そーゆーとこツボなのさ

終日もう君に夢中

マニアック感想(ネタバレあり) 〜気が狂うほど愛しぬけ〜

ラッキーなことに一般電話チャレンジ初の成功でマニアックの当日券をゲットする運びとなり、1月21日月曜日、観劇してきました。


めちゃくちゃがっつりネタバレします。

正直に言うと言葉では伝えきれない素敵な部分の多い舞台なので個人的にはネタバレを見ても問題はないと思います。

まぁネタバレに関しては個人の信条もあると思いますゆえ注意書きはしますが、自衛はそちらでよろしくお願いします。













というわけでまずはあらすじ要約

古い木造の病院の暗い病室に、ベッドに座っている入院着の患者、花旗一郎(浅野和之)と手術を終えた様子の病院長である八猪不二男(古田新太)が会話をしており、花旗の隣には妻の珠代が立っている。

「これがあなたの盲腸です」と言って院長は花旗に銀のトレーに乗せられた臓器を見せる。

「食べますか?この辺では食べるんです。スタンダードなのは酢醤油ですが、僕は食べるラー油が好きです。」と話す院長に「捨てるという選択肢は…?」と花旗が聞くと、「もったいない…。じゃあ僕が食べますよ」と言って院長は病室から去っていった。

再びドアが開き、生の脳を持った不二男が病室にやってくるが、看護婦長の甘木(堀内敬子)が「院長はお疲れなんです」と院長を病室から連れ去っていく。

またもやドアが開くと、今度は拘束着の若い男がナイフを持って襲いかかろうとして、また甘木に止められて出て行った。


その話を花旗は珠代にするものの、夢を見たのだろうと窘められる。町の病院を勧めたのにも関わらず山の上の古い病院が良いと言ったのはあなたでしょうと言う珠代に「俺の嗅覚は間違ってなかった。」と花旗はこの病院は怪しいから何か撮影できるものを持ってきてくれと頼む。

花旗はどうやら医療ジャーナリストをしており、自身の患ったパニック障害を利用して潜入調査をしているようだ。

しかし珠代によると面会の際はスマートホンやカメラなどはすべて預ければいけないらしい。ますます病院を怪しんだ花旗は、病院についてさらに取材することに決めた。


場面転換


病院の庭の手入れをする犬塚アキラ(安田章大)と柴賀ユタカ(小松和重)と2人の植木職人。

作業中、なぜか庭の木をハート型に切ってしまっていたアキラにユタカが恋でもしてるのかと問うと、元妻との結婚記念日だという。

ユタカとアキラ以外の2人は北棟の方に剪定しにいくと言うが、ユタカに病院長から北棟はしなくて良いと言われていると言われ、池の方に行った。

庭の木は良いから植木の頭を真っ直ぐにする作業を頼むとユタカに頼まれたアキラだが、何かに驚いて飛びのく。

「ハチがいた気がしたんやけど」と笑いながら話すアキラ、ユタカは話題をアキラの離婚の話に戻す。


離婚がショッキングだったため理由を話す気に当時はなれなかったと話すアキラだが、離婚理由をユタカに話し始めた。

アキラの妻はソーシャルゲームにハマり、クレジットカード限度額まで課金し、アキラのカードまで使い込んで200万円の借金を抱えていたらしい。

なんとか妻の両親のおかげで借金は返済できたが、妻には「たぶんあんたとおるとちゃうねん」「相手があんたやなかったらゲームにハマりはせんかったなぁ」と言われ、出て行かれてしまった。


ユタカはアキラは悪くないと慰める。借金を完済したあと、アキラは妻を精神科に連れて行ったが、薬をいくら貰っても回復しなかったらしく、病院やったから思い出したのかもと話す。

