もつけてやろうか!」と言い始めるが、サチコに止められると「冗談だよ〜」といつものおちゃらけた様子に戻る。そのまま「朝からすた丼大盛り食って思いっきり後悔したい気分だぜ」と言い始めたアキトシは、架空の何かと戦いながらすた丼を食べるために去っていく。

ミチオはサチコに対して「ますますハイだな」とぼやく。

話はサチコが溺れた話に戻り、助けられて同級生に囲まれながら、なぜか頭の中でクラスの劇でやったオズの魔法使いのテーマ曲、over the rainbowが流れたという話をする。ケイコに何の役やったんだっけと聞かれると、サチコは「役なんかやりませんよ、だって馬鹿馬鹿しかったですもん」と答える。

さらにサチコはミチオに、ケイコが陸上でオリンピックまで行ったことを話す。結局出場できなかったと話すケイコにミチオが理由を聞くと、セックスチェックで引っかかったと話す。ケイコには4cmの未発達の男性器が付いていると言う。

ケイコがサチコに「目、どうしたの?」と聞くと、サチコは「先生には関係ありません」と言う。ミチオがサチコに「また殴られたんか?」と聞くと、サチコは笑いながら「お茶にあの薬入れてたのがバレちゃって」と話し、ミチオも笑いながら「静まる系のやつ?」と返す。

殴られながらover the rainbowを思い出したと語り、とてつもなく音痴な歌を歌い始めたサチコを、ミチオは思わず「怖えよ」と止める。

実は主役をやりたかったのかもしれないと話すサチコをミチオは「気持ちわりい、気持ちわりいよ、兄貴とSMやってる女が何が『主役やりたかったぁ』だ、虹を超えてどこ行くんだよ、ロウソクでも買いに行くんか」と馬鹿にすると、サチコは本気で「SMなんかやってないよ」と否定する。それでもミチオは「兄貴に殴られてお幸せなこと思い出す女はSMじゃねえのかよ、SMじゃ〜ん」と続け、サチコはケイコに助けを求めるも、ケイコも「SMね」と切り捨てる。

サチコは仕返しと言わんばかりに「なによ、出会ったその日のうちにセックスした2人のくせに、揺れてたわよ〜プレハブ、プレハブ揺らしていやらし〜」とからかう。

馬鹿にされたミチオは「3号機!出動!」と叫び、ケイコはロボットのように歩きながらサチコを追いかけいく。ミチオはアニメのナレーション風に「大田区に越してきたオバハンマシーンはミチオの3番目の女だったから3号機と名付けられた。ミチオの平和を守るために、ゆけ3号機、戦え3号機、燃えろ3号機」とノリノリで1人で喋っていると、アキトシが帰ってくる。

ミチオはアキトシに少し怯えているようだ。

すた丼が「開いてなかった」と話すアキトシに、ミチオは「朝8時からすた丼食いてえやつなんていねえよ」とツッコむ。

アキトシは突然声を落とし、「また疼くんだ」とミチオに話す。ミチオが恐る恐る「兄指がか?」と聞き返すと、アキトシは頷き、ミチオは「兄指、疼くんか…」と肩を落とす。

そこにサチコを捕まえたケイコが戻ってくると、アキトシはケイコに自分が「俺、昔グレてたんだ」と話し始める。暴走族をやっていたというが、よく聞くと仲間とつるんで鳥人間コンテストに出ていたという話らしい。

出場した時のグループ名をケイコに聞かれる。「小麦色の、小人」「小麦色の小人?」「本当は喝采を浴びる小麦色の小人にしたかったんだけど、長かったから喝采」「小麦色の小人は?」「そんなものはない、小人って言うほど小麦色か?」とわけのわからない返答を続けるアキトシに、ミチオは「頭だけよ暴走してたのは」と呆れる。

そしてミチオは「だいたい暴走族やってたやつがTik Tokなんてやるわけねえだろ」と、アキトシが夜中に中年男がお母さんへの感謝を言い続けるだけのTik Tokをやっていることをケイコにバラし、「それだけは言って欲しくなかった」とアキトシに首をホールドされる。

首を絞められるミチオを助けるために「やめなさい」とケイコがアキトシの耳を掴んで投げ飛ばす。ミチオに「あんたもどうして抵抗しないのよ」と言うケイコに、アキトシは「このアマー!」と言いながら襲い掛かる。しかしアキトシはケイコにあっさりと手も触れずに止められてしまう。サチコは「やめてあなた!先生手からなんか出るの!」と止める。アキトシはサチコにケイコを倒すように命令するが、サチコは渋る。アキトシに「亭主の言うこと聞けねえのか!」と言われて立ち向かおうとしたサチコも、あっさりと鼻くそで倒されて、ケイコにまんぐり返されてしまった。アキトシとサチコはプレハブから逃げていく。去り際にアキトシは「今度4人で合コンな」とケイコに言う。

 

ミチオはケイコに再び鳥人間コンテストの話を続ける。アキトシが鳥人間コンテストに出たのは3年前のことだった。ミチオによると、「今考えるとあの時すでに発病していたのかもしれない」らしい。アキトシは工場の余り物で作った飛行機で水面に落下したが、帰ってきた時点では「飛ぼうとしてことに意味がある」と機嫌が良かったそうだ。

しかし、放送日になるとアキトシの出番はカットされていた。ミチオは6本指が軍手もなしにカメラに映っていたんだから当たり前だと話す。それからアキトシは東野幸治を刺すためにアイスピックを持って日テレの前で待ち伏せし、不審に思って声をかけてきた警備員を刺したという。

 

そこでケイコの電話に電話がかかってくるが、ミチオは電話を取り上げてコーンフレークの箱の中に突っ込んでしまう。ミチオはどこか電話に怯えて焦ったような様子で話を続ける。アキトシには執行猶予がついたが、その時まだ生きていた親父が怒り狂ってアキトシを1年間プレハブ小屋に閉じ込めていたそうだ。再び電話が鳴り、焦るミチオを無視してケイコは「ちょっと出てくる」と外に出て行ってしまう。

 

ミチオは扇風機に向かって郷ひろみのモノマネをしながら『哀愁のカサブランカ』を歌い始める。

 

抱きしめると いつも君は

洗った髪の香りがした

まるで若すぎた季節にバカが増えると…

 

その様子は滑稽ながら、追い詰められているようにも見える。

歌い終わると、ミチオはプレハブの隅に置かれていた背広を持ち上げて、「就職決まってたのに」と膝からゆっくりと崩れ落ちる。

ミチオは窓を開けてケイコがまだ電話していることを確認し、機械を床下から取り出す。

ミチオがアンテナを立てて機械を操作すると、雑音がクリアになり、ケイコとマツザワくんと呼ばれている男の会話が聞こえ始める。ケイコの電話を盗聴している。

ケイコは夫・マツザワに離婚届を送りつけたらしい。いきなり離婚届が多くられてきて困惑するマツザワにケイコは「いけないのよ」「あなたじゃイけないの」と話す。

会話を盗聴しながら、ミチオは興奮している様子で握った手の指を口に入れたりしている。

途中で「ちょっと待って」と言ったケイコは、電話越しに「ミチオ聞いてるんでしょ」と話しかけ、ミチオは凍りつく。

ケイコはプレハブ小屋に戻ってくる。ミチオはトイレの蓋を開けて中に隠れるが、ケイコは蓋の取っ手を持って「出ろ小僧」とミチオを引きずり出していく。ミチオの上半身がほとんど出たところでケイコが「出てるぞ小僧」と言っていきなり蓋を離すと、ミチオは反動でトイレから飛び出して後ろに倒れてしまった。ケイコはミチオの機械を操作し始め、ミチオが止めようとするが、他の誰かの人間の会話が流れ始める。

ミチオはまた流れてくる音声を聞いて少し興奮した様子になる。

修理したものに盗聴器仕込んで聞いてたんでしょ?と問い詰めるケイコに、ミチオは誤魔化すようにヘラヘラしながら「音楽聞かない?」と言い始める。

ミチオがラジカセをつけると、静かな音楽が流れ始める。ミチオは「フクシマ先生ご推薦、ヒーリング音楽〜」とラジカセを持ち上げ、ケイコに聞かせる。「癒されるでしょ?」とヘラヘラと笑いながらも、思い出したように「笑っちゃいけない」と顔を引き締める。そして「さっさと癒されろよ、順番なんだよ、癒されたい奴があとつっかえってっからよ!」とケイコにキレ始め、盗聴していたことを「悪い?」と開き直る。

布に書いた手書きの地図を取り出したミチオは、近所の家で起こっている不倫や家庭内での問題といったゴシップネタを興奮した様子で「3丁目のエリート一家、木杉さん家では、生まれてきた子供の頭がちょいとコレで?家族会議の結果が全員で宗教に入るとか入らないとか!」と嬉々として解説し始める。

ケイコはゴシップには関心を示さない。「聞いてんだ」と言うと、ミチオは崩れ落ちるように座り、「眠れないから」と悲しげに返す。ケイコは「朝まで聞いてんだ」と言って、ミチオを抱きしめる。

ケイコは嬉しそうに「やっぱ最低だよ、あんた、私が見込んだだけある、男の価値のあり方なんて曖昧だけど、あんたの価値の無さはわかりやすいもの」とミチオに語りかける。ミチオは泣いている。

鎖をミチオの首の後ろに回したケイコが「イかせてよ、あんたが私をイかせてくれる限り、私はあんたの言うことなんでも聞くよ」と言う。ミチオは「俺、あんたをイかせられるのか?」と聞き、ケイコは「あたしの4cmの憎いやつに慣れてくれればね」と返す。

2人が立ち上がると、突然ミチオはのけぞり、口で泡を吹くような音を「パカ、パカパカ…」と出し始める。ケイコが何をやっているのかと聞くと、ミチオはイくときに泡を吹く小太りなおばさんと不倫していて、それが1号機だっただと話す。

ケイコが「はっ、カニじゃん」と馬鹿にすると、ミチオは「人のこと言えんのかよ」とケイコを突き飛ばし、「電話盗聴されたくらいで調子に乗んなよ」と罵倒する。

ケイコはミチオに自分はミチオの言うことをなんでも聞く、気に入らなかったら殴りなよ、機械の調子悪いとき殴るでしょ?と近づいていく。

「そんな恐ろしいことできねえよ」と後ずさるミチオをケイコが殴ると、ミチオは反射的にやり返す。

ケイコが「テレビドラマみたいな安っぽい殴りだね、もっと本気のやつちょうだいよ!見えない観客がいたら引くようなやつ!」と挑発すると、ミチオはケイコにひたすら暴力を振るい始める。

