平成後半の日本と関ジャニ∞の応援ソング
前書き
この前関ジャニ∞の応援ソングに関する記事が流れてきまして、なんとなく歌詞を見ていると、あれ?これ結構時代によって言ってること全然違うのでは?と感じたのでまとめてみました。
平成後半というのは21世紀についてです。
関ジャニ∞がデビューしたのが2004年なのでそれ以降の話が中心になります。
この記事では論文風に00年代と10年代に起こった社会の変化と関ジャニ∞の応援ソングの歌詞に着目して、日本人の考え方の変化について考察しています。
第1章では2004年から2018年についての大まかな振り返り、第2章では00年代と10年代の特徴、第3章では関ジャニ∞の応援ソングの歌詞の比較を行っています。
第1章 2004年から2018年の日本と関ジャニ∞の動き
◎2004年
総理大臣:小泉純一郎
主な出来事
オレオレ詐欺が多発
政治家の年金未納問題
「冬のソナタ」をきっかけに韓流ブーム到来
養鶏場にて79年ぶりの鳥インフルエンザ
新紙幣発行
流行語:「チョー気持ちい」
芸能関係について
フジテレビが11年ぶりに日テレから視聴率三冠を奪還
お笑いブーム
年間シングルランキング1位は「瞳を閉じて」(平井堅)
8.25に「浪速いろは節」で関西デビュー
9.22には全国デビュー
◎2005年
主な出来事
中部国際空港が開港
愛・地球博開催
高額納税者の公示がこれを最後に個人情報保護の観点から終了
人口が初の減少
地デジ放送が全国で開始
流行語:「小泉劇場」
芸能関係について
iTunes Storeが日本でサービス開始
内博貴の未成年飲酒問題
◎2006年
主な出来事
日本郵政株式会社発足
ネット自殺が話題に
神戸空港開港
65歳以上の人口が初めて20%を超える
三大都市圏の基準地価が16年ぶりに上昇
Wii発売
「大阪ドーム」が「京セラドーム大阪」へ
流行語:「イナバウアー」「品格」
芸能関係について
シングルランキング1位は「Real Face」(KAT-TUN)
NEWS・KAT-TUNとの合同ファンクラブである「You&J」発足
内博貴脱退
関風ファイティングがデビューシングル以来のオリコン1位獲得(年間シングルランキング11位)
◎2007年
主な出来事
東国原英夫が宮崎県知事就任
関西テレビの番組内容捏造問題
食品の異物混入問題が多発
16歳女子高生が関ジャニ∞メンバーを装い同級生に脅迫メール
流行語:「どげんかせんといかん」「ハニカミ王子」
芸能関係について
年間シングルランキング1位は「千の風になって」
「ズッコケ男道」よりインペリアルレコードへ移籍
◎2008年
主な出来事
中国製ギョーザによる中毒事件
秋葉原通り魔事件
流行語:「アラフォー」「グ〜!」(エド・はるみ)
芸能関係について
年間シングルランキング1位は「truth」(嵐)
日本テレビ系列で「Touch! eco 2008 ECOスペシャルウィーク」のエコ大使に任命
◎2009年
主な出来事
足利事件に冤罪判決
裁判員制度スタート
年間シングルランキング1位は「believe」(嵐)
「急☆上☆show」が年間シングルランキングトップ10入り
初の単独カウントダウンライブ
◎2010年
主な出来事
上海で万博開催
流行語:「ゲゲゲの〜」
年間シングルランキング1位は「Beginner」(AKB48)
グループ初の全国ネット冠番組「冒険JAPAN!関ジャニ∞MAP」放送開始
「LIF〜目の前の向こうへ〜」が初の連続ドラマタイアップ曲・シングル曲初のバンド曲に
◎2011年
主な出来事
地デジ完全移行
流行語:「絆」「スマホ」
年間シングルランキング1位は「フライングゲット」(AKB48)
クレヨンしんちゃん主題歌を担当
24時間テレビメインパーソナリティ就任
『KANJANI∞ LIVE TOUR 2010→2011 8UPPERS』がオリコン週間DVD・BD両ランキングの音楽部門で1位獲得
「関ジャニの仕分け∞」が初のゴールデンでのレギュラー番組に
錦戸亮がNEWS脱退
◎2012年
主な出来事
東京スカイツリー開業
消費税改正法案可決
流行語:「ワイルドだろぉ」
年間シングルランキング1位は「真夏のsounds good」(AKB48)
関ジャニ∞単独でのファンクラブが発足
『KANJANI∞ 5大ドームTOUR EIGHT×EIGHTE おもんなかったらドームすいません』BDが初週売上男性アーティスト史上最高を記録
『エイトレンジャー』映画化
紅白歌合戦初出場
◎2013年
主な出来事
アベノミクスによる大胆な金融緩和