そこでユタカは新しい恋をして忘れれば良いと勧め、アキラから好みのタイプを聞き出すが、「目がぱっちりしてる」や「色白」などどれも元妻のことばかり。

違う部分はないのかと聞くと「頭が良い人がいい」と話す。


そこへ今度は本当にハチが現れ、ユタカは荷物を載せてきたトラックに蜂を退治するスプレーを取りに行った。

アキラが蜂の巣を探すため植木の裏に回っていると、そこに白衣を着た院長と、派手な格好の背の高い女(山本静代)とスーツを着た男が一緒に歩いてきた。

彼らはリ・ホテルを経営する女社長とその部下らしく、病院を売ってくれと院長に説得している。しかし、院長はこんなに病院がボロボロなのにも関わらず全く交渉に応じようとはせず邪険にして去ってしまった。

女社長と部下の2人は採算が取れているとも思えないにも関わらずこれほど広大な敷地と病院を維持しているのはおかしいと訝しむ。


彼らがどこかへ行ったあと、ユタカがハチを撃退するスプレーを持って中庭に戻ってきた。しかしハチを見失ってしまったと話をしていると、そこへ拘束着を着た挙動の不審な男が北棟の方向からフラフラと歩いてくる。

アキラとユタカが恐る恐る院長が行った方向を教えるが、男は庭木を切るハサミを奪ってしまった。なんとか奪い返そうとしていると、アキラの腕を男が切りつけて逃げ去っていく。


場面転換


診療室には院長と看護婦長の甘木(堀内敬子)がいて、そこへスーツケースを引いた院長の娘・メイ(成海璃子)がインターンから帰ってきた。

院長は成田空港まで迎えに行きたかったのにと文句を言うのをメイはあしらい、突然、医者をやめると言い出した。

理由を聞くと血が苦手だそうだ。ある程度の血は大丈夫だが、大量出血になると気絶してしまうこともあると言う。

しかし院長はそんなことかと気にする様子はなく、それならウチの病院で働けば良いとメイに勧める。メイがインターンに行ってる間に北棟を実験棟にD.I.Yしたらしく、そこで実験に従事すれば良いと話した。

どんな実験なのかと聞くと、院長の実験によって動けない人間が動けるようになったと言い、「こいつを覚えているか?」と院長は車椅子を押して拘束服を着た若い男・寿を連れてきた。

なぜかメイは少し怯えた様子で覚えていると答える。

彼は子どもの頃に母親が再婚し、継父が実の母にDVを振るっていたそうだ。現実逃避でシンナーを吸い始めた寿は一度逮捕されるも、再び覚せい剤とシンナーに手を出してこの病院に来ることになった。

院長が「寿が中学の頃に…」と話し始めるとメイは「その話はやめてよ」と話を遮ってしまった。

実験の話に戻り、「動けるようには見えない」と言うメイの言う通り、耳は聞こえてるそうだが、喋れないコトブキは動ける気配もなく異様な様子だ。

しかし、院長が「オーケーコトブキ、ダンスして」と言うと、踊り始める。

奇妙な様子に不信感を抱くメイ、そこへミニスカナース・小神田が1人患者が北棟から逃げたと報告に来て、院長はコトブキを戻して逃げた患者を探しに出ていった。


ユタカに付き添われながら怪我を流水で止血してからやってきたアキラを、メイが院長の代わりに処置をすることになった。そこはなぜかリ・ホテルの百合本と漆原もアキラの付き添いを装って入ってきた。

メイの顔を見たアキラはメイに一目惚れする。容姿もタイプな上に、医者の卵なのだからさっき話してた通り頭がいいんじゃないかとユタカはアキラを茶化した。

そんな中、百合本と漆原は自分たちがホテルの人間だと明かし、メイに話したいと迫るが、メイは受付に後で行くから関係ない人間は出て行ってくれと追い出した。

ようやく治療が再開するが、メイは血を見るのが苦手なため不自然に目を合わせずに治療する。血が苦手な医師に担当されたことのあるアキラは、メイが血が苦手であることに気づき、傷の延長線上にあったほくろを目印に治療すれば傷を見なくていいとアドバイスした。