ミチオはコーンフレークをひっくり返し、ゴミ袋を投げつけ、鉄パイプを振り下ろす。

すっかりケイコがぐったりしたところで、「引いたかなぁ、見えない観客」と言いながらミチオも床に座り込む。

ケイコは鼻血を出しながらもふざけたように「マシーン度、5%アップ」と言い、ミチオも「3号機、コーラ持ってこい」とケイコに命令する。

ラジカセから「ヒーリング音楽、いかがでしたか?」とフクシマハルオの声が流れ始めると、ミチオは「バカが喋ってらぁ」と音楽を止める。

ミチオは「もっとリアルなの、聞きたいでしょ?」と子供のようにケイコに言って、再び盗聴している音声を流し始める。

その声は「兄貴と俺の2号機」のものらしく、アキトシとサチコの会話が聞こえる。

サチコがそろそろミチオに仮釈放をあげた方が良いんじゃないかと言うと、アキトシが俺は許しているがサチコが許していないから仮釈放はできないと話す。驚いて「私が、ですか?」と聞くサチコに、アキトシは「許せるわけないもんなぁ、昔だったら舌噛んで死なないといけないところを、1年で許せるわけないだろ?俺そんな女嫌だもん、殺すもん」と言いながらも、「でも許してやってくれよ、これは兄としての頼み」とサチコに迫る。サチコが「許して良いんですか?」と恐る恐る聞くと、アキトシは「ダメに決まってんだろ!殺すぞ!」とサチコに怒鳴り、「これはお前の夫としての意見」と付け加える。「じゃあどうすれば…」と困るサチコに、アキトシはミチオを自由にしてどうしたいんだと聞く。

 

盗聴して興奮するミチオに対して、ケイコは「そういう結論の出ない話興味ないのよ」と寝る準備を進めている。

ミチオはタンクトップを脱いで、ケイコに挿入する。

「俺とサチコの話、気にならないのか?」と聞くが、ケイコは「あの子の話をすると頭が痛くなる」と悪気もなさそうに話す。ケイコはサチコの「あれがこうして」「それがあれで」と言った曖昧な喋り方が気にくわないらしい。「10を3で割れと言われた気分になる」と表現する。ケイコに覆いかぶさったミチオは、「あんた、サチコの恩師だろ?」と言うが、ケイコによると、サチコともう1人の男の子をいじめから助けたのはただの実験だったらしい。ケイコにはサチコがどうしていじめられるのかがわからなかったそうだ。それでいじめられるにもある種のエネルギーが必要なんじゃないかと思って放課後4時間走らせたところ、サチコは放課後にエネルギーを残しておくために、死に物狂いでいじめを回避し始め、いじめられなくなった上に県のマラソン大会で新記録まで取ったという。

ミチオが「もう1人の男はどうなった」と聞くと、ケイコはミチオから離れてごまかしたような答え方をする。

四つん這いで離れていくケイコにミチオは後ろから挿入し、スパンキングしながらミチオはケイコに問い詰める。

ケイコは「ダメだった」と言う。その男子生徒は「根っからのクズだった」そうだ。

「そいつがどうなったんだ」とミチオが聞くと、ケイコは「私と結婚した」と答える。

ミチオはどこか悔しそうに「そいつ俺より…」と言いながら、ケイコを犯す。

 

そこに突然サチコが入ってくる。手にマシュマロを持って「差し入れ」しにきたらしい。

「エッチの最中にごめんなさい」と言いながらもズカズカ入ってくるサチコに、ミチオは慌てて服を直すが、ケイコに動揺する様子はない。

「聞いてたの?さっきの話」とケイコが聞くと、サチコは「聞かれちゃまずいような話してたんですか?」と攻撃的に返す。サチコの頭には血の滲んだ包帯が巻かれている。

「兄貴にやられたのか?」「しゃれになんないだろ」と腹をたてるミチオに対して、サチコは「謝ってくれたからいいの!」と怒る。ケイコが「DVカップルの典型的なパターンだね」と言うと、サチコは「典型的ですいやせんでした」と敵意をむき出しにする。

差し入れを渡したからと帰ろうとするサチコに対して、ミチオは「もっといろよ」と引き止める。

それに対してヘラヘラし始めたサチコは「フクシマ先生の集会にアレしないとだから」と帰ろうとするが、ケイコが「アレって何」とマシュマロを投げながら聞く。

突然犬のように四つん這いで「キャンキャン」鳴き始めたサチコは、床をガサガサして、あるところで止まる。突然怒った犬のように吠え始めたサチコは、そのままプレハブ小屋を去っていく。

ミチオは「なんで犬なんだよ」と言いながらなんとなく手書きの地図を片付けようとして、サチコが怒って唸り始めたのは地図を見つけたからだということに気がつく。

「見られた!」と焦るミチオに対して、「もう遅いわよ」と返したケイコは、地図につけられた赤い丸が何を示しているのかを聞く。

ミチオは「サチコがいじめられてた理由、俺、わかるけどな」と話し始める。「どうしてかは言わない、同類の勘ってやつ」と言うミチオに対して、ケイコは「言ってるじゃない」とツッコむ。

ミチオはいじめられていたわけではないが、浮いていたそうだ。「サチコみたいなのは特殊なパターンで、一度定着したいじめられるキャラクターはなかなか拭えないものなんだよ」と言って、ミチオは裸に背広を着て、ネクタイを締め、メガネをかけ始める。「なに唐突に背広着るかなぁ、君はいじけて」と聞くケイコに、ミチオは「でも俺こう見えても前向きだからよ」と話を続け、いじめから抜け出すには中学、高校、就職と環境が変わるタイミングがチャンスだと語る。「でもこの町狭いから、どこ行っても俺が浮いてたって知っているやつがいるわけ」と言うミチオに、ケイコは「出てきゃ良いじゃん」と言うが、ミチオは鎖のついた足を上げて「これだからなぁ」と言う。

「でもさすがにこの歳になってくると俺を知っている人間も少なくなってくる」と言い始めたところで、ケイコは赤い丸が「ミチオが浮いてたって知ってる人間」を示していると気づく。

「こいつらさえいなくなりゃいいわけね」と納得するケイコに焦ったミチオは「思うだけだって」と付け加えるが、ケイコは「どうして命令しないのよ」と追い詰め、ミチオは「思うだけ思うだけ!」と繰り返す。

ケイコはミチオに「背広、似合うじゃない、ズボンも履きなさいよ」と言うが、ミチオは鎖の繋がった足を持ち上げた。「これだからなぁ」と2人の声が重なる。

 

ケイコの日記が始まる。

正常位、騎乗位、後背位、後屈曲位、伸脚正常位、松葉崩し、帆掛け等、ミチオとケイコがその日の夜に試した体位が淡々と連ねられていて、センターステージで音楽の中、それに合わせて2人の行為がダンスのように行われる。

追伸のような形で、サチコがアキトシに暴力を振るわれてあざを作り、肋骨を骨折し、ボロボロになっていったことも語られる。

最後にケイコが着床した日で1幕が締めくくられる。

 

幕間

 

2幕

 

月明かりが差し込んでいる。ミチオは防護ゴーグルをつけて金属を削る作業に集中している。ケイコはプレハブの外で月を眺めている。

ケイコは「月の美しさがわかる」と語り始める。普段はビジュアリスティックな美はわからない方だが、前に妊娠した時も分かったらしい。そういう水気のある感覚が。

理由は「分からない」「私には分からないことが多すぎる」という。ケイコはプレハブの中に入って、話を続ける。分からないことの1つが算数だったそうだ。1+1=2になるわけがわからなかったと。

ケイコは「暗く狭いところに押し込められて出られない夢」を昔からよく見るそうだ。「今でも見る、だから私、2日に5時間くらいしか寝ない」。

「小学4年生の時、その夢の訳はわかってた」という。ケイコは生まれた時5kgあった。母親を苦しめて苦しめて生まれたそうだ。ケイコはその夢を産道を通る時の記憶だと話す。ケイコが「私、生まれながら母を殺した」というと、ミチオは顔を上げる。その時わかったのだとケイコは言う。「1-1=0」

「それから私、算数の鬼になった。高校出る頃には大学の数学が終わってた。そのあと突然体育にハマったの。体育って自分の実力が記録になるから面白い」とケイコは話す。オリンピックのセックスチェックに引っかかるまでは続けたそうだ。

 

ミチオはゴーグルを外して、妊娠してたらどうするんだとケイコに聞く。

ケイコは「どうしよっか」と笑いながら答える。「前はおろしたけど、今回はそう言うわけにはいかなさそう」だと言う。再び「どうしよっか、それじゃ他人事か」と言いながら、ケイコは窓際に立ち、「今は曖昧が気にならない、月が綺麗」と呟く。

ミチオは隣に並んで月を見上げるが、ケイコは去っていく。

 

ミチオは第2作業所でビデオデッキを修理し始める。

場面の中心は第1作業所で、サチコが掃除をしにやってくる。

恐る恐るサチコが有線をつけると、『若いってすばらしい』が流れ始め、サチコは歌いながら徐々にノリ始めて踊り出す。

 

あなたに笑いかけたら

そよ風が帰ってくる

だから ひとりでもさみしくない

若いってすばらしい

 

あなたに声をかけたら

歌声が聞こえてくる

だから 涙さえすぐにかわく

若いってすばらしい

 

夢は両手にいっぱい

 

そこにアキトシがやってきて、踊るサチコを後ろから蹴り飛ばす。

崩れたサチコを撫でながら、アキトシは「工場で踊ってると危ないよ、引っ掛けて往生するよ?」と優しく言い聞かせる。

逃げるように別の場所に歩いていくサチコに、アキトシは「言わずに置こうと思ってたけどやっぱ言う、なんなら5・7・5で言う」と突然切り出す。

サチコが恐る恐る「なんでしょう」と聞くと、「朝飯の、貧乏くささ」から始めて突然サチコに怒鳴る。

サチコが「普通にお願いします」と頼むと、「今日の朝飯の貧乏くささはなんだ」と問い詰める。

「いつもと同じはずですが」とサチコが小さく反論すると、アキトシは「朝飯は夫の頑張りに対する妻の批評活動なんだよ、いつまで経ってもお前の評価は一向に上がらないな」とサチコを責める。

アキトシは「そんなんじゃツジヨシ家に生まれてくる大卒の子を受け入れられる土俵が作れないだろ」と言って、幸子に向かって相撲のポーズをとり、「かかってこい」とサチコを呼ぶ。