インターネット選挙運動が解禁
和食が無形文化遺産に
パーナさん事件
福知山花火大会露店爆発事故
東京オリンピック開催決定
流行語:「今でしょ!」
年間シングルランキング1位は「さよならクロール」(AKB48)
◎2014年
主な出来事
STAP細胞捏造発覚
「笑っていいとも!」放送終了
消費税増税
外国人観光客3千万人突破
FIFAワールドカップ ブラジル
流行語:「ダメよ〜ダメダメ」「集団的自衛権」
年間シングルランキング1位は「ラブラドール・レトリーバー」(AKB48)
『エイトレンジャー2』が公開
自主レーベルとなる「INFINITY RECORDS」を設立
◎2015年
主な出来事
イスラム過激派による日本人拘束事件
東京オリンピックエンブレム盗作疑惑
流行語:「爆買い」
年間シングルランキング1位は「僕たちは戦わない」(AKB48)
『テレビ朝日ドリームフェスティバル』出場
◎2016年
主な出来事
電通での女性社員の過労死
マイナス金利政策
ポケモンGOブーム
流行語:「神ってる」
年間シングルランキング1位は「翼はいらない」(AKB48)
紅白歌合戦トップバッターを務める
◎2017年
主な出来事
プレミアムフライデー初実施
子供の数が100万人割れ
藤井聡太公式戦新記録
安室奈美恵が引退発表
流行語:「インスタ映え」「忖度」
年間シングルランキング1位は「願いごとの持ち腐れ」(AKB48)
「プレミアムフライデーナビゲーター」就任
「METROPOLITAN ROCK FESTIVAL2017」出演
「スパイダーマン:ホームカミング」 ジャパンアンバサダー就任・主題歌を担当
◎2018年
主な出来事
平昌オリンピック
日大タックル問題
FIFAワールドカップロシア
タイでサッカー少年団の遭難事故
医学部不正入試問題
はれのひ成人式騒動
流行語:「そだねー」
村上信五が司会を務める「NHK World presents Songs of Tokyo」でグループ初の海外向け番組に出演
「大阪観光シンボルキャラクター」就任
渋谷すばる脱退
初の海外公演を台湾の台北アリーナで開催
「ユニバーサル・ワンダー・クリスマス」のクリスマス・アンバサダーに就任
第2章 00年代と10年代の総括
2000年代について
バブル崩壊後の1993-2005は就職氷河期、1990年代前半からの20年間は「失われた10年」に続き、「失われた20年」と呼ばれるデフレ不況が続いた。年間自殺者数は先進国の中で1位。個人情報の保護や女性の社会進出に対する意識が強まる。
追い討ちをかけるように2007年のサブプライムローン問題、2008年のリーマンショックにより世界的な不況のダメージを受けた。
少子高齢化により東京一極集中と過疎化が問題となり「若者の○○離れ」が叫ばれる。
「オタク」が社会へと浸透する。
主なコンテンツがテレビからインターネットへと切り替わっていった。
2010年代について
スマートホン・タブレット端末が普及。同性婚容認に対する運動や若者の車離れなど趣味・価値観の多様化が見られる。リーマンショックにより2010-2013は就職氷河期と呼ばれた。成熟社会として個人の自己実現が重要視されるようになる。
まぁ簡単に言うと2000年代は成熟社会になるための足踏み期間でとにかく世の中が暗かった時期で、2010年代になって成長も退行もしない安定した社会の中で「個人」が重要視されることになってきたわけです。
第3章 関ジャニ∞の応援ソングから見る日本社会の変遷
さぁようやく本題に入りましょう!
まずは関ジャニ∞の応援ソングを2000年代と2010年代に分けてみました。
とりあえず関ジャニ∞の曲は恋愛ソングと応援ソングのほぼ2択だったので前者以外のシングル曲・アルバム曲を応援ソングとして分類しています。
正直カップリングまでは手が回らなかった。
<2000年代>
「桜援歌(Oh!ENKA)」(2005年)
「ズッコケ男道」(2007年)
「強情にGO!」
「Great Escape〜大脱走〜」
「無責任ヒーロー」(2008年)
「ギガマジメ我ファイト」(2009年)
<2010年代>
「LIFE〜目の前の向こうへ〜」(2010年)
「もんじゃいビート」(2011年)
「ER」(2012年)
「へそまがり」(2013年)
「あおっぱな」
「ER2」(2014年)
「ふりむくわけにはいかないぜ!」
「前向きスクリーム」(2015年)
「NOROSHI」(2016年)
「応答セヨ」(2017年)
「ここに」(2018年)
さて、歌詞を見ていくと思いのほか面白い結果になりました!