十字架のような形に並んだ特徴的なほくろに何か気づいたようなメイは、自分が小学生の頃に公園で怪我をしたことを話す。

アキラはかつて公園でブランコから落ちたメイをこの病院まで運んだことを思い出して運命を感じ、よりメイに想いを寄せることになった。

どうしてアキラが関西弁なのかとメイが聞くと、小学5年生の頃に転校したからだと話した。


場面転換


ユタカとアキラは病院の麓の町の小さなスナックでメイの話で盛り上がっている。

医者と植木職人という身分違いの恋にタイタニックを重ねるアキラは、2人に同じ障害があれば関係が深まるんじゃないか、暴れる患者を取り押さえれば一目置かれるのでは、と持論を展開しているところ、スナックのママが2人の元にやってきた。

メイに惚れるのはいいが父親である院長はかつてメイが連れてきた彼氏を殴ったことがあると話す。それを聞いて父親が俺たちの障害だと一人で盛り上がるアキラだが、スナックのママの顔を見て、病院にいたミニスカートの看護婦・小神田ににそっくりだということに気がついた。

事情を聞くと彼らは姉妹だそうだが、看護婦である妹は最近病院の業績が上がって給料が上がったことにより、見下され仲違いしたそうだ。

そこにスーツ姿でカウンターで飲んでいた二人が話に入り込んでくる。彼らは先程病院を買収していたリ・ホテルの人間だった。彼らが姉であるスナックのママに廃病院の業績が上がった理由を聞くと、彼女は恐ろしい話だと言った。

表向きはホームレスや生活保護受給者などを積極的に受け入れている病院だが、患者たちに身寄りがないことが分かると即入院させられるらしい。


場面転換


北棟にやってきた院長とメイ、その下には5人の患者がベッドに拘束されている。この状態は倫理的にどうなのかとメイは疑問を抱く。

院長は身寄りのない患者たちを食事を与えず点滴につなぎ、運動をさせず、ストレスを与えることで廃人にさせるそうだ。そして脳を改造することで、院長の思い通りになる奴隷が完成するという。

しかし全員を奴隷にするわけではなく、味覚や聴覚、嗅覚、視覚、触覚などに優れた人間のみを改造しており、寿もその1人だそうだ。

そして患者を重症化させることで保険の点数もアップし、病院は稼いでいるらしい。


場面転換


中庭で剪定作業を進めるアキラはユタカに北棟の方の植木にハチの巣があったと話し、その後またメイの話になった。

アキラが北棟から患者をわざと逃がして気を引こうかなどと言うのをユタカがたしなめる。

そこに一人の患者・ジャーナリストの花旗一郎が出てきた。脱走した患者かと疑う2人に花旗は自分がこの病院を探っている旨を伝え、パジャマでは潜入取材で目立つため、植木屋の制服を貸して欲しいと頼む。

ちなみに花旗は元新聞記者で、不倫によって解雇されストレスでパニック障害を患ったそうだ。今の奥さんはその不倫相手らしい。

面倒ごとに巻き込まれないかと渋るユタカだが、父親である院長の悪事を暴けば自分の恋の障害を取り除けるのではないかと考えたアキラは、もしバレた時は花旗が忍び込もうとしているところを2人が取り押さえようとしていたと言い訳させてもらうことを条件に引き受けることにした。


場面転換


清掃員に変装した漆原とそのタオル入れに隠れて北棟に潜入しようとする百合本だが、甘木とすれ違い呼び止められてしまう。

しかし、花旗が病室からいなくなったと他の看護婦から知らされた甘木はそちらへ向かった。


場面転換


北棟に忍び込んだアキラとユタカと花旗、そこには5つのベッドと5人の患者がいるが、そのうちの大柄な男が何やら食事をしている。

取材、そして恋の成就のため男に話しかけるアキラと花旗、しかし振り向くと血まみれの彼が食べていたのは生の小腸のような細長いのようなもので、病室の隅には看護師だと思われる人間のバラバラ死体が落ちていた。

アキラと花旗は逃げようとするが、外ではすでに院長やナースたちが花旗のことを探し回っており、植木屋をクビになることを恐れたユタカは逃げることを渋る。

そうしていると小腸を食べていた男は空腹から隣で拘束されていた寿にターゲットを変えた。それを止めようと花旗は乗り込み、アキラが寿の拘束を外そうとしているところに百合本と漆原がやってくる。