恐る恐る向かっていったサチコを「どすこーい」と言いながら容赦無く投げ飛ばし、アキトシは咳き込むサチコを気にもとめず「歯痒いよ、弟に先越されて」と嘆く。

サチコが「まだ生まれると決まったわけじゃ…」と言いかけると、アキトシは「悔しかったらお前も産んでみろ」とサチコのスカートをめくり始める。

焦ったサチコが「あなた、丸見えです」とスカートを戻すと、アキトシが「どうしてオマーンさせないんだよ」と再びめくる。

サチコが「やめてください、労働者の皆さんが見てます」と言うと、アキトシが外に同意を求める。

周りから男たちの声で「オマーン」と言う声が飛び交い始め、アキトシの「オマーン」という投げかけに返答するように声が大きくなっていく。

「朝からオマーンのコールアンドレスポンスはやめてください」とアキトシを止めようとする中、ケイコが出勤してきてアキトシは声を止める。

アキトシは「よ、妊婦」と囃し立て、「ケイコちゃん、今度4人で合コンな」と誘う。

ケイコが適当に「はい」と返事をすると、アキトシが有線をつけ、再びマイケルジャクソンのsmooth criminalが流れ始める。

「俺マイケル引き当てる率高くね?」と言いつつも、ノリながら掃けていく。

 

「さ、始めるわよ」とケイコが機械のスイッチを入れると、サチコがすぐに止める。

サチコは「勝手に始めないでください、ここでは私が雇い主ですから」といって、再びスイッチを入れる。

作業をしながらケイコが「何かっかしてんの?」と聞くと、サチコは「主人が最近オマーンオマーンうるさいんです」と愚痴り始める。ケイコが「オマーンさせないからじゃないの?」と聞くと、サチコは「だって怖いんですもん!主人キンタマ1つないんですよ」と話し始める。アキトシは虫太郎に餌をやっている時にキンタマを片方食いちぎられたらしい。サチコは「『おれぁ指が6本だから、キンタマなくてフィフティフィフティだぁ』とか言ってますけど、気持ち悪いんですよ、私そもそもオマーンに抵抗感あるし」と続ける。

ケイコが「わかんないわね」と言おうとすると、サチコもそれに声をかぶせ、「わかんないわね、言うと思った、私こんなにいろんなこと分かんないで済ませてきた人間にもの教わってありがたがってたなんて」とケイコを責め立てる。

「私、先生に謝ってほしいなぁ」と言い始めたサチコを、ケイコは無視して作業を続けるが、サチコが機械を逆回しにし始める。逆回しに混乱するケイコに何度もベルトコンベアの向きを変えてサチコは去っていく。ケイコは流れていってしまった部品を追いかけて逆の方向に去っていく。

 

サチコの日記が始まる。

「夫が最近激しくオマーンを迫ってくる。私はもう、アレかもしれない。次の日私は、この工場で一番暑い場所に来ていた。」

 

ビデオデッキを拭きながらついでに汗を拭うミチオの周りを、サチコは金槌を肩たたきがわりにしながらうろつき、「暑いわねぇ」とぼやく。

「そりゃ暑い場所に来てるんだらから暑いに決まってるだろ」とタオルで汗を拭きながら返すミチオに、サチコは「夕べあんたの兄さんとうとう完全に狂ったわよ」と話し始める。

昨日アキトシに激しくセックスを迫られたと話すサチコに、ミチオは恐る恐る「やったのか?」と問いかける。

サチコは「やるわけないでしょ!兄弟揃って私をレイプする気か!って叫んだら、さすがにあいつシュンとなって自分の部屋に帰っていったの」と言い、ミチオはそれに対して「普通じゃん」と返す。

サチコは話を続ける。「それで、夜中の3時まで戻ってこないからさすがに気になって部屋を覗いてみたら」ライオンの被り物を作っていたらしい。サチコは物音を立ててしまい、アキトシはサチコに気づいたそうだ。ミチオが「隠したか?」と聞くと、サチコは「被ったわ」と答え、ミチオは「被ったかぁ…」とショックを受ける。

そしてアキトシはサチコに向かって「たべちゃうぞ-!」と言ったそうだ。

 

「一緒に逃げて」と訴えるサチコに、ミチオは曖昧な返事を返す。「先生のことそんなに好きなの?だいたいあんな化け物と話合うの?」と問い詰めるサチコに、ミチオは「そういうことじゃない」と返す。

サチコはミチオに、ケイコがこの工場にやってきたのは、中学時代にいじめから救った恩を回収するためだと訴える。今頃私を不幸にして帳尻合わせにきたと話し、「ミチオはそれに利用されてるだけなんだよ!」とサチコは言うが、ミチオは「そんなはずない」と言って逃げるように床に座り込む。

サチコはミチオの前にしゃがみこんで、ミチオの頭を両手で掴み上げる。「なんだよ」と言うミチオにサチコは口づけをする。そのまま首筋、胸、お腹と、サチコのキスが下がっていくと、ミチオはサチコに襲い掛かる。立ち上がった2人はキスをしながらミチオがサチコのお尻を揉み、床に転がる。挿入したところで2人はパッと目が合う。

正気に戻ったように2人は距離を取り「暑い暑い」と繰り返しながら、ミチオは扇風機に当たり、冷感スプレーを体にかけ、股間に振りかけてしまい飛び上がる。

サチコは「あたし、あんたのことが憎い」と話し始める。「でもあんたと先生とあのキチガイの中だったら、順番的に一番憎くない、だから一緒に逃げたいの」とサチコに言われたミチオは、足枷を見せて「これだからなぁ」とぼやく。

それに対してサチコが「また自慢⁉︎」と言うと、「何が自慢だこのアマ!」とミチオがキレて掴みかかろうとするが、サチコは怯まずに「あんたの兄さんその鎖一生外す気ないよ!」と叫ぶ。

ミチオは手を止めて、サチコに静かに背を向ける。サチコは「ほぉら驚かない、なんなのあんたたち!気持ち悪いよ!こんな鎖本気だしゃ簡単に外れる!」と言いながら、金槌で鎖を叩き始める。

「やめろ、気が狂ってるのはお前だ」と言いながらミチオがサチコを止めようとしていると、プレハブの外からアキトシが「おーい、ミチオー、いるかー?まぁそりゃいるわな」と言いながらやってくるのが聞こえる。

 

焦る2人はどこかに隠れ場所を探すが見つからず、盗聴器を隠している床下に隠れようとするサチコをミチオは「そこはダメ!」と必死に止める。嫌がるサチコを無理やりミチオはトイレの中に隠れさせたところで、ライオンの被り物を被ったアキトシが「食べちゃうぞ〜!」と言いながら部屋に入ってくる。

トイレの蓋の上に座って「うわぁぁ!」と悲鳴をあげて怯えるミチオに、アキトシは笑いながら「食べない食べない、さすがに俺も義務教育は受けてるから」といつもの調子で話す。

アキトシは四丁目のマルヤマさんから預かったキーボードを持ってきて、音が変だから直してくれ、急ぎの仕事だミチオに頼む。

「あ、あぁ」しか返せないミチオがうろたえているのをみて、アキトシは自分の被り物を指差して「これか?ライオンに見えるか?」とミチオに聞く。

「見える見える!すっごく見えるよ!」とアキトシの機嫌を取るミチオをアキトシは立たせ、肩を組む。

「実は重大発表がある。俺、アレに出ようと思うんだ」と話すアキトシは、「欽ちゃんの仮装〜」と話す。

語尾がこもっていて聞き取れず、ミチオは「欽ちゃんの下層階級?」と聞き返す。

アキトシは「ばかぁ、ばかぁ、欽ちゃんの仮装大賞、欽ちゃん上流階級だろ!」とおちゃらけ、ミチオも「そうだよな!」とひたすらアキトシを肯定しながら、再びトイレの蓋に座る。

ミチオがライオンの仮装で出るのかと聞くと、アキトシは「そんなんじゃ無理に決まってるだろ、ジャングル風呂だよ」と返す。

ミチオが「ジャングル風呂ぉ⁉︎」と言うと、アキトシはミチオを自分の斜め前に座らせ、「お前〜、サチコ〜、先生〜、お前〜、サチコ〜、先生〜、6人で俺を囲んで」と話し、ミチオは思わず「6人もいねえよ!」とツッコむ。ヘラヘラ笑いながらアキトシは「で、俺が真ん中でお湯を吐くんだよ」とミチオに自慢げに説明する。

「どうやって⁉︎」と困惑するミチオに、しばらく考え込んで、アキトシは「そりゃやっぱりお湯をたくさん飲んでダババババ」と言いながら、ひたすらいろんな方向にお湯を吐く動作を繰り返す。

壊れたように繰り返すアキトシに、ミチオはすがりついて「兄貴〜しっかりしくれよぉ、なぁ兄貴〜」と泣きつくが、突然正気に戻ったアキトシは、冷たく「じゃ、頼んだぞ、キーボード」とミチオに言い残して去っていく。

「直しとくから!直しとくからー!」と言いながら、アキトシが去ったのを確認して、ミチオは急いでトイレの蓋を開ける。

サチコがミチオに「行った?」と確認して出ようとすると、アキトシが「あ、そうだ!」と言いながら戻ってくる。

「トイレ貸してくれないか?」と頼むアキトシに追い詰められ、ミチオは「ダメだ」としか返せない。

何度も頼んでくるアキトシに追い込まれ痺れを切らしたミチオは、「ダメだっつってんだろこのキチガイが!」と言ってしまう。

「ついに言ったな」と怒ったアキトシはミチオを殴り、「サチコと2人で俺に変な薬飲ませてたのも知ってんだぞ」と言いながらミチオのお腹を踏みつける。悶えるミチオにアキトシは「トイレ終わったらしっかり話つけてやる」と言って、トイレの蓋を開ける。

 

トイレから出てきたサチコと、アキトシの目が合う。なんとか立ち上がったミチオは、キーボードでアキトシの頭を殴る。

「何してんだテメエ」とミチオに襲いかかろうとするアキトシを、今度はサチコが金槌で何度も殴る。

頭から床に潰れ、なぜかひたすら屁をこいたアキトシは動かなくなる。

「イヤァァァァ」と悲鳴を上げるサチコを、ミチオは「静かにしろ」と落ち着かせようとする。

「死んだの⁉︎」とテンパるサチコに、ミチオは「当たり前だろ、こんなぶっとい金槌で何度も殴ったら」と返し、サチコが「あんたが危ないと思って!」と焦っているのを「わかってる」と受け止める。