こんな綺麗に分かれるとは…
まずこちらの歌詞を見てください。
「共に涙流して ここで踏ん張ってんだよ わかるだろタフブラザー(ギガマジメ我ファイト)」
「皆さん一緒に花咲かせましょ 皆さん一緒に夢咲かせましょ(桜援歌)」
「きばってこーぜ(ズッコケ男道)」
「焦りを蹴散らしてこうや(ズッコケ男道)」「何千何億 大脱走(great escape)」「さぁみんなで逃げようぜ」
これは全部00年代の歌詞なのですが、とにかく「皆さん」やら「共に」やら「しようぜ!」とか「しようや!」とか「何千何億」「みんなで」と主語がデカイ。
じゃあ10年代はどうなんだ?と言われると
「さぁ皆のもの熱くなれ」「我ら行く旅路」「さぁ皆のものバカになれ 天下無敵の星となれ」(前向きスクリーム)
唯一「前向きスクリーム」に「皆のもの」とか「我ら」という言葉が出てきますが、それ以外の曲にはほとんど複数人称は出てきませんでした。
そこで、10年代の他の歌詞を抜粋したものがこちら↓
「誰かのためじゃなくていい 自分のために生きても その姿きっと 誰かの微笑みを作るから」「僕は1人じゃないから」「君のくれた笑顔で笑いたい」(LIFE目の前の向こうへ)
「ファイトだ俺 出来る男さ」(もんじゃいビート)
「へそ曲がり根性讃えて 君に歌っている」「自分流で行っちまえよ」(へそ曲がり)
「我が人生旅」(前向きスクリーム)
「それであなたはどこに行くの?」「君、行けばこそ 道は開く」(NOROSHI)
「僕を信じなくれた遠い日の僕よ」「誰にも邪魔なんかさせたりしない」(応答セヨ)
「どこの誰かじゃなく君に届け」(ここに)
「自分」「僕」「俺」「君」「あなた」と単数がめちゃくちゃ出てきた上に「誰かのためじゃなくていい」「誰にも邪魔なんかさせたりしない」と来たと思えば「どこの誰かじゃなく"君"に届け」とめちゃくちゃ個人が強調されます。
かなり「誰か」というのを否定している歌詞が多い印象。
一応00年代も「俺」が出てこないわけではないのですが、
「俺もいつかは、しっかり花咲かせたるからな!」(桜援歌)
「虚しい寂しい 俺だけか でも違った 1人じゃない」(great escape 大脱走)
00年代だと単数の人称が出てくるのはこの2回のみで、しかもgreat escape大脱走の方に関しては「1人じゃない」と言ってしまってる。
そして10年代の歌詞で目指すべきところとされている部分に注目すると面白い共通点が出てきました。
「"どうしようもなく情けない自分"をも愛していけ」(ER2)
「奇跡を起こしたいんなら自由に生きて愛しなよ」「自分自身を愛してくれ」(ふりむくわけにはいかないぜ)
自分を愛するというのが強調されていたり
「大人ぶって飲み込んだ 言葉は腹の底」(もんじゃいビート)
「大人になったって理想は無邪気の塊」「タフなのかガキなのか憧れにときめいて」(へそ曲がり)
「青くさく粋がった ガキのまんま笑ってる」(あおっぱな)
これは関ジャニ∞の年齢とキャラクターも関係しているのかもしれませんが、大人じゃなくて無邪気な子供を美化するような歌詞が多いです。
次に時代描写に着目してみました。
00年代がこちら
「今じゃ誰も言わないけどこんな時代こそは根性論」「この時代を切り裂け」(ギガマジメ我ファイト)
「どんな冬も春になります だから生きるのです」(桜援歌)
「現状を変えるんだ 理屈じゃない 壊せ」(great escape 大脱走)
全体的に「こんな時代」「冬」とか時代の悲壮感みたいなのが漂っている気がします。
メッセージも10年代の"自分を愛せ"とかに比べると"時代を変えていけ!"みたいな規模の大きいものが多いですね。
問題意識が自分ではなく時代に向けられています。
「働けど 働けど 飛んでは消えてくものばかり 情熱のテンションも放物線を描いて落ちる」(ズッコケ男道)
「世界中の町中の人間からS.O.Sのメッセージが流れてる」 (great escape 大脱走)
「みんながみんな不安を抱えて俯いてるぜ」(無責任ヒーロー)
不況の影響もあってか自分がツライというよりは世の中全体が困ってる印象。
それが10年代になると…
「思うように歩けない キビシイ世の中さ」(もんじゃいビート)
「また守っては維持して プラマイゼロ付近で立ってる」「逃げるだけの日々」(ER)
「立ちはだかる困難に」(へそ曲がり)
「絡まる現状維持スパイラル」(ER2)
「あたりまえの毎日」(ここに)
落ち込んでるというよりは、「歩けない」「維持して」「逃げるだけ」「現状維持」「あたりまえ」とか停滞してることに不満を抱いている歌詞が多くなります。
成熟社会として成長を終えてしまった日本での焦りみたいなのが現れてるんですかね?