死体を見た百合本は失神、仕方なく応戦したユタカはアキラが攻撃に使った車椅子に足の指を轢かれて身動きができなくなってしまう。そこへ暴れていた患者がユタカのふくらはぎに噛みつき、アキラがなんとか助けるもユタカは動くことができない。

拘束の解けた寿を車椅子に乗せた花旗と漆原は北棟から逃げるが、アキラはユタカを守るためになんとか男と格闘している。

そこへ甘木がやってきて、暴れていた男・太麻呂を薬剤で沈静化させた。

約束していた通り2人は植木屋の制服を盗んだ花旗を追いかけていただけだと言い訳するが、甘木は2人を出そうとはしない。

そこへメイがやってきて、アキラはメイに君のお父さんがやっていることはおかしいと訴える。

信頼する院長を否定された甘木は患者たちを操って百合本、アキラ、ユタカを捕まえさせた。


幕間


逃走中の花旗夫妻と寿は家の住所を知られていることを懸念してホテルに宿泊しようとするが、そのフロントスタッフが小神田そっくりなことに気づき、彼女は小神田の姉妹だという。それを聞いた夫妻はホテルから全力で逃げ出した。


場面転換


北棟で甘木に捕まってベッドに拘束されたアキラ、ユタカ、百合本の3人。太麻呂に襲われて負傷したユタカは奥でメイに診てもらっている。

メイが血液恐怖症だと知るアキラと甘木は心配するが、メイはやけに明るい声で問題ないと答えた。

甘木は看護師たちに死んだ看護師の遺体を病院内の火葬場で焼くように指示するが、さすがに実験台と一緒の扱いでは可哀想だということになり霊安所に安置することになった。

それに対して4人の看護師は温情ある対応だと喜んでおり、アキラはおかしいと指摘するが、聞こうとしない。

戻ってきたメイとなぜか笑顔のユタカ、メイは病院内で独裁者のようになっている父親を倒そうと訴えるが、甘木は院長が正しいと信じ込んでいる。

百合本は病院内で火葬場を作ることは法律で禁止されているはずだと話し、アキラは逃げている花旗夫妻が警察に駈け込めばおしまいだと甘木を脅すが動揺する様子はない。

なぜなら寿にはGPSが埋め込まれている上に、警察も病院とグルだからだそうだ。


警察署では小神田と同じ顔の警察官が無罪を主張する男を檻に入れようとしていた。男は自分の植木屋の会社の社長、つまりユタカが病院に行ったきり帰ってこないと言っただけじゃないかと訴えるが、女はそれが公務執行妨害なのだと聞く耳を持たない。

そこへ花旗夫妻が病院を訴えるために警察署に駆け込んでくる。捕まろうとしている男は2人にこの警察署はおかしいと伝え、なんとか花旗夫妻は警察官に捕まる前に逃げることができた。


そして甘木はどうして院長がこの実験を始めたのか、どうして警察が病院の味方をしているのかを説明し始めた。

メイが中学生時代、尊敬していた先輩が男子中学生3人に襲われ絞殺された。そのうちの1人が寿であった。

主犯格の男は別の万引き事件で捕まった際に犯行を供述し、3人は捕まることになったが、全員が16歳以下だったため少年法により全員が軽い罪に終わった。

メイにショックを与えたことを根に持っていて彼らの復讐のプランを考えていた院長と、被害者の娘の父親であり、この町の警察署長はバーで出会うこととなり、復讐計画は実行された。

彼らは全員この病院に収容され、触覚の優れていた寿以外は死に、寿も院長の文字通りの操り人形となったのだ。

性犯罪者が改心することはない、院長がやったことは正しいと主張する甘木だが、アキラは最初の目的は同情できても、途中からは悪いことをしていないのに殺された人間もいたんじゃないかと指摘する。

そうしてなんとか甘木を説得し、拘束を解いてもらうことになった。

ユタカと百合本、そして甘木は先に逃げ出したが、メイは逃げようとしない。

父親は自分に執着したために狂ってしまったのであり、自分さえ犠牲になれば助かると話す。メイによると父親はインターン中のマンションにまで監視カメラを仕掛けていたらしい。

「だからカメラに向かって股を開いてやったわ」と話すメイをアキラは色々あって記憶がおかしくなってしまったのだろうと自らも言い聞かせ、恋心を打ち明けて、2人で遠くの町で暮らさないかと言う

今まで医者になるために生きてきたから医者以外のことはできないし、狭い世界だから父親が捕まれば就職は難しいだろうと心配するメイに、アキラは花屋をしようと提案した。

父親の転勤で引っ越しが多く、友達のいなかったアキラはずっと花が好きだったそうだ。

そして説得の後、メイはアキラと暮らすことを選び、2人で北棟を逃げ出した。


場面転換


寿の車椅子を押してどこか分からないほど遠くまで逃げてきた花旗夫妻は、乳母車を押す通行人の男女に道を聞く。

しかし急に赤ちゃんが泣き出し、母親がカバーを開けるとその中にいたのは小神田そっくりの赤子だった。

里子をもらってきたが急に老けてしまったと嘆く2人に恐怖を感じ、距離を置いてしばらく歩くとスーパーが見つかった。

一郎は飲み物を買ってくるから妻の珠代にここで待っててくれと言い、いざとなれば寿を捨ててでも逃げろと伝えてスーパーへ向かう。

しかし突然、廃人と化し車椅子で運ばれるだけだった寿が動き始め、珠代を犯そうと襲い始めた。必死に助けを求めるが、その悲鳴にさえ興奮した寿が珠代を押さえ込む。

異変に気付いて一郎が戻ってくるも、同時にさっきの警察署にいた警官と病院長が来てしまった。

病院長が座れと命令すると大人しくなる寿、院長から一定距離離れるとWi-Fiが切れて自由に動けるようになってしまうらしい。

そして拳銃で脅され、3人は病院へ戻ることとなる。


場面転換


逃げ出した百合本とユタカは甘木の案内の元、山を下るルートを進もうとするが、突然スタンガンを取り出した甘木は百合本を気絶させた。

院長に狂気的に心酔する甘木は説得を聞くフリをしていただけだったのだ。

ユタカは襲いかかってくる甘木をなんとか押さえ込んでスタンガンを奪い、気絶させることに成功したところで、看護師4人組が病院から出てきた。

警戒するユタカに味方だと話す4人だが、簡単に信用するのは難しい。

そこへアキラとメイが遅れてやってきて、ユタカが事情を話すと、アキラが4人に味方だということを証明してくれと頼んだ。

すると4人は気絶している甘木を「院長とヤッたんだろ」などと罵りながらリンチを始める。

焦ったアキラとユタカがそれを止めると、急に看護師の1人が倒れた。

花旗夫妻を捕まえた警官に拳銃で射殺されたのだ。

病院に戻ってきた院長、警察官、花旗夫妻、寿、絶体絶命という状況の中、なぜかユタカは背を向けてしゃがみこんでいる。

看護師の1人に人間を食らう太麻呂を首輪をつけて連れてくるように指示した院長はユタカに気づき、冗談交じりに「なにこの状況でちんちん触ってんだよ、立ってこっち向け、気をつけだ」と命令すると、ユタカは異様な大きさに勃起していた。

看護師が撃たれた後に流れた血に興奮したらしい。

それを面白がった院長は、花旗珠代を射殺し、ユタカのそれはさらに膨れ上がった。

あたりは血が飛び散る中、全く動揺しないメイにアキラと院長は不審に思う。

すると、メイは大量出血を見ると気絶するのは嘘だと言い、「私、血を見るとちんこを吸いたくなるの」と告白した。

メイによるとそれは500万人の1人という割合で発生する奇病らしいが、先程ユタカの太麻呂に噛まれた傷を治療してる際、症状が出てしまい、粘膜感染でユタカにも病気が移ったという。

そんな中逃げようとする漆原を見つけた院長は、ナタを渡して銃で脅しながら1人を殺せと指示した。

知り合いだからという理由で百合本を選んだ漆原は百合本を殺した。もちろんユタカの症状はさらに酷くなり、院長が漆原を殺すと、さらに伸びた。

そこへ首輪をつけられた太麻呂が到着し、乱闘の中、甘木が間違えて殺されてしまう。

しばらくすると、混乱に乗じて逃げ出していたアキラがチェーンソーを持って帰ってきた。

ユタカとアキラでチェーンソーを使ってなんとか格闘する。アキラは事態を収拾させるため北棟の植木にハチの巣があったことを思い出し、その木を切るが、ハチの巣は誰かが処分してしまっていた。

そして院長からアキラは頭に拳銃を突きつけられてしまう。


なす術がなくなった状況、そこに突然ナイフを持って現れた女性看護師がやってきて、院長を刺し殺した。

状況が飲み込めず、アキラがどうして院長を殺したのかと問うと、「私、全然目立ってなかったから」と単調な声で答える。

そして出血で興奮するユタカを見て、「可哀想だから」と言い、刺殺してしまった。

その様子をスマホで撮影する花旗をアキラが止めようとするが、元記者としての俺の使命だとカメラを回し続ける。

すると、カメラの前でその女は「これで有名になれるかな?」と自分の頚動脈を切って自殺してしまった。

しかし残念ながら映像は花旗のミスで配信はされておらず、録画されていただけだった。


なんとかメイとアキラと花旗が生き残り、花旗は先程甘木に教えられた道で山の下へと逃げていく。

あまりに混沌とした状況に混乱するアキラに、メイは約束した通り遠くの町で暮らそうと言うが、アキラは「お前みたいなやつと暮らせるか!」と言って拒絶する。

おかしなやつらと関わるくらいなら一人で生きると決めたアキラは、メイを置いて一人で逃げてしまった。




◎色々感想&考察

正直想像してたより重い作品だと思った。

更生しない性犯罪者への私的な制裁。

病院での過剰な薬の投与。

少年法に守られる加害者。

そういう現代の闇のようなものを軽いタッチで面白おかしく描く作品だった。

キャラクター一人一人の人生が透けて見えてしまうくらい作り込まれた世界観に初めて本格的な舞台を観てしまった私はなかなか衝撃を受けました。

感動というか、なんて言えば良いのかわからないけど色々考えてしまった。


そしてパンフレットで改めて曲の歌詞を読んでいると色々面白いなと思ったのでちょっと抜粋して自分なりの考えをまとめてみようと思う。


一曲目は私の一番書きたかったことに触れるので後で考察しようと思う。

まず序盤にアキラの歌った「Come back to me!」

安田さんのダンスも素敵だったのですが、どうしてソシャゲにハマって借金作って自分で出て行った妻のことを「帰ってこい」と言うほど愛していたのか不思議だったのですが、最後まで観るとなんとなく理解できました。


アキラは何度か「自分が友達と飲みに行ったりして妻を放ってしまっていた」と話していたが、きっと罪悪感を感じていたのだろうなぁと。

借金を作ってしまった妻と離婚しても不思議ではないのに、精神科にも連れて行き、別れる気のなかったアキラは妻のことを愛していたんだと思う。

そして後で語られたのがアキラの妻は精神科で飲み合わせもメチャクチャな大量の薬を処方されたことが一つの原因で廃人になってしまったということだ。

そういう過去があってこその潔癖とも言える「俺は1人で生きていく」という決心。

狂った人間たちが描かれたマニアックという作品の中で唯一、狂った人間を嫌い、一度は恋に落ちたメイから一緒に暮らそうと言われたにも関わらずそんな奴らと関わるくらいなら1人で生きると自分を貫いたアキラは「臭いものに蓋をしようとする世間一般の人間」でもあり、「二度と妻のような人間を生み出したくないと後悔する夫」でもあったのかなぁと。


臭い物に蓋をすると言えば甘木が歌った「ゾンビじゃない」という曲の歌詞に

臭いものに蓋して生きてきたくせに

見たくないものを見ないで生きてきたんでしょう

あたしらがカバーしてるから、あなたたちはマトモでいられるんじゃない

とあった。

誰だって簡単に狂ってしまうというのがメッセージであれば、一般人と狂人の間は地続きなのに、狂った人間を自分とは関係のない異常な人間だと見なして事なかれ主義を貫く世間への皮肉のように私は感じた。


天木と不二男はそれぞれ「ゾンビじゃない」と「We need you」の曲中で

変えるためには犠牲がいるの

無能な人間の犠牲の上に有能な人間の進歩がある

多少の犠牲は仕方ない

と自分たちの人体実験を正当化していたが、じゃあ不二男は頭のおかしいマッドサイエンティストで、天木はそんな男に心酔する頭のおかしい看護師で、世間一般の人には関係のない人間なのかと言われればそうではないと思う。

多少の犠牲は仕方ないという思いはなんとなく、誰の心にでもあるんじゃないか、そしてそれがちょっとしたきっかけで行き過ぎれば自分たちも不二男や甘木のようになる可能性はあるのだと思う。


最後に、一番最初に不二男が歌った曲「マニアック」

そこには「誰でも彼でもマニアック」という歌詞がサビとして使われていたが、これがこの舞台のテーマなのかなとはなんとなく思っていた。

ポスターやフライヤーにも「これってものを見つけたら気が狂うほど愛し抜け」と書かれていたが、誰でも簡単に狂ってしまうんだというのを感じた。


「私はノーマル」

分かってないね

まだ見つけてはいないだけ

一生は一度きり人の目なんか気にするな

これってものを見つけたら 気が狂うほど愛し抜け


自分がノーマルだと感じている人間もまだ見つけてはいないだけ、誰にだってその素質はあるんだと、安田さんもパンフレットで「毎日流れてくるニュースを見聞きしていると、世の中や人間は壊れかけていて、正常と異常な境目がはっきりしなくなっているんじゃないかと思います。だとしたら『マニアック』劇中のどギツいギャグや、グロテスクな出来事も、僕らが生きている社会の地続きで起きていても不思議ではない」と行っていましたが、そもそも正常と異常な境目なんてないんじゃないかとも思います。


ここから私の話に変わります。

私は自分のことを普通の人間だと思っていたけど、ヒナちゃんを好きになってから自分には普通な部分もあるし、異常な部分もあると感じるようになってきました。

言ってしまえばオタクというのは「これっていうものを見つけたら」の段階はクリアしてしまっているわけですよ。

推しという「これっていうもの」を見つけた人間が、気が狂うほど愛してしまう段階になるのはそんなに難しい話じゃない気がして。


正直、メイキング東京最終日の映像を見て私は興奮しました。

辛そうなヒナちゃんの映像を何度も巻き戻しては再生し、空になったコップを抱えたままにどうしようもない衝動を抑えて見ていました。

苦しむ姿に興奮するなんて異常者のすることだ、と思っていたけど素質は自分の中にもあったんです。

そこで巻き起こった感情は興奮、そして自己嫌悪。

だとしたら急に出血に興奮するようになったユタカやメイはこんな気持ちが渦巻いていたのだろうかとフラゲ前日に見た「マニアック」のことを考えてしまいました。


多分これを読んで「私は別にあのヒナちゃんのことは純粋に可哀想と思ったし興奮はしなかったからこの人と違って普通の人間だ」と思った人は多少いると思いますけど、そうじゃないんです。

私にとってのきっかけがたまたまそれだったけど、まだ見つけてはいないだけ。


一番大事なのはそういう感情とどう付き合っていくか。

DVDのあの部分だけを繰り返し再生して脳内で妄想して気が済むならそれはきっと大丈夫。自分の異常性を自覚して誰かを傷つけてしまわないように生きていかなきゃならないんだなと感じました。