そこでアキトシが急に立ち上がり、頭から大量の血を流しながら、マイケルジャクソンのスリラーのようなダンスで歩き回り始める。

恐怖に襲われるプレハブだったが、再びアキトシは倒れこむ。

 

場面8

サチコの日記。

「主人が死んだ。とりあえず死体はトイレに隠した。ミチオが先生に相談しようと言うので、私は結構ショックだった」

アキトシとサチコが二人掛かりでアキトシの身体を持ち上げて、トイレの中に落とす。

 

サチコが必死に床の血痕を拭き取る中、ミチオは壊れたキーボードの音を確かめている。

サチコが「そんなことしている場合?」と聞いたのに対し、ミチオが「だって兄貴が急ぎだって言うから…」と答える。

サチコが「もう死んだよ」と言うと、なぜかミチオは笑い始める。

「何がおかしいの!」と雑巾を投げつけられたミチオは、「だって、逆になってんだよ」と話し始める。

ミチオによると、アキトシの中ではアキトシとサチコの結婚とミチオがサチコを強姦した順番が入れ替わっているらしい。

「あぁ、逆だね」と笑い始めるサチコの元にミチオはしゃがみこみ、2人ですがりつくように手を取り合う。

「本当は俺が強姦した責任を取って兄貴が結婚するって話だったのに」と話すミチオに対し、サチコは「それもおかしいよね、わかりにくいよね」と笑う。ミチオは「自分でわかりにくいことしてんのに、後で順番入れ替えてわかりやすくしてるんだよ、キチガイなりのつじつま合わせってやつか?」と笑いながら、立ち上がってトイレの蓋を開ける。

「見ろよ、死んでる」とミチオが言うと、サチコはトイレを覗き込んで壊れたように笑い始める。

床に転がって笑うサチコのスカートがめくれ、下着が見えてくる。

バタンとトイレの蓋を落としたミチオは、サチコに襲いかかり、繋がった状態でサチコの肩に顔を埋め、「こええよ」と泣きそうな声で嘆く。

2人の上下は入れ替わる。サチコがミチオのタンクトップを脱がす。サチコはミチオに「先生にしたこと全部して」と頼み、騎乗位で始まる。サチコは「これもして」と後背位でスパンキングをせがむ。立ち上がったサチコは今度は「これもやって」とミチオを椅子に座らせ交わる。「タイタニックみたいなのもして〜」と立ち上がってミチオに犯され、サチコは椅子の上に立ち上がり、「先生にしてないこともして」とミチオに飛びついて駅弁スタイルで犯される。

 

そこに銀色の甲冑姿のケイコが入ってきて、2人は服を直しながら離れる。

ミチオはキーボードを修理しているように装ってキーボードを持って椅子に座る。

サチコが「何その格好」と聞くと、ケイコは「ハードなことやるから形から入ろうと思ってね」と返す。

ケイコにブルーシートを渡された敷けと言われたサチコが「工場でトンカントンカンやってると思ったら、もっと緊張感持ってよね!」と言うと、ケイコは「じゃああんたがやる?」とサチコに巨大な斧を差し出す。

細かく切ってワニに食べさせるからと言われてサチコが斧を受け取るが、あまりの重さにふらついてしまう。

見かねたミチオが「俺がやる」と言ってキーボードを床に勢いよく置くと、打ち込みのビートのループがなり始める。

ミチオは斧を持ってトイレに向かい、ケイコは「緊張感ない音立ててるわね」とキーボードに止めようとしたところで、突然トイレからアキトシが飛び出してくる。

 

驚く3人に「トイレしながら寝ちゃってた」とアキトシは話す。

アキトシは全員が集まっているのを見て、「そうか、合コンか!俺酔っ払って寝ちゃってたんだ、ごめんごめん」と言い始める。

3人はアキトシの動向を伺うことしかできない。

アキトシがミチオに「なんだそのでっかい斧」と聞くと、ケイコはピアノでsmooth criminalのイントロを弾き始める。

ミチオから斧を奪うように取ったサチコは、アキトシに斧を「マイク!」と説明する。

納得したらしいアキトシは「ぽいよ、合コンっぽいよ!ミチオ、グー!」とテンションが上がり、ミチオとサチコもそれに合わせて盛り上がっているふりをする。

アキトシが「フォー!」と叫ぶと、続いてサチコ、ミチオ、ケイコも順に「フォー!」と叫び、smooth criminalが流れ始める。

全員でイントロからサビ前を踊り、サビでミチオ、アキトシ、サチコ、ケイコの順にソロダンスも踊り、ミチオは鎖を使ってマイケルの前に倒れるパフォーマンスを真似する。

ミチオの鎖を持っていたアキトシは急に手を離し、ミチオが膝を強く打って音楽は止まる。

 

「踊った踊った、なんか今、家族の勢いみたいなものを感じたぞ!」とテンションの上がるアキトシに、ミチオとサチコはひたすら笑顔を浮かべて肯定することしかできない。

サチコは必死に笑いながら「私、飲んじゃうんだー、今日はとことん飲んじゃうんだー、今日笑ってたって明日死ぬ奴もいるけど、笑うんだー」と盛り上げる。

アキトシが「よし、この勢いで欽ちゃんの仮装大賞行っちゃうぞ!」と言うと、ケイコが「え?」と言ってしまう。

「あれ?まだしてなかったっけ?重大発表」と考え込みそうになるアキトシに、ミチオは「したよしたよ!ジャングル風呂!」とかぶせ、サチコはケイコに手を繋がせて3人でアキトシを中心に円を作る。

「兄貴が中心でお湯を吐くんだよな、もう目に物見よ!って感じでこれ見よがしに吐くんだよな!」とミチオが促すと、アキトシは「イエスエスエスエス」と繰り返しながら、ひたすらお湯を吐く動作を繰り返し始める。

勢いで輪の外に出てしまったアキトシはなぜか少年ジャンプと思われるコミック雑誌のページをちぎって口に入れて、床に吐き出していく。

 

「鬼滅うめ!」と言って床に雑誌を叩きつけたアキトシは、なぜか黙ったまま部屋を歩く。

部屋の隅で3人が縮こまる中、アキトシは記念撮影をしようと提案する。

しばらく飲み込めなかったサチコだが、なんとか「じゃあ私、カメラ取ってくる」と立ち上がろうとする。

そんなサチコをアキトシは撫でながら「いいよぉ、俺が取ってくるよ」と言ってプレハブから去っていく。

 

サチコはミチオに「あいつの頭がおかしいうちに逃げよう!」と言うが、ミチオはまだ逃げようとしない。

ケイコにも「コイツ私のこと好きなくせに」と説得するように言おうとしたところで、サチコは何かを思い出したように「あ」と止まる。

サチコはミチオに対して「あれ、合意だったんだよ?私も途中からアンアン言っちゃってたわけだし、あんたが強姦だって言うからこんなめんどくさいことになったんでしょ!」と責める。

サチコはケイコに対しても、マツザワと結婚していたことを責める。

サチコはケイコに、「別にマツザワのこと、そんなに好きじゃなかったけどさぁ、コイツ(ミチオ)も好きじゃないけどさぁ!どうして私の周りにいる男なの?なんであんたと男の趣味かぶんなきゃいけないのよ!真逆でしょ⁉︎あたしたち」と怒りをぶつける。

ゆっくりと隅にあった地球儀を持ち上げたケイコは、ミチオにそれを持たせる。

ケイコは地球儀を指差しながら説明を始める。「私たちが地球の同じところから真逆に進んでいったとして、反対側で重なる瞬間があるわね?この時、男の趣味がかぶるのよ」と言う。

ミチオが「意味わかんねえよ!」とツッコむと、サチコも「意味わかんない!」と怒り始める。

「先生、絶対音感でしたよね」と言い出したサチコは、キーボードで不協和音の猫踏んじゃったを弾き始める。

耳を塞いで「全然猫ふんじゃってない、ちゃんと踏んで!」と言い出したところで、サイレンのような音が鳴り始め、猫のように爪を立てたサチコがケイコに襲いかかり、2人の喧嘩が始まる。

ミチオは巻き込まれないようにトイレに隠れ、最初は2人の喧嘩を恐々と見ていたが、徐々に興奮したように「俺を取り合って女が戦ってる!夢のようだ!」と言い始める。

 

突然皿と棒を取り出したサチコは、なぜか皿回しを始める。

皿についた水が飛んだのか「冷たい!冷たい!」と言うケイコに、サチコは「洗い立て!」と言い、プレハブの外にケイコを追い詰め、ミチオを守るようにケイコの前に立ちはだかる。「ここを出たらこれであんた食わせていくからね!」と言った後、皿を浮かせて持っている棒を180度回転させる技を決める。

「そんなんで食ってけるわけないでしょ」と皿と棒を取り上げたケイコは、サチコをプレハブの中に追い詰める。

サチコは床に置いていた巨大な斧を振り回し始める。ミチオも「斧はやめろ!」と止めるが、サチコの斧はケイコのお腹に当たり、ケイコはうずくまり、気を失ってしまう。

トドメを刺そうと振り回した斧はミチオが盾のように持つトイレの蓋に刺さり、「あっぶねえ、このバカ女!」とミチオがサチコの斧を降ろさせ、なんとか喧嘩は終結する。

 

トイレから出てきたミチオに、サチコは思い出の中で美化されてケイコのことを嫌いだったことを忘れていたと再び話し始める。

灯油のタンクを持って戻ってきたアキトシは、第二作業所の周りに灯油を撒き始めているが、3人は気がつかない。

サチコはケイコについて「いじめから抜け出せた時はほんと神様のように尊敬してたから、でも卒業してしばらく経ってからマツザワと先生が怪しいって噂を聞いて、うげっ!て思ったんだよね、おめえマツザワでいいんかい!おめえがマツザワじゃマズイだろ!って、あ、あたしはいいよ?マツザワで、だって一緒にいじめられてたんだし」と興奮気味に語る。

ミチオは周囲を見渡して、「ガソリン臭くねえか?」と言いだす。

そこに灯油を撒きながらアキトシが部屋に入ってきた。

ミチオとサチコが驚き怖がっているのも気にせずに、アキトシは「イエスエスエスエス」と小声で言いながら第二作業所の床にも満遍なく灯油をかけていく。

 

灯油のタンクを床に置いたアキトシは、「ツジヨシ家諸君!今から写真撮影会を行いたいと思います!ただ、普通に撮るだけじゃ俺っぽさが出ないので、燃え盛るプレハブをバックに撮りたいと思います!よってプレハブの中の皆さんは大変危険ですので、10秒以内に退避してください」と告げ、火を持ってプレハブの周りを歩きながら10秒を数え始めてしまう。

サチコとミチオが必死に止めるが、アキトシはカウントをやめない。

サチコはアキトシに鎖を見せて「この人繋がれてるんだよ!」と訴え、ミチオは「みんなで欽ちゃんの下層階級に出よう!下層階級になろう!」と言うが、アキトシは「もうなってる」と返すだけだ。ミチオは諦めずに「みんなでジャングル風呂をやろう!欽ちゃんそういうの好きだよ?」と言い、「プップップップッ、上げてよ〜、もうちょっと上げてあげてよ〜」と欽ちゃんのモノマネをし、サチコは全力で「合格〜!!」と言いながら飛び跳ねるが、やはりアキトシには響かない。

アキトシの説得を諦めたミチオは、サチコに「斧で切れ!俺の鎖を切ってくれ!」と床に座り込むが、カウントは残り2秒になってしまっている。

ミチオが「兄貴!今何時だ?」と聞くと、アキトシは「10時だ、10…」とカウントを10に戻す。

「やった時を戻したぞ!早く切れ!」と催促するミチオだが、巨大な斧はサチコでは思うようにコントロールできず、床に斧を何度もぶつけてしまい、白い煙が上がり始め、プレハブの中は見えなくなっていく。

「サチコ!早く切れ!」「3号機、兄貴を止めろ!」とミチオは必死に叫ぶが、視界が悪くなったことで余計にサチコの斧はおぼつかなくなり、お腹に斧を食らったケイコもなかなか起きる気配はない。

アキトシは「俺たち、最高だったよな?」と言い、ミチオは「俺たち最高だよ!」と返す。アキトシが「俺たち、家族だったよな?」と言うと、ミチオは「俺たち家族だよ!」とかぶせるが、アキトシのカウントは止まらない。

 

カウントが終わると、中からサチコの「ミチオ!」という絶叫に続いてミチオの悲鳴が聞こえる。アキトシが火をつけようとしたのと同時に3号機がプレハブから出てきて、アキトシを捕らえる。

アキトシはそのまま3号機に連れて行かれ、ワニのいる池に落とされてしまう。

煙が消え始めると、ぐったりと座り込むミチオと、斧を振り下ろしたサチコがプレハブの中にいる。

 

ミチオの鎖のついた足は膝から下で切断されている。

「誰が足切れっつった」とミチオが言うと、サチコは驚いて「はっ!」と飛びのく。「はっじゃねえ!」と絶望するミチオだが、サチコは「頭の中で、今、あの曲流れているよ」と言う。

Over the Rainbowが鳴っている。サチコはミチオの切断された足を投げ捨てて、「先生の足を切ってミチオにつけよう、そしたらミチオ、どこにでも行けるじゃん!いろんなとこ連れてってよね!」と言い始める。

ミチオは捨てられた足を追いかけて、扇風機の方まで這っていく。

サチコは「私今、主役っぽくない?」と言って、作業服の上着を脱ぎ、ワンピース1枚になる。

 

池から這い上がってきたアキトシが戻ってきた。ズボンの股間が血で真っ赤に染まっている。

サチコはそれを見て、「ライオンさん?」と言う。

ミチオが扇風機を支えにして片足で立ち上がる。サチコが「カカシさん?」と呟く。

そこに銀の甲冑姿のケイコが戻ってくる。サチコは興奮気味に「ブリキさん!」と言って、プレハブの隅にあった金髪のカツラを被り、Over the Rainbowを歌い始める。

 

Somewhere over the rainbow,

way up high

There’s a land that I’ve heard of

onece in a lullaby

 

Somewhere over the rainbow,

skies are blue

 

アキトシ、ミチオの順に魔法をかけるような仕草をしながらサチコは歌い、ケイコの両手を取って抱きつく。

ケイコはサチコを抱きしめ、サチコの顔を自分の鎧に押し付けていく。

「んん⁉︎」と苦しそうにもがくサチコを押さえつけ、ケイコはサチコの首を折ってしまった。

 

サチコが床に倒れ、音楽はやむ。

アキトシは「くそぉ、虫太郎のやつ、残ってた方のキンタマまで食いちぎりやがった」とぼやく。

ミチオがアキトシに「おい兄貴、あんたのかみさん死んだぞ?」と言うが、アキトシは「ミチオ、キーボード直したのか?」と聞き返す。ミチオが「ちょっとそれどころじゃなかったんだよ」と嘆くと、ケイコはタオルと椅子とキーボードを持ってきて、「じゃあ今から直しな」とミチオを椅子に座らせる。

ケイコはタオルでミチオの太ももを縛り、キーボードを膝に置き、「これから子供生まれてくるんだから、しっかり稼いでもらわないと」とミチオに言う。

 

ケイコに電話がかかってくる。

ケイコは「マツザワくん?」と言い、電話の相手と話し始める。ケイコは電話に対して「愛してる。知ってるでしょ?私がレトリック使わないの、今度電話してきたら殺すよ」と言って、電話を切った。ミチオはケイコを怯えたように見ている。

ケイコはミチオに対して「あんたと私の子は10を3で割るような会話はしないわよね?」と確認する。

ケイコはミチオの手書きの地図を拾い上げ、赤い丸を数えて「全部で、6軒ね」と言って、プレハブの外に出ていく。

アキトシはぐったりした様子でミチオを呼ぶ。「なんだよ玉無し」と返したミチオに、アキトシは怒ることもなく「なんなんだあの女」と言い、ミチオは笑いながら「その内だんだん分かってくるでしょう」と返す。

アキトシの持っていた火を掲げたケイコは、ミチオに「命令しなさい」と言う。

ミチオがやけになったような様子で「3号機、出動ー!」と叫ぶと、ケイコは工場の外に火を持ったまま出ていく。

 

ミチオは笑いながら「今夜はぐっすり眠れそうだ」と呟く。それに対してアキトシは少し嬉しそうに「そうか」と言い、ミチオは「夜は寝る、基本だよな」と続ける。フクシマ先生の教えでも夜寝て朝起きるのが大事だと言われていると話すアキトシに対して、ミチオは突然「勘違いすんじゃねえ!俺はあんな女、好きでもなんでもないんだからな!」と怒鳴りつける。

ミチオは椅子を降りて、膝で歩きながら背広を肩に羽織る。

アキトシはサチコの死体に寄り添って、うずくまる。

ミチオは「あんな女、上司に紹介できねえよ。奥さんとどんな話するんですか?って聞かれて、会話ないです。セックスだけです。あいつ、セックスマシーンなんです。奥さん愛してんの〜?愛してないです。愛したら殺されるんです。そんなこと、言えねえよ」と言いながら、椅子に戻る。

ミチオは笑い始める。「どんな子供生まれてくるんだろうなぁ。ちゃんとしないと殺されるんだぜ?ちゃんとしないと殺される社会人、きっと俺しかいないぜ?ちゃんとしないとクビになる社会人はいても、首折られる社会人は世界初だな」と言いながら、ミチオはぼんやりと笑っているが、徐々に顔が歪んでいく。

ミチオが「俺、社会人なるんかなぁ?」と不安そうに言うと、町から悲鳴が聞こえてくる。

工場の周りの空が炎で赤く染まっている。

ミチオは片足で立ち上がり、「やりやがった。あいつ本当にこの町に火をつけやがった」と言って、気が狂ったように笑い始める。

ミチオは火をつけていくケイコに向かって、「キチガイが、キチガイ」と連呼する。

肩に羽織っていたジャケットは落ち、扇風機は倒れる。アキトシはサチコから離れない。

ミチオが「キチガイがー!」と叫ぶ。ミチオは気絶するように床に倒れる。暗転。

 

カーテンコール

Over the rainbowが流れて、森川葵横山裕大倉孝二秋山菜津子の順に一列に並んで明転。

横山さんは片足を切断された状態(つなぎの中に右足を折り込んだ状態)のままなので、片足立ちで大倉さんの肩を借りている。

舞台正面、上手、奥、下手の順に4人でお辞儀をして、ステージが回り始める。

続けて再び4方にお辞儀して、下手に捌けていく。

拍手の中で、横山さんが折りたたんだ足を戻してつなぎのふくらはぎから下の布が切り落とされたような状態でスニーカーを履いて戻ってくる。

再びお辞儀をして、3人を手招きで呼び込む。

舞台の4隅を順番に4人が周り、お辞儀していく。横山さんはお辞儀するときに膝に手を置くタイプ。

再び全員下手に捌ける。

拍手の中、横山さんだけ戻ってくる。マイクを通さずに「ありがとうございました」と客席前方、後方に言って、2回席、バルコニー席、Z席(サイド席)に手を振って、下手出入り口の前の通路で手を前に出すタイプのお辞儀を前後2回して捌けていく。

ちなみに3/14の夜公演ではWピース、千秋楽ではガッツポーズをしていた。

 

ここから千秋楽の話

拍手が鳴り止まず、再び横山さんが戻ってくる。

今度はマイクが入っている。横山さんの「ありがとうございます!」で客席が静かになる。

そのまま横山さんが「この状況で無事に千秋楽を迎えられたこと奇跡みたいだと思っています。本当にありがとうございました」と言って、拍手。

「みなさんありがとうございました!ここまで走りきれたのはみなさんのおかげです!」と言って、舞台中心でガッツポーズをして捌ける。

 

音楽の中拍手が続いて、もう一度横山さんが戻ってくる。

今度は4人ともセンターステージに戻ってくる。

「ありがとうございます。演出の大根さん、毎公演見に来てくださっていました。大きな拍手を。この舞台は4人で作り上げたものでした。この3人(出演者)にも大きな拍手を。そして、舞台を支えてくれたスタッフにも大きな拍手を。何より、この公演ができたのは来てくださったみなさんのおかげです。大きな拍手を」という挨拶で締めくくり、手を振って帰っていく。

 

公演終了。

 

感想と考察はこちら

 

kibi.hatenablog.com

 

 

あなたの関ジャニ∞はどこから

 

 

どうして推しを好きになったかと聞かれると、意外とハッキリしたきっかけって覚えていなかったりする気がします。

でも担当ごとになんとなく定番の沼落ちパターンってるような気がするんですよね。

以前、村上信五さんを好きになった経緯のアンケートを取ったことがあるのですが、せっかくなら関ジャニ∞全体でも同じようなことをやってみたいなと思ったというのもあります。

私が見かけた中でTwitterまことしやかに囁かれている噂としては、「村上担は二次元出身が多い」とか、「丸山担は分析好きでブログ書きがち」とか。

それらの真偽はともかくとして、担当ごとに沼落ちの経緯を分析すればなんらかの傾向が見えるんじゃないかと思いまして、アンケートを取ってみることにしました。

 

アンケートは、Twitterを使ってGoogleフォームで回答を募集しました。8/28〜9/4までの1週間を期限とし、合計2840名の方に回答していただきました。

ご協力してくださった方に感謝申し上げます。

 

表1 アンケートに参加した各担当の人数

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人数は横山担が263名、村上担が356名、丸山担が555名、安田担が497名、大倉担が554名、箱推しが615名となりました。


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図1 アンケートに参加した各担当の割合

 

円グラフにすると上のようになります。

最初は私の周りの方が答えてくださる場合が多かったので村上担、次いで丸山担の割合が高かったのですが、徐々に大山田と箱推しが伸びてきた結果こうなりました。

特に大倉担と丸山担の割合はかなり拮抗していますね。最も多いのが箱推しなのは少し意外でした。3年ほど前に同じようなアンケートを取ったのですが、その時は箱推しの項目を作ってなかったので、単純比較できないのは残念です。

(ていうか前のデータどこ行ったか分からない)

最も回答数が多かったのは丸山担で、色々な可能性は考えられるのですが、最初に言った「丸山担は分析好きが多い」という噂が本当で、それゆえにこうしたアンケートに興味を持って回答する人が多かったとかなら面白いですね。

 

ちなみに、この数値は誰のファンが多いとか少ないというより、このアンケートに答えてくださった方はこういった割合だったと考える上で参考にしていただければと思います。

関ジャニ∞のファンをランダムにサンプリングしたわけではなく、私のツイートが回りやすい範囲へのアンケートになっていますし、そもそもTwitterをしていない方は答えられない仕組みになっていました。その時点でかなりのバイアスが掛かっていると考えられます。

 

質問は、ファンになった時期、エイトを好きになる前に好きだったジャンル、担当が変わった経験があれば以前の担当、ファンになったきっかけを聞くものでした。

ブログを分かりやすくするために、結果に割合やグラフのみを載せている場合があります。詳しい数値の結果は最後に付録としてまとめているので、興味があればご確認ください。

 

結果1 ファンになった時期

 

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図2 各担当のファンになった時期

横軸が「〜2003」の選択肢と2004〜2020までの年代、縦軸はその年にファンになった人数です。

 

グラフを見て分かる通り、全体的に右上がりの傾向が見られます。

より細かく見ていくと、2009年あたりから2012年までの急激な上昇と、2013年から2016年までの停滞が特徴的ですね。

これは村上担のみにアンケートを取った時も同じ現象が見られました。

どうやら村上担固有の現象ではなく、関ジャニ∞全体として2013年から2016年になんらかの事態が起こっていたようです。

どちらかといえば2013年から2016年は毎年ドームツアーもやってますし、10周年の野外や年1回のリサイタルもあって活動から見ると順調だったように思えます。

 

原因は2つ考えられると思います。

・単純にその年ファンになる人数が少なかった

・その年ファンになった中で担降りする割合が多かった

まずはその年ファンになる人数が少なかったという点ですが、2013年から2016年というと先ほども述べたようにどう考えても絶好調な時期なので感覚的には納得しづらいでしょう。

しかし、落ち込んだというよりは停滞だと捉えればむしろ2009〜2012までが爆発的な伸びを見せただけで、2013年以降少し落ち着いたと考える方が捉えやすいのかもしれません。

注意しなければいけないのは実際の活動とファンの増え方にはラグがあるので、単純にその年を見れば分かるというわけではないでしょう。

 

個人的には、絶好調だったからこそ停滞したという可能性がある気がします。

2013年といえばいわばジャニーズにおける最高峰である5大ドームツアーも2度目、歌番組の最高峰である紅白にも出場し、今まで「上へ上へ」で団結していたメンバー、スタッフ、ファンの結びつきが少し緩んでいたのかもしれません。

そして絶好調な時期の7人を好きになったファンだからこそ、いわゆるにわか的なパターンも多く、時間の経過と共に離れる割合が高くなったのかもしれません。

 

ちなみに別の方法でもこの数字を分析してみました。

下の表2.1はその年の全体のファン数における各担当の割合を表しています。つまり、その時期にどのメンバーが人気だったのかというのが分かりやすいグラフになっていると思います。

オレンジはそのメンバーにおける最大値で、青は最小値です。

 

表2.1 各年ごとの担当の割合

その年ファンになった人数の合計をもとに、その年に各メンバーのファンになった人数の割合を計算しました。

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こう見ると、大きく分けて最初から人気が高い(そしてその時期にファンになった人間が残っている)横山さん、安田さん、大倉さんの群と、後咲きの傾向にある村上さん、丸山さんの群が見えてきました。

デビュー前からファンの割合が多い横山さんと、2020年最も来ている村上さんの対比も面白いですね。

関ジミ3と言われていたほどの大山田ですが、意外と大倉さんはデビュー前の時点でもっとも人気なメンバーという結果になりました。また、丸山さんも数字はそれほど低くありません。一方で安田さんはデビュー前の数字が他の年と比べて圧倒的に低くなっています。しかし2004年においてはもっとも人気なメンバーの1人なので、一体この間に何が起こったのでしょうか。

丸山担の割合が最も高かったのが2014年ですが、この年の10月期のドラマは「地獄先生ぬ〜べ〜」でした。記述欄にぬ〜べ〜がきっかけだと書いている人はかなり多かったです。また、先ほども言った通りきっかけからファンになるまではラグがあると考えられます。丸山担の場合はきっかけに8ESTとJUKEBOXの名前を挙げている人が多かったので、2012〜2013あたりの蓄積が2014年に反映された可能性もあるでしょう。

それにしても1/4を超える27.2%という数値は驚異的ですね。

 

ここで、表2.1の色の付け方を少し変えてみました。

 

表2.2 各年ごとの担当の割合

色の付け方以外は表2.1と同様です。

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表2.1は各メンバーごとにどの年に最も人気があったかというのを色付けしていたのですが、上の表は各年ごとにどのメンバーに最も人気があったのかというのが分かりやすいものになっています。

2003〜2013までの圧倒的な大倉さんの強さが際立ちますね。そんな中で2004年に安田さんと村上さんが他3人を抑えてトップに踊り出たのは何か理由があるのでしょうか。記述のところも確かめてみたのですが、特筆すべき傾向は見られませんでした。

また、2014年をピークとしてそれ以降丸山さんの人気が大倉さんを追い抜きます。もちろん最初に言った通り今回のアンケートに答えた中での割合なのでバイアスはかかっていることをご了承ください。

そして再び2020年、大倉さんが17.3%まで上がり、そこに村上さんが並びました。

考えられる理由としては大倉さんは予告含む『窮鼠はチーズの夢を見る』関連をハマったきっかけに上げた人が多かったので、そこが反映されたのかもしれません。

また、村上さんの場合はYouTubeやスマイルアッププロジェクトなどの配信関係での取り込みも他のメンバーより多く見られました。元々バラエティで知名度が高い分、配信によって気軽にアイドル・村上信五にアクセスできたことでギャップが見えやすかったのかもしれません。

 

ちなみにこの大倉さん→丸山さんへの移り変わりは、結果3にも関わってきます。

 

結果2 関ジャニ∞を好きになる前に好きだったジャンルは?

 

表3 各メンバーにおける関ジャニ∞を好きになる前に好きだったジャンルの割合

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こちらは各担当の合計人数をもとにして割合を出しています。

ほとんどのメンバーがジャニーズの他グループからの流入が最も多い中、村上さんだけが二次元界隈からという回答がトップになりました。

また、他のメンバーでは声優からの流入が最も低い値となったのですが、村上さんはジャニーズ以外のアイドル(具体的にはAKB48やKPOPなど)からが最も低くなりました。

村上さんだけが、他のメンバーとは異なるジャンルからファンを引き寄せているのはかなり興味深いと思います。知名度が圧倒的に高いゆえに、アイドル以外のファンからも注目されることが多いのかもしれません。

また、2番目に高かった値のボックスは薄い橙で色をつけています。これは各メンバーごとにかなり分かれました。

横山担と大倉担と箱推しの方はエイトが初めて、村上担はジャニーズからという回答が多かったのですが、丸山担は二次元、安田担はミュージシャンの推しからの流入が多いという結果になりました。

なんとなく安田さんが音楽と関連しそうなのは分かるのですが、丸山さんが二次元に強いのはどういうことなのでしょう。

強いて言うなら、マルヒナ2人ともスタイルがアホみたいに良いってとこですかね?

本当にこれが理由だったら面白いですが、もっと複雑な理由がある気がします。

 

結果3 自担を好きになる前に好きだったメンバーは?

続いてグループ内での担当の移動をまとめました。

 

表4.1 各担当における以前の担当の割合

各担当の合計人数をもとに、最初に好きになったのはどのメンバーであるかを割合にしました。

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最小値はどのメンバーでも内くんになったので、2番目に小さい値も青色にしています。

どのメンバーでも担当は変わっていないという回答が最も多い結果になりました。分かりにくくなるので担当が変わっていないことを示すボックスはグレーにしました。そんな中でも最も担当が変わらない割合が多いのは大倉担のようです。

 

担当が変わっていない以外の回答で最も大きい値を取ったものをオレンジにしています。

箱推しでは渋谷さんから降りた人が多かったです。3番目に箱推しになりやすいのが錦戸担なのも理解できるのですが、錦戸さんを押さえて2番目に多いのが大倉さんから箱推しになった割合なので、少し不思議です。

元々錦戸さんを好きだった割合は村上担、大倉担において最も多い結果となりました。

また、横山担、丸山担、安田担では大倉さんからの流入が最も多くなりました。そもそも大倉担の人数(特に2014年以前)が多いので、そこから他のメンバーに移った割合も多かったのではないでしょうか。

 

最も少ないのは村上担から横山担、丸山担、安田担、横山担から村上担、箱推し、そして丸山担から大倉担という結果になりました。

村上担からの流出が少ないのは、元々好きだったジャンルを聞いた質問で村上担の特殊性が明らかになっていたので、村上さん単体でハマる割合が多いのかもしれません。

また、村上さんはファンの人数の増加傾向が特に強かったので、最近ファンになった人が多く、そこからまだ担当が変わっていないという可能性も考えられます。

また、横山担と村上担はそもそものアンケート参加人数が少なかったのも理由の一つだと思います。

 

意外だったのは大倉担になる経路として最も頻度が低くなったのが丸山担だったことです。

なんとなくリズム隊で高身長でガタイがよくて大人っぽい顔立ちなので共通性がありそうなところです。しかも大倉担からの丸山担という流れは多かったにもかかわらず、逆は起こりにくいという結果になりました。なぜなのでしょう。

先程のファンの割合を見た時も、大倉さんと丸山さんの人気は2014年あたりを境に入れ替わるような形になっていたので、そこで大倉担から丸山担に変わった人がかなりいたのかもしれません。

また、丸山さんは村上さんと同じく2009年以前においてはそれほど人気があるメンバーではないので、そもそも流れ出る人数の母数の少なさも関係していると考えられます。

 

表4.2 以前の担当ごとの現在の担当の割合

各メンバーを好きだった人数の合計をもとに、そのメンバーからどのメンバーに移ったのか、その割合を表しました。

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こう見るとより規則性が強くなった気がします。

最終的に丸山担に落ち着く割合が多いようです。

例外は元々錦戸さんか内くんを好きだった場合で、大倉担になることが多いようです、

それも数値的には2位以下に2倍以上の差をつけて大倉担に流れているので、何か共通点があるのでしょうか。一応2人とも元NEWSという大きな共通点はありますが、絶対それは関係ない気がしますし…。

ていうか書きながら気づきましたけど、さっきから大倉さん関連の移動ばっか特殊なんですよね。どういうことなんでしょう?

 

そして、最も安息の地に選ばれやすい男・丸山さんから移る先として多かったのが村上さんでした。

村上担から丸山担に変わる割合も比較的多いので、村上さんと丸山さんの間には双方向に移動があるようです。(ちなみに私は丸山担→村上担→丸山担なので、その例のど真ん中ですね)

ただ一つ考えられるのは、私が村上さんと丸山さんを好きなので、私の周りにも丸山さんと村上さんの2人ともを好きな方が多かった可能性はあります。3000件近くの回答が集まっているので、それ以外の理由も充分あるとは思いますが、考慮しなければいけない点です。 

しかし、この2人は結果1でもデビューしてしばらくしてからファンの増える後咲きの傾向という点で共通していましたし、結果2でも2次元界隈からの流入が多いメンバーに挙がっていたので、少なくともアンケート対象の偏りだけではない何かしらの共通性がありそうです。

 

結果4 ハマったきっかけ

 

表5 各担当におけるハマったきっかけの割合

各担当の回答数の合計をもとに、ハマったきっかけの割合を求めて表にしたものです。

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全メンバー、圧倒的にバラエティ番組が強くなりました。

その中でも他のメンバーが34〜42%ほどの中、村上担ではバラエティ番組をきっかけにファンになった人が49.1%で約半数を占めることになりました。

ちなみに大倉担が34.4%で、他のメンバーと比べると最も少ないようです。

続いて割合が高かったのが音楽番組きっかけで、村上担、大倉担、箱推しで2番目に高い値になりました。

横山担では他のメンバーに2倍以上の差をつけてドラマからハマった割合が多く、丸山担と安田担はDVDきっかけが多かったです。

しかし安田担のDVDきっかけの割合は12.5%と、音楽番組と2位争いを2分したような結果になりました。

そう考えると丸山担の14%がDVDからというのは少し多い気がします。回答の詳細を確かめてみると、8ESTが12件、JUKEBOXが8件、他にも8UPPERSやSpirits!!など具体的な名前が上がっている回答が他のメンバーのファンより圧倒的に多かったので、「このライブのこの丸山さん」というのが印象に残りやすいのかもしれません。

 

ちなみにその他に含まれる回答では、村上担がCMや配信、丸山担と安田担で雑誌という回答が比較的多く見られました。

ちなみに丸山さんの「その他」で面白かったのが、夢に出てきたというパターンが3件あったことです。

他のメンバーだと大倉さんと村上さんがそれぞれ1つだけ夢パターンがあったのですが、なぜ丸山さんだけ夢の中で3人も落としているのか不思議で仕方ありません。これはどうにも分析のしようがない…。

 

番外編 きっかけになったDVD

ハマったきっかけがDVDだと答えた方の中から、担当ごとにどのDVDで落ちた人が多かったのか調べてみました。

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横山担の場合はPUZZLEと十祭が回答数2で最も多く、村上担では十祭(回答数4)、丸山担では8EST(12)、安田担ではJUKEBOX(7)、大倉担で47および8UPPERS(5)となりました。

全員全くかぶっていないのすごいですね。

 

勝手に丸山さんといえばJUKEBOXのイメージがあったのですが、惜しくも回答数8で2位に留まりました。ちなみに丸山担の具体的なDVD名の回答数が多かったので3位以降も確認しておくと、3位がみんな大好き8UPPERS(6)、同率4位がPUZZLEとSpirits(4)になりました。

 

安田担の2位は同率で8UPPERSとEIGHT×EIGHTER(5)、大倉担の3位はJUKEBOX(4)になっています。

ちなみに以前の村上担のアンケートを見ていると十祭のtornで落ちた人が多いようなので、村上担の結果1位十祭にはそれが反映されているのかもしれません。

全体で見てみると根強い人気の8UPPERS(回答数18)や、8EST(同じく18)を抑えて、JUKEBOXの回答数20がトップに入りました。

特に47〜十祭まで、2007年から2014年に発売されたDVDの回答数は比較的多くなっていました。これは単純にそれらのDVDが人気という可能性もありますが、YouTubeや動画サイトが普及して以降、(違法ではありますが)アップロードされたコンサート動画が雑多に観れることでどのコンサートがきっかけだったのか分からなくなったという可能性はありそうです。

 

9月に回答を締め切って2ヶ月近く寝かせてしまいましたが、いかがだったでしょうか。

詳細な回答もたくさんいただいたのですが、なかなか処理するのが難しいため扱いきれなかったのは残念です。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

付録

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アイドルを好きになって呪いが解けた

女の子は可愛くあるべき。

 


弱くあるべき。守られるべき。可愛くなりたかった。自分の背の高さが嫌いだった。自分の顔が嫌いだった。虫が嫌いだった、おばけが怖かった、フリをした。彼氏が欲しかった。少女漫画を借りて必死に読んだ。

 


さようなら、過去の私。

 


アイドルに出会って人生が変わった。

そんな話は多分色んなところに転がり落ちてるんだろうけど、私の人生もその内の一つ。

なんとなく、それを整理して書き留めておきたくなった。

 


私の推しは関ジャニ∞村上信五である。

とにかく顔が可愛い。身長は169cm。あだ名はヒナ。虫とおばけが怖い。辛いものが苦手。脚の長さが狂ってる。

愛想がよく、テレビでよく「アイドルっぽくない」と弄られてる、あの人。

 


まぁ人によって捉え方は変わるかもしれないが、私から見れば可愛いの塊だ。

なんでそんな弄られ方をしてるのか分からないくらい自分がアイドル(というより関ジャニ∞)であることにこだわりを持っているし、あざとい。

 


私。顔が可愛いと言われたことはないが、メイク映えしそうとはよく言われた。身長は168cm。小学校の教室に現れたクモを逃してヒーローになり、お化け屋敷でゲラゲラ笑うタイプ。辛いもの大好き。スタイルはそれなりに、悪くはないと思ってる。

初対面の人には怖がられることが多く、間違ってもいじられたりはしない。

 


推しとの共通点?骨格ストレート。

あと名字が「き」で終わるので、一時期先生にキングと呼ばれていた。

(今考えるとかなり面白い)

 


いわば正反対の人だった。

出会った頃の私にとって、みんなから可愛がられる愛嬌の塊のようなヒナちゃんは、頭を掻き毟って嫉妬するほど羨ましい存在だった。

 


女の子らしく、の病。

それは多分、ほとんどの女性が大なり小なり経験するものなのではないだろうか。

 


私は重度の女の子らしく病を患った。

 


別に親がそういう人間だったわけじゃない。

祖父母は世代的なこともあってそれなりに「男は男らしく」みたいなことを言う人だったけど、だからといって何かを強制されたわけでもない。

友達から「お前男かよ」みたいなことを言われたわけでもない。

大きなきっかけがあったわけではないけど、少しずつ、一滴ずつ水が溜まって、いつのまにかコップから溢れていた。

 


女の子らしく、可愛く、そして、"弱く"ないと。

 


おばけや虫が平気ではいけない。

洗脳は成功した。中学生になる頃には立派な虫嫌いになっていたし、お化け屋敷で他の友達と一緒に高い声で叫んでいた。弱々しい女の子。

 


好きな男の子より身長が高くてはいけない。

望みは叶わず、私の身長は大学2年生まで伸び続けた。

いつかは男の子の方が背が高くなるだろうと思っていたが、結局今でも出会う男性の4割くらいは私より背が低い。

ヒールを履くのはやめた。猫背になった。

 


足を閉じなければいけない。

これは成功した。何時間足を閉じてても平気。でもいつのまにか、O脚になっていた。膝だけを閉じていたことで内股になったのだろう。めちゃくちゃ後悔している。

 


少女漫画でキュンキュンしなければいけない。

友達に借りて、たくさん読んだ。でも自分のお金を使う気にはなれなかった。

ほんとは少年漫画が好き。でも言わない。

友達が「○○くん(少女漫画に出てくるキャラ)カッコイイよね!」と言っていたが、キャラの名前と顔がいつまでも覚えられなかった。

 


ジャニオタになったら終わり。

元々目が丸々してて顔がちっちゃい感じの男の人が好きだった私は、ジャニーズの顔が好きだった。

でも、アイドルに夢中で現実の恋愛を捨てるなんて、終わってる。

 


挙げ始めればキリがない。

きっと今では思い出せないものもある。

色んなルールを作って、弱々しい女の子、可愛い女の子を演じるように頑張ってきた。

努力は虚しく、誰にも可愛いとは言われなかったし、好きな男の子からも振られてばかりだった。

ようやく付き合えた2年間片思いした男の子からも、たった3ヶ月で振られてしまった。

私はもう疲弊していた。疲れた。ブスすぎて死にたい。

 


それから1年ほどの恋愛断食期間が続き、出会ったのが関ジャニ∞だった。

 


もう現実の恋愛なんてめんどくさい。いいや、終わっても。

 


そんな投げやりな気持ちもあった中でハマった関ジャニ∞および、村上信五

特に推しである村上さんとの出会いは、私に一つ今まで無かった感情をもたらした。

 


「可愛がりたい、愛でたい、守りたい、抱きたい」

 


今まで「女=される側」だと思っていた私が、一歩外に踏み出した瞬間だった。

 


幸い私は虫がいける。おばけも全く怖くない。勉強もできる。身長も高い。きっと彼を守れる。

 


今までコンプレックスだった部分が、一気に私の強みに変わった。

途中で推しのことを分析したいあまりにパーソナルカラー、パーソナルデザイン、骨格診断などとも出会った。

可愛らしくなりたかった私は、大人っぽく華やかな格好が似合うPDロマンスで、強い色が似合うPC冬だった。

自分に似合う格好をしたら、周りの人から「綺麗」「可愛い」と言われるようになった。

女性に褒められるのは、ただただ嬉しかった。

もちろん、周りの男性からも「可愛い」と言われることが増えた。

 


喉から手が出るほど欲しかったはずの「可愛い」

 


ようやく手に入れたのに、全然嬉しくない。

あれ?私が欲しかったの、これだっけ?

 


正直、性的に消費されることが女の価値だと思っていた。

ある時、知り合いの男性が自分のことを話している会話を聞いてしまった。

彼はよく私に対して「可愛い」と言ってくれていた。

 


「やりたい」

 


その一言を聞いたときに、「可愛い」が吐きそうなほど気持ち悪く感じることに気づいた。

よく考えたら、私、男と付き合いたいと思ってない。

私の妄想する好きな男性との付き合い方は、いつも明るいカフェで楽しい話をする場面だった。

それは別に女友達が相手でも構わない。

手を繋ぐこと、ハグをすること、頭を撫でられること、行為をすること、それらに対して嫌悪感を抱いている。

でも、男性に恋愛感情は抱く。

多分いわゆるノンセクに近いんだと思う。でもヒナちゃんを抱きたいとは思う。丸山さんを男としてエロいと思う。まだよくわかってない。ただのドS?

自認としてはクエスチョニングに落ち着いている。

 


当たり前のように好きになって、好きになられて、付き合って、順序を踏んでA、B、C…。

それが嫌?そんなことあるわけない。

そんな人いるわけない。

女は男に可愛がられるもんで、女は男に抱かれるもんで、女は弱いもの。

 


なんだそら。

私、そんなものにこだわって生きてきたのか。

気が強いとか、頑固とか、怖いとか、そんなことを言われるよりもよっぽど下心を含んだ「可愛い」の方が嫌だった。

あまり親しくない人から「(私)って気が強そうだね笑」と言われたことがあった。

その時は何故かすごく腹が立った。多分、女として勝手に土俵に登らされて、勝手に評価されてる感じ?分からないけど。

でもそこにいた友人が「強いよ、最強だよ」と言ってくれたのは、嬉しかった。

 


最強になりてえ。

最高で最強の人間になりたい。

 


サングラスとヒールを買った。身長を伸ばすために猫背とO脚を解消するストレッチを始めた。

170cm超えたいなぁ。

 


昔の私へ。確かに終わったよ。

ジャニオタになって終われた。

可愛い女の子、弱い女の子、守ってもらえる女の子、そういうしがらみを全部終わらせることができた。

 


よく考えたら私、1人でも平気だわ。

家で1人でTwitterしてテレビ見てダラダラするのが楽しくて、たまに出かけるときにメイクで武装して、サングラスをかけて、ヒールを履いて闊歩する。

彼氏は欲しくない。恋愛もしてない。

でも、昔よりすごく楽しい。

 


書いてて思ったんですけど、noteみたいな記事になりましたね。

なんかこういう記事よく見る気がします。

まぁともかく、推しには感謝してるんです。

マジで村上さんと出会ってなかったら、まだ女の子らしく病を引きずった人生送ってたのかなぁって。

そう考えると恐ろしい。

もしこれが誰かの呪いを解く手助けになるなら、それ以上に嬉しいことはありません。

まぁ、そんな大層な目的で書いてないんですけどね。ただの暇つぶしです。

 


ありがとう、ヒナちゃん、および関ジャニ∞

これからも応援します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Re:LIVE」フラゲ選手権

フライングゲット、通称フラゲ

発売日前日にCDやDVDをその名の通りフライングで手に入れることである。

1年ほど前まで、絶対王者タワーレコードの時代が続いていた。

セブンイレブンでの受け取りを指定すると、前日の朝7時には受け取りが可能になる。最強としか言いようがない。

 

しかし、オンラインショッピングの加速と、それに伴う配送業者への負担の増大によって、タワーレコードの「フラゲ対象商品」は縮小の一途をたどり、ついに「友よ」をフラゲすることができなくなった。

 

世はフラゲ戦国時代。

という大層な文言から始めてしまいましたが、このブログでは個人的に一番ウチの家に届くのが早い最強ショップを決めていくだけです。

もちろん地域によります。ご参考までに。

 

まずは私の周辺条件。

・まぁ都会

ヤマト運輸の営業所がバリ近い(徒歩1分)

セブンイレブンがバリ近い(徒歩1分)

・郵便局がまぁまぁ近い(徒歩5分)

・CDショップは徒歩40分(自転車なら20分)

 

どう考えても私の場合、店舗受け取りより郵送の方が楽なんですよねぇ。CDショップをわざわざ自転車表記にしてるのは、電車で行っても15分かかるからです。それなら自転車の方が良い。

というわけで、フラゲできるという評判を聞いたり、フラゲ可能と表記されている全6社のオンラインショッピングを利用してみました。

 

7/8予約(発売発表当日)

ヨドバシドットコム

初回B

オリコン非加盟

「8/18にお届け予定」と表記


タワーレコード

通常盤

フラゲ対象外

「8/18までに出荷予定」と表記

 


neowing

初回盤

ゆうメール、郵便局受け取り

「発売日前日にお届けが可能な商品」と表記

 


楽天ブックス

初回B

※大阪はフラゲ対象外

「以下の場合は、発売日前日にお届けできない可能性があります」

 


7/9予約

omni7

初回A

「8/19〜8/22にお届け」

 


Amazonお急ぎ便

初回盤

「お届け日: 8/18」

 

このようにして注文してみました。

ヨドバシカメラオリコン非加盟なのでかなり迷ったのですが、一旦今回買ってみて、で、やっぱり他の店の方が早いじゃんと納得した上で使うのをやめようかなと思って入れてみました。

ヨドバシはオリコン非加盟だよーって言うだけより、ヨドバシより他の店の方が早いよと同時に言われた方が説得力がありますし。🍣

 

omni7と楽天ブックスに関してはフラゲについて書かれていなかったのですが、フラゲできるとの噂を聞いたので使ってみました。

しかもomni7はセブンイレブン受け取りだと前日の朝8時にゲットできるという噂が。

これは元王者タワーレコードの座を奪い去る有力候補かもしれません。

 

<発送連絡編>

注文から1ヶ月以上が過ぎ、各オンラインコンサートも続々と終わり、世は静かなお盆休み。

各社から発送連絡が来る時期がやってきました。

 

8/15 土曜日

1番最初に発送連絡が来たのは、なんと元王者タワーレコード

私の経験から言うと、土曜日までに発送連絡が来た時は100%発売日前日に受け取ることが可能です。

まさかの王者の防衛が成功する事態になってしまうかもしれません。ブログとしては面白くねえな…。

 

8/17 月曜日

次に連絡が来たのは、タワーレコード

しかも発送連絡ではなく、受け取り連絡。

明日セブンイレブンで7:00に受け取れるよ〜と言う連絡です。

一度は手放したフラゲ王の座が完全に舞い戻ってきました。

これはかなり予想外の展開。

 

続いて、omni7。

こちらもフラゲ日の受け取り連絡ですが、違うのは朝8時からの受け取りという点。

1時間というわずかな時間ですが、タワーレコードに遅れをとってしまいました。

しかしそれでもセブンイレブン受け取りはかなり強いです。

 

次に来たのは、ヨドバシカメラからの発送連絡。

こちらはヤマト運輸からのお届けです。

ヤマト運輸の場合はアプリで簡単に受け取り日時変更ができるので、一つ強みですね。

午前中に設定しておきました。

 

夜になって、楽天ブックスAmazon、neowingから発送連絡が来ました。

配達予定日は知らされておらず、neowingはゆうメールなので追跡もできません。

楽天ブックスAmazon日本郵便で追跡が使えたので、配達完了メールを頼みました。

 

<発売日当日>

朝7時に起床。8時にまとめてタワーレコードとomni7 の分を受け取りました。

郵便局の営業は9時からです。

9時になって郵便局に局留めの荷物がないか尋ねてみると、10:30が第一便とのこと。

届いたら連絡すると言ってくださったので、名前と連絡先を伝えて家に帰りました。

 

9:56 ヨドバシカメラ(ヤマト運輸)到着

10:32 neowing(ゆうメール)到着

10:54 Amazon楽天ブックス(日本郵便)到着

 

このあたりはほとんど変わらないっちゃ変わらないです。

郵便局に確実に10時半に届くneowingは少しだけ他より便利かもしれません。

日本郵便ヤマト運輸は営業所との距離が影響したようですね。やはりヤマト運輸の方が30分ほど早い到着でした。

お近くの郵便局・営業所と家の距離を調べておくのがベストかもしれません。

 

<まとめ>

配達になってくると、運送会社が重要という結論に至りました。私の場合はヤマトが近いので、ヤマト運輸を使ってくれる業者を選ぶのが良いかも知れません。

その点ヨドバシは悪くはないのですが、ベストでもないし、オリコンに加盟していないので今後フラゲには使わないと思います。

タワレコとomni7がなんせ最強だったので、これからはここ2つに早めに見たい円盤を分配して注文すると思います。強いて言うなら、フラゲ保証がないのが痛いですね。

発売発表すぐ後に注文するのが、重要だと思います。

neowingはゆうメールということで、配達連絡が来ないのと、郵便局に一々確認しなければいけないのが少しネックでした。これで追跡があれば完璧なのですが、それだと送料が上がるんですよね…。

逆に出かける予定があるなどで家で受け取れない可能性がある人は、かなり便利だと思います。

 

今回使いませんでしたが、店舗受け取りは確実にフラゲできる上に店舗の在庫を増やせるという利点があるので、予約しておいて郵送分が届かなければフラゲ日に店舗へ、届いた場合は翌日以降に買い足し用として押さえておくという使い方がベストだと思いました。

 

今後使うとしたら、

①omni7とタワレコの併用 

②店舗予約

③neowing

になってくると思います。

 

絶対フラゲしたいという方はご参考にしていだければ嬉しいですし、関ジャニ∞のCD買って欲しいですし、おすし。