「運命なんて言葉に左右されるよな 人生なんて選んじゃ マジで損するぜ」(強情にGO!)
2007年
「時代の流れに 上がって下がって 君の人生は誰のもの?」(無責任ヒーロー) 2008年
ただ00年代も後半になってくると10年代と同じような流されずに生きようぜみたいな歌詞が出てきます。
しかし、意外と10年代の歌詞を見てみると、
「我が人生旅」(前向きスクリーム)
「浮き沈みあるほうがいい」(ここに)
運命論的な考えも強い。
自分を保ちつつ時代には身を任せて、みたいな感じですかね?
00年代に比べると時代への反骨精神みたいなのは少なくなっています。
そして個人主義の印象が強い10年代ですが、同時にこうも言ってます。
「誰かの理解を欲しがってるなら 信じること意外と 切り離せないぜ」(ER)
「自分は人と違うって冷めた目をしてみても実際はどうなんだ 燻っただけじゃないか」(へそ曲がり)
「守るべき人に守られていた日々に気づくでしょ」(NOROSHI)
「鍵をかけた心のドアを開けて」(ここに)
自分ばっかりじゃダメだぜってのもメッセージとして発信されてるところが面白いですね
でも「みんな」というよりは「大切な人」というか、00年代に比べると自分と自分に近しい人がクローズアップされてる気がします。
そして一番面白いと思ったのが、10年代の時代に対するディスりです。
「みんなソロッテ並んでどこ行くの」(ER)
「何処となく屁理屈めいた世界のモノサシだが どれだけの人が 豊かだと言ってるかな」「振りかざす常識より 自分流で行っちまえよ」(へそ曲がり)
「順応性が仇になる瞬間」「革命家を欲しても出る杭をガツガツ打つのが世の常」「正義という名の多数派に 今日もきっちりフルボコにされてく個性」「教科書通りのLove& Peaceにサブイボ立てんだろ」「人類繁栄のため流れるBlood?」(ER2)
「迷わず選べ同調 右向け右でOK?」「世渡り上手いね」「あら、控えめなのね」「保身 白いフラッグ 溢れる仕方ない 何が分かったというの?」(NOROSHI)
とにかく多数派とか世間の価値観とかマジョリティーが歌詞の中でめちゃめちゃディスられてます。
なんとも10年代らしい個人の価値観を重視する考え方ですね。
00年代の特に「great escape 〜大脱走〜」とかだと名も知らぬみんなが困ってる仲間だぜ的な意識が見られたんですけど、インターネットの普及もあってか匿名のマジョリティというものが偽善者として描かれることが増えました。
まとめ
<00年代>
日本だけではない世界的な不況も影響してか、みんなで団結して暗い時代に立ち向かっていこうというような歌詞が多い。
同時に時代に左右されないことが良しとされる。
関ジャニ∞から世の中全体に向けて歌っているイメージ。
<10年代>
社会の停滞やマジョリティに対して不満を抱いており、自分と自分に近しい人間のことを大事にすることが良しとされており、子供のような純粋さや無邪気さも評価される。
関ジャニ∞から"ある個人"に向けて歌っている歌詞が多い。
もっと色んな曲調べられたらよかったんですけどね、とりあえずこれでギブアップです。
さすがに4時間半近く書き続けていると疲れてきました。
また後日何曲か追加で書けたらいいなぁと思